表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/10

ヒューミントの答え合わせ

ヒューミント…Human Intelligenceの略語

意味は人を通じて情報を収集、分析する事




 翌日の朝。

 各地の村の住人達が起きて朝餉を作る煙が上がってる頃。

 仮眠も含めた休息をしてから山越えを完了させた涼介達は、麓の平原まで降りてロムルリスへの密入国を果たしていた。

 地面にしゃがんでいた涼介はスマートフォンと紙の地図を地面に広げると、アリアに尋ねる。


 「アリア、俺達の現在地は此処だ。此処から何処へ進めば良いか?教えてくれ」


 涼介が紙の地図を指差して現在地を教えると共に尋ねれば、アリアは地図を指差してなぞりながら目的地を告げる。


 「更に西へ向かって王城へ向かいたい所だが、先ずはその前にこの国境近くの街であるダリスラへに向かって食糧と水を補給する方が良いだろう」


 アリアが冒険者として目的地を意見すれば、涼介は反対する事無く認めると、その先を尋ねた。


 「一旦、ダリスラに向かって食糧と水を確保すると共に休息を取るのは了解した。その後は?」


 「ダリスラからひたすら西へ進んで王都へ向かう。あのジドウシャとやらが使えれば、直ぐに着くだろう。だが、今はこの場に()()以上は徒歩で行かざる得ない」


 アリアの言う通り、ジドウシャ。もとい、ハンヴィーはこの場に無かった。

 山越えしての密入国をする関係でアレクシスの邸宅に残置せざる得なかったが故に……

 そんなアリアの言葉にアレクシスはさも当然の様に言う。


 「コレで良いかしら?」


 その言葉と共にアレクシスがパチンと指を鳴らした瞬間。

 涼介達の目の前にハンヴィーが現れた。

 突然、目の前に現れたハンヴィーに綾華は困惑した様子で「えぇ……」と、漏らした。

 涼介は「流石はファンタジーって言うべきか?」そう呆れ気味にボヤくと、アリアは「相変わらずデタラメ過ぎる」と、呆気に取られてしまう。

 そんな皆を他所にアレクシスは微笑みと共に涼介とアリアに尋ねる。


 「コレならどれくらいで着くかしら?」


 アレクシスの問いに涼介は地図から距離を算出してから答えた。


 「そうだな……色々すっ飛ばしてかっとばせば、夕方過ぎには着く」


 涼介の答えにアリアはまたも呆れてしまう。


 「で、デタラメ過ぎる」


 「だが、アンタには好都合だろう?」


 涼介の問いにアリアは肯定する。


 「お陰で助かる。だが、ダリスラには向かって欲しい。正直言うと、お腹がペコペコでな……」


 肯定と共にダリスラで朝食を摂りたい。

 アリアがそう告げれば、涼介が異論を挟む事は無かった。


 「奇遇だな。俺も腹ペコなんだ」


 「私もよ」


 「私も。朝ごはん食べたいわ」


 満場一致で朝食を食べたい。

 そうと決まれば、話は早かった。

 涼介達はバックパックを荷台に収めて身軽になると、ハンヴィーに乗車していく。

 初めて乗る自動車にアレクシスはワクワクしながらアリアと共に後部に乗り込むと、アリアから教わってシートベルトをした。

 そんな2人を他所に綾華は銃座に着き、涼介は運転席に乗り込んでシートベルトをしてからドアを閉めた。

 その後。エンジンを始動させた涼介はギアを入れると、サイドブレーキを解除してアクセルを踏み込んでハンヴィーを走らせた。


 「凄いわね。下手な馬より早いんじゃないの?」


 ハンヴィーのスピードに感心するアレクシスに涼介は心の中で「芝居上手な女だぜ」そうボヤくと、ステアリングを握り締めてアクセルを踏み続ける。

 そんな涼介に対し、銃座で周囲を警戒する綾華はインカムを介して尋ねた。


 「楽しそうにしてる魔女さんの同行認めるのは良いけど、何かメリットあるの?」


 魔女さん。

 もとい、アレクシスの同行を認めた事に綾華が何の利点(メリット)があるのか?

