涼介が自身をクズのロクデナシと宣う所以
閑話的な回なので超短い
アリアがギルドから戻って来ると、2本目の煙草を半分近くまで吸っていた涼介は申し訳無さそうに告げる。
「アリア。すまないが、此処 で別れても大丈夫か?」
突然の内容にアリアは驚きながらも冷静に訳を尋ねた。
「訳を聞かせてくれ」
「一気に片付ける目処が立ったんでな……今晩、連中を纏めて片付けに行きたくなった」
理由は解った。
だが、一気に片付ける目処がどう言う事なのか?
アリアは解らずに益々首を傾げてしまう。
そんなアリアを気にする事無く、涼介はハンヴィーから出していた袋詰めにしていた盗賊の頭目の生首を差し出し、謝罪する。
「この首はやる。違約金と思ってくれ」
違約金も兼ねた賠償金代わりに賞金首の生首を差し出されれば、アリアはソレ以上の事は聞かずに受け入れてくれた。
「そう言う事なら良いだろう。君達の仕事が上手く行く事を女神に祈っておく」
「ありがとう」
感謝した涼介はハンヴィーに乗り込むと、エンジンを始動させ、その場から走り出すのであった。
「それで?予定を一気に前倒しにするってどう言う事?」
ダリスラを去った後。
助手席に座る綾華から問われると、涼介はハンヴィーを走らせながら指揮官として説明していく。
「標的を知る協力者が居て、殺した後の問題も依頼人が何とかしてくれる目処が立った。だったら、さっさと片付けるに越したことは無い」
アレクシスと言う標的を知る協力者が居る。
殺した後の事をジェーンという依頼人に押し付けても良い言質も取れた。
ならば、予定を一気に前倒しにしてクソ仕事を一気に片付けない理由も無い。
そう説明すれば、綾華は納得した。
「そう言う事なら反対しないわ。寧ろ、大賛成よ」
「お前ならそう言うと思った。さて、アレクシス……アンタには標的を捜して貰うが、異論は無いな?」
涼介の問いにアレクシスは異論を挟まなかった。
「無いわ」
「なら、良い」
アレクシスの答えに涼介はソレ以上の事は聞かずに作戦の大まかな内容を語り始める。
「作戦は単純だ。標的を見付け出して殺害する……コレに尽きる」
涼介の告げた作戦の結論に綾華は呆れてしまう。
「それだけじゃ作戦とは言わないんじゃないの?」
「具体的な内容は今からだ……先ず、俺達は王城へ戻る。制服姿でな」
涼介の語った内容に綾華は益々呆れてしまう。
「私が言うのもアレだけどさ、アンタの遣り方ってスパイがやる様な汚い奴じゃない」
「どう言う事?」
アレクシスが首を傾げて聞けば、綾華は説明する。
「友達のフリして油断を誘って中に潜り込んだら、後ろを見せた瞬間にブスッとブッ刺して殺す……そんな汚い遣り口で友達を殺す気なのよ、コイツは」
綾華のぶっきらぼうな説明にアレクシスも流石に呆れてしまった。
「貴方、友達をどう思ってるのよ?」
「友達は友達さ……状況次第で敵にも味方にもなるのが友達って奴だろ」
涼介のサイコパス沁みた答えに綾香とアレクシスは益々呆れてしまう。
そんな2人を気にする事無く、涼介は作戦内容の説明を続ける。
「中に潜入したら、俺達は纏って標的を捜す。標的を見付け出せたら、その場では敢えて仕掛けずに夜を待つ」
「その場では殺らないの?」
「俺としては余計な戦闘は避けたい。それに展開次第では皆殺しにするとは言え、殺さずに済むんなら……それに越した事も無い。だろ?」
「まどろっこしいわね。皆殺し前提ならさっさと全員殺した方が手っ取り速く終わるじゃない」
綾華が面倒臭そうにすると、涼介は肯定した上で否定する。
「お前の言う通り、皆殺しにする方が早く終わる。だが、その前に肝心の標的を確認する必要がある以上は標的探しは欠かせないし、余計な戦闘が起きたら標的に逃げられちまう。皆殺しにしました、標的は逃がしましたーじゃ、笑えない」
涼介の否定の理由に綾華は渋々ながら認めた。
「そう言う事ならまどろっこしい方法に従うわよ。でも、そのまどろっこしい方法で進めて標的逃がしましたーだと、もっと笑えないわよ」
「その時は後々の脅威を全て排除出来て良かったね♡で、終わり。逃げた標的を追い回してブチ殺せば良いだけの話でしかない」
アッサリと標的を逃がした時の事を涼介が答えれば、アレクシスは人でなしを見る様な目で涼介を見てしまう。
「貴方、邪悪な腐れ外道とか言われた事無い?」
そんな問いをアレクシスからされた涼介はさも当然の様に認めると、他にも呼ばれた悪名を懐かしそうに挙げ始めた。