 改めて問えば、涼介は手っ取り早く。同時に確実に納得させる為、正直に答える。


 「俺達の()()()()()()()可能性が高い」


 唐突過ぎる内容に綾華は疑ってしまう。


 「マジで?」


 「詳しい事は知らん。だが、標的には是非とも死んで貰いたいそうだ」


 懐疑的な綾華に涼介は昨晩聞いた事の一部を正直に答えれば、綾華は納得しながらもその理由を予想する。


 「昔の元彼だったりしてね」


 冗談交じりに綾華が言えば、涼介は興味無さげに吐き棄てた。


 「さぁな……ブッチャケ、どうでも良い。つか、俺達には関係無い話だ。詮索はすんなよ」


 吐き棄てると共に涼介が綾華に釘を刺せば、綾華は話を変える様に問う。


 「何れにしろ、依頼成功の芽が出て来た訳ね」


 「その認識で良い。それより、シッカリ見張れ……空から爆撃喰らいましたーとか、見逃して待ち伏せされましたーとか、笑うに笑えねぇ」


 綾華の問いに肯定した涼介はシッカリ見張れと告げると、綾華は呆れてしまう。


 「アンタ、どんな経験してんのよ?」


 「碌でもない経験なのは確かだ」


 呆れる綾華にハンヴィーを走らせながら返した涼介は、何処か懐かしい気持ちになって居た。


 こうしてクルマを走らせてると、あの頃を思い出すな……


 再びハンヴィーを走らせる涼介は初めての異世界での事を懐かしそうに思い出していた。


 


、涼介は一切ミスする事無くキッカリ30分で国境近くのロムルリス最東端の街……ダリスラに到着させた。

 道行く者達の視線が初めて見るハンヴィーに集中するのを他所に涼介はゆっくりとハンヴィーを進ませながら、アリアにお願いと言う形で指示する。


 「衛兵の相手を頼む。俺達は貴女に雇われて指揮下にある傭兵……その方が説明楽だろ?」


 自分達の事に関して衛兵達から問われた際、アリアにその相手を頼む形で指示した涼介は自分達の身元に関するカバーストーリー(作り話)として、自分と綾華はアリアに雇われた傭兵にする方が都合良いのではないか?

 そう提案すれば、アリアは少し逡巡してから同意した。


 「ふむ…………その方が都合良いか……」


 アリアが涼介の提案に同意すれば、アレクシスも涼介の提案に便乗する様に言う。


 「なら、私も貴女に雇われた傭兵で……ほら、流石に魔女が彷徨いてたら色々面倒臭い事になるしね?」


 アレクシスの面倒臭い事になる。

 その言葉を聞いた瞬間、アリアは嫌な事を思い出すと共に頭を抱えてしまった。


 「あぁ、貴女は教会から嫌われてたな……一応、私の知り合いに手出しさせない様に根回しを頼んではみるが、"鉄槌"には期待出来ないだろうな」


 アリアの口から出た鉄槌なるモノに涼介は首を傾げると共に尋ねる。


 「"鉄槌"ってのは、どう言う連中だ?」


 涼介の問いにアリアは答える。


 「鉄槌と言うのは、教会の不利益になる者や背教者等。それに人々に害を為すモノ達を秘密裏に始末する……一言で言うなら、教会の暗部よ」


 アリアから語られた"鉄槌"なる組織の概要を聞けば、涼介は1つの嫌な可能性に不安を覚えると共に辟易としてしまう。


 「要するに教会暗殺部隊って訳か……俺達を殺そうとしなけりゃ、良いけどな」


 そんな涼介とは対照的にアレクシスは暢気に言う。


 「大丈夫よ。確かに連中は汚れ仕事専門だけど、貴方達が真っ当に生きてれば手は出して来ないわ……監視はするだろうけど」


 暢気なアレクシスの言葉に涼介はゲンナリとした様子でボヤいてしまう。


 「俺は清く正しく真っ当に生きたいが、生憎と俺達は清く正しく生きるタイプから掛け離れたロクデナシのクズだから無理だな……確実に敵として阻まれそうだ」


 涼介は自分自身をロクデナシのクズと認識すると共に自覚していた。


 クラスメイトを殺して平然と出来る上にグッスリ眠れる奴なんて、ロクデナシのクズ以外の何者でもないだろ……


 心の中でシニカルに自嘲する涼介にアレクシスは呆れてしまう。


 「本当のロクデナシのクズなら、さっさと皆殺しにして自分達だけで元の世界へ帰ってるわよ」


 ロクデナシのクズだったらクラスメイトなんて気にする事無く、さっさと全員殺して日本に帰っている。

 それ故に、ソレを選ばなかった涼介の事をアレクシスは否定した。

 だが、涼介はアレクシスの否定をアッサリ否定した。


 「ソレは無いな」


 アレクシスは自分の言葉を否定した涼介に気分が良くなかった。

 だが、それと同時に涼介は己自身にも厳しい信頼出来る男であると、判断すると共に信用しても良いのではないか?

 そう考える。

 しかし、同時にロンと名乗る涼介の事が解らなくもなった。

 そんなアレクシスを他所にハンヴィーのフロントガラスを介して見える警戒心を露わにする衛兵達の制止の手に気付くと、涼介はブレーキを踏んでダリスラの出入口である城門の前でハンヴィーを停めて言う。


 「アリア。応対を頼む」


 そう告げられたアリアはシートベルトを外してドアを開けると、ハンヴィーから降り立って警戒する衛兵達に語り掛ける。


 「私達は怪しい者じゃないわ」


 その言葉に益々警戒する衛兵達にアリアは首に掛けていた冒険者の証とも言えるタグと1冊の手帳を手にすると、衛兵に差し出した。


 「銀等級の冒険者か。名前はアリア・レイエス・ビーテ……」


 手帳もとい身分証の記された名前を最後まで読み終える前にアリアが大貴族の令嬢である事を知るや、相手をした若い衛兵は驚きと共に顔を青褪めさせると、言葉を失ってしまう。