「あるよ。他にもクソ野郎とか頭のイカれたクソッタレやら、存在が悪夢そのものだの、法と秩序の敵だの、生かしといちゃいけない邪悪だの……色んな呼ばれ方した」
冗談に聞こえるだろう。
だが、涼介を知る者がこの場に居れば、忌々しい様子で全て事実と認める。
それ程までに涼介はジェーンが箱庭と呼んだ異世界に於いて、蛇蠍の如く嫌われていた。
それこそ、砂ぼうずの様に。
そんな涼介はシニカルな笑みと共に嘯いた。
「まぁ、そう言って俺を怨んで殺しに来た奴等全員ブチ殺してやったけどな……」
シニカルな笑顔と共にそう吐き棄てる涼介にアレクシスは嫌悪感を露わに納得した。
「貴方が自分の事をロクデナシのクズだって言った理由が良く解ったわ……殺しを愉しそうに言う奴に碌なの居ないわね」
「そりゃどうも。だが、だからといって手を貸すのを辞めたって言うのは無しにしてくれ」
涼介がアレクシスの言葉を認めると共に釘を刺せば、アレクシスはムッとした様子で返す。
「言った通り、手は貸すわ。勿論、貴方達の捜す標的を見付けて、貴方達に教える……だけど、それ以外の者達を殺すのには加担しない」
「ソレで充分だ。裏切らないでくれるってだけでお釣りが来る」
涼介にすれば、裏切りを含めた邪魔をされないだけ儲け物であった。
だからこそ、ソレ以上の事は言わずに作戦の説明を続けた。
「間抜けな友達ヅラして和気藹々としながら標的を捜して見付けたら、その面を覚えてソイツの部屋を確認。その後は夜を待って仕掛ける訳だが……質問は?」
涼介が質問を求めれば、綾華が質問して来た。
「ソレが上手く行かずに私達の事がバレてたら?」
「その時はプランB。1人ずつ丁寧に殺し回って標的を見付け出して殺す……単純だろ?」
アッケラカンに皆殺しを宣言する涼介に綾華は呆れてしまう。
「とんだクソプランね。つーか、皆殺しは嫌だって言ってた奴の作戦とは思えないんだけど?」
「いやぁ、皆殺しにしても依頼人が帳消しにしてくれるってんなら、さっさと終わらせる方が建設的だろ?後々に起こるだろうトラブルも種の内から始末出来てさ?」
いけしゃあしゃあと宣う涼介に綾華は益々呆れながらも、気に入った様子であった。
「アンタの邪悪ぶりに私でもドン引きだけど、シンプルな方法は大好きよ♡良いわ、ソレで行きましょう」
そう言う事になった。
こうして作戦の概要が決まると、ハンヴィーは山越えした所で停まった。
ハンヴィーを停めた涼介はギアをパーキングに入れてサイドブレーキも掛けてエンジンを完全に停止させると、アレクシスに確認する。
「ついさっきやった様な転移は今も可能か?」
「えぇ、出来るわ」
アレクシスが肯定すると、涼介は指示を飛ばした。
「なら、山越えをしてアンタの家に着いたら其処に転移させてくれ」
「了解」
涼介の指示をアレクシスが了承すると、綾華は尋ねる。
「オルドヴァの王城へ向かうのは理解したけど、今日決行するの?」
その問いに涼介は否定で返した。
「流石に今日仕掛けるのは無理がある」
「なら、何時やるのよ?」
「実行は明日。今日は夜までアレクシスの家で待機すると共に作戦の準備に使う……とは言っても、夜には王城へ出発するんだけどな」
今日は出発する夜までの間を全て作戦の準備に使う事を告げれば、綾華は納得する。
「成る程ね。因みにプランBになる可能性は?」
「半々。そう言いたい所だが、標的が俺達の動きを既に察知してる可能性の方があるのも否めないんでな……7対3でプランBになるってのが俺の見立てだ」
「当てにならないわね」
「仕方ないだろ?情報が少ないすっ飛ばして無いも同然なんだから……」
俺は悪くない。
そう言わんばかりに言い訳がましく返した涼介はハンヴィーから降りると、荷台からFN-FALとバックパックを降ろして装備していく。
その後に続いて綾華もバックパックを降ろして背負えば、涼介達は再び山越えをしての密入国を始めるのであった。
依頼人がドラゴンボールよろしく何とかしてくれて、色々を帳消しにしてくれるんならソレを最大限利用して皆殺しも念頭に入れてさっさと終わらせるとか言うマトモな思考の奴なら絶対にやらないし、多分考えもしないだろう効率厨めいたクソプランよ
そんなクソプランを考え、実行に移そうとする奴はクズのロクデナシのサイコパス以外の何者でもないからな?
だから、アレクシスと綾華がドン引きしてる