 そんな若い衛兵に対し、アリアは優しく語り掛ける。


 「貴族の令嬢とは言っても、勘当されてる身だから気にしなくて良いし、口調も普通にして良いわ」


 お偉い貴族の令嬢と言う厄介な相手に若い衛兵は内心で頭を抱えながらも、キチンと職務を遂行する為に気を取り直してから問うた。


 「ゴホン……このデカブツは何でしょうか?」


 若い衛兵からハンヴィーの事を問われると、アリアはいけしゃあしゃあと答える。


 「冒険先で手に入れた移動目的に作られたゴーレム。詳しい事は手に入れた私にも解らないから聞かないでくれると助かるわ……」


 ある意味で嘘は言ってない答えに若い衛兵は釈然としないながらも、一応は納得して職務執行を続ける。


 「そうですか……では、中に居る方々の身分証を拝見させて戴けますか?」


 忠実に職務執行する若い衛兵を快く思いながらも、アリアは少しだけ申し訳無さそうに要求する。


 「悪いんだけど、隊長さんを呼んでくれないかしら?」


 アリアの要求に若い衛兵は「少々お待ち下さい」そう言い残すと、直ぐに詰所に走り出した。

 それから程無くして隊長である年輩の衛兵を連れた若い衛兵が戻って来た。

 隊長である年輩の衛兵は慣れた様子で自己紹介をすると、用件を尋ねる。


 「私が隊長のオリヴァーです。御要件は何でしょうか?」


 尋ねられたアリアは1枚の折り畳まれた紙を雑嚢から取り出し、ソレをオリヴァーと名乗った隊長へ差し出した。


 「拝見致します」


 紙を受け取った隊長は畳まれた紙を開いて紙面に記された内容に目を通すと、紙を丁寧に折り畳んでアリアに返し、ただ一言告げた。


 「事情は解りました。御通り下さい」


 「ありがとう」


 アリアは隊長に感謝すると、踵を返してハンヴィーに乗り込み、涼介に告げる。


 「許可が降りたわ。私が案内する所へ向かって」


 「了解」


 返事をした涼介はサイドブレーキを解除すると、ギアを入れてアクセルをゆっくりと踏み込んでハンヴィーを走らせてダリスラの街へと進めた。

 そんなハンヴィーを見送る衛兵達の1人。

 もとい、アリアの応対をした若い衛兵は隊長に尋ねる。


 「隊長。よろしいのですか?」


 部下である若い衛兵の問いに隊長は一言だけ答えた。


 「彼女は王家の命で動いてる」


 ソレ以上の事は聞くな。

 そう言わんばかりの答えに若い衛兵はソレ以上の事は聞かず、好奇心を刺激されながらも仕事に戻ったのであった。





 街を行き交う人々は徐行でゆっくり進むハンヴィーを興味深そうを見詰めて居た。

 そんな街の住民達の様子に綾華はボヤいてしまう。


 「何かどいつもこいつも珍獣を見る様な目を向けて来るんだけど?」


 インカムを介して聞こえる綾華のボヤキに涼介はハンヴィーを徐行させながら、素っ気無く返した。


 「そりゃそうだ。今まで見た事の無い初めて見る得体の知れない物を目の当たりにすれば、誰だって目が釘付けになる」


 「ねぇ、視線ウザいから中に入って良い?」


 綾華の要求に涼介は少し考えると、ソレを認めた。


 「助手席に座れ」


 涼介の言葉を聞くと同時に綾華はM4A1を手にさっさと銃座から降りると、助手席に滑り込む様にして座った。

 助手席でリラックスする綾華を他所に涼介はアリアに尋ねる。


 「このまま真っ直ぐか?」


 「そうだ。朝餉(朝食)の前に冒険者ギルドで中間報告を入れたい」


 アリアが答えれば、涼介は反対する事無くハンヴィーを進めて行く。

 行き交う住民達の好奇の目に晒されながらハンヴィーが地図を背にコンパス(方位磁石)と剣を掲げた看板が見える所まで進むと、アリアは告げる。


 「其処の剣とコンパスの看板のある建物の前で停めてくれ」


 再び「了解」と、返した涼介はハンヴィーをそのまま進めた。

 程無くしてハンヴィーが看板を掲げた建物……冒険者ギルドの支部の前まで進めば、涼介はブレーキを踏んでギアをパーキングに入れてからサイドブレーキを掛けた。

 それからエンジンも切って完全に停止させれば、アリアはハンヴィーから降り立って冒険者ギルドの支部へと消えて行く。

 そんなアリアを見送った涼介はシートベルトを外すと、ハンヴィーから降りてハンヴィーのボディに寄り掛かった。

 車内に残る綾華達を他所に涼介は煙草を吸い始めると、紫煙を吐き出していく。


 「すぅぅ……ふぅぅ……」


 最初の一口目を肺に入れずに吹かすと、二口目を吸って肺に紫煙を流し込み、美味そうに吐き出して暢気に煙草を燻らせる涼介は思案する。


 標的を知る人物に協力が得られたのは僥倖だが、未だ油断は出来ない。

 土壇場で裏切られる可能性も無いかもしれないが、考慮しないとならなくなった。


 色々と秘密を抱えていながらも、標的の事を知るアレクシスの協力を得られたのは僥倖と言える大きい収穫であった。

 だが、標的との関係を具体的には語らぬアレクシスの事を涼介は完全に信用出来ずにいた。


 魔女であっても人間だ。

 過去に標的と恋愛関係にあって、標的の事を未だに愛していたら標的の味方に着く可能性だってある……

 ソレが別れた元彼だとしても例外じゃない。


 男と女の関係は複雑極まりない。

 その点を踏まえれば、涼介はアレクシスの事を完全に信用する気になれなかった。

 だが、ソレでも断行しなければならないのも事実であった。


 理想的な展開はアレクシスを利用して早急に標的を見付け出し、標的を処理(殺害)する……コレに尽きる。

 幸いにも短い時間とは言え、猶予は未だ残っている。

 その間に標的を処理すれば、俺達は帰れる。


 簡単ながらも理想的な展開を思い浮かべた涼介は煙草を燻らせながらスマートフォンを取り出すと、ジェーンに電話した。

 数度のコール音の後にジェーンが出れば、涼介は尋ねる。


 「俺へ支払う報酬は、俺の言い値で良いんだよな?」


 「えぇ、そうよ。仕事が完了した際に貴方の望みを叶える……ソレが私が貴方へ支払う対価よ」


 ジェーンが報酬の事を肯定すれば、涼介は更に尋ねる。


 「ソレはあらゆる望みを叶えるって認識で良いのか?」


 「そうよ」


 ジェーンの肯定が返ってくれば、涼介は念を押すように確認する。


 「あらゆる望みに死者蘇生も含まれるか?」


 「本当なら駄目だけど、今回に限りは呑むわ」


 己の確認をジェーンが肯定すれば、涼介は己の求める報酬を告げる。


 「俺の望みは仕事完了後に指定する者達の蘇生だ」


 その対価をジェーンはアッサリ呑んだ。


 「良いわよ。依頼完遂した後に望みを叶える事を確約するわ」


 「ソレが嘘偽りだった時は覚悟しろ」


 涼介が釘を刺してくれば、ジェーンはさも当然の様に返す。


 「私は姉と違って約束は護る事を自慢にしてる。その私のプライドに誓って報酬は絶対に支払うわ」


 「ソレなら良い。あ、もう一つ良いか?」


 涼介はそう言うと、もう1つある要件を告げた。


 「俺達の同行を監視してるだろうから知ってると思うが、アレクシスと名乗る魔女に関して知ってる事があったら教えてくれ」


 要件とも言えるアレクシスに関する問い合わせに対し、ジェーンは答えない代わりに質問を投げた。


 「貴方はどう見てるのかしら?」


 ジェーンから投げられた問いに涼介は煙草を燻らせると、自分の中で立てた仮説を答えた。


 「すぅぅ……ふぅぅ……アンタの()()()()()。または親しい友人……コレが俺の当てずっぽうな仮説だ」


 涼介の当てずっぽうな仮説にジェーンは根拠を求めた。


 「その根拠は?」


 「当てずっぽうの言い掛かり同然だから間違ってるのを前提で言うが……その前に聞かせてくれ。アンタの友人はこの世界の主たる女。即ち、女神で合ってるか?」


 根拠を答える代わりに確認の質問を涼介が投げれば、ジェーンはソレをアッサリと肯定した。


 「そうよ」


 ジェーンが肯定すれば、涼介は仮説の根拠を述べていく。


 「さっきも言った様に間違ってる前提だが……大概の場合、この世界の主に限らず、お偉い奴に対してタメ口を使う奴は滅多に居ない。大なり小なり畏れを抱いてるなら尚更だ」


 其処で言葉を一旦切ると、涼介は再び煙草を燻らせてから続ける。


 「すぅぅ……ふぅぅ……畏れを抱いてる以上、その場にお偉いさんが居なくてもお偉いさんに対し、丁寧な口調になるのが人間の性の様なもんだ。まぁ、そう言うのをクソ喰らえにしてる奴には当て嵌まらないだろうがな……」


 再び言葉を切った涼介はまたも煙草を燻らせ、根拠の続きを述べていく。


 「すぅぅ……ふぅぅ……だが、彼女からそう言うクソ喰らえと言う感情は感じなかった。寧ろ、親しい相手に対する友好的なモノを感じた。そうなると、アンタの友人の部下と言う線も否めないが、部下なら自然と丁寧な口調になるだろうから部下は除外になる」


 そう述べると、涼介は締め括る様に最後の言葉を告げた。


 「部下が除外となれば、残るのは友人や家族と言った身内の可能性なんだが……ハズレなんだろうな」


 シニカルに自分の仮説が間違っている。

 そう最後に締め括れば、ジェーンは感心した様に言う。


 「僅かな時間と遣り取りから其処まで見通せるとはね……姉が貴方を気に入る訳だわ」


 ジェーンの答えから何かを察したのだろう。

 涼介は驚きと共に言う。


 「マジかよ……」


 そんな涼介のボヤキにも似た言葉にジェーンは肯定で返した。


 「友人か?身内か?その点は本人の口から聞くべき事だから教えないけど、貴方の見立ては正しいわ」


 自分の仮説が正しい事を立証されたにも関わらず、涼介は嬉しくない様子であった。


 「こんなん当たっても嬉しくねぇわ」


 「コレは好奇心から聞くんだけど、他にも根拠はあるのかしら?」


 ジェーンの問いに涼介はつまらなさそうに答える。


 「女神の意志に反した召喚。そう聞いた瞬間、彼女は怪訝ながらも真剣な表情になった。で、その事に対して強く疑問を覚えていた。その後に女神が送り返そうとしたが、断念せざるなった事を伝えた時の反応で、彼女がアンタの友人の身内だって言う仮説が俺の中で産まれた」


 つまらなさそうにしながらも詳しく語った涼介にジェーンは益々感心した。


 「姉から共有された記憶で貴方の事を知ってたつもりだけど、こうしてシャーロック・ホームズじみた洞察力や推理力を目の当たりにすると改めて姉が気に入った事が納得出来た」


 其処で言葉を切ったジェーンは一息付いてから更に言葉を続けた。


 「だからこそ、貴方に白羽の矢を立てた私の見込みは合っていた事がこうして証明されて嬉しいわ。御世辞じゃなく、本心からの言葉よ」


 ジェーンから賞賛された涼介はつまらなさそうに返す。


 「そりゃどうも」


 涼介がつまらなさそうに返すと、ジェーンは涼介が最も知りたがってるだろう事を切り出して来た。


 「さて、貴方が知りたい事だけど……標的がアレクシスを名乗る彼女が思い浮かべている人物なら、裏切りの心配は不要よ」


 「その理由は?」


 「ソレも本人の口から聞くべき事よ」


 ジェーンの答えに涼介は苛立ちを覚えながら返す。


 「秘密主義も大概にしろ。俺達に成功して貰いたいなら必要な情報を洗いざらい答えろ。じゃなきゃ、成功するもんも成功しねぇぞ」


 涼介が責める様に言えば、ジェーンはさも当然の様に返した。


 「私は必要な情報は全て与えているわ。それに、彼女と標的の因縁は貴方達の仕事には関係無いでしょう?」


 「だとしても、裏切りのリスクがある以上は知っておくべきだと思うんだが?」


 引き下がる事無く返せば、ジェーンはもう言うべき事は無い。

 そう言わんばかりにブチッと通話を切った。

 そんなジェーンに涼介は「クソが」そう吐き捨てると、苛立ち混じりにフィルターの数歩手前まで燃えた煙草を燻らせるのであった。




涼介はアレクシスのと僅かな会話の内容からアレクシスの事を分析し、当てずっぽうの言い掛かり同然ながらも答えに辿り着いたってヒューミントの答え合わせ回だけど…


自分でも言うのも何だけど、乱暴過ぎる仮説だと思わざる得ない


こう言うヒューミント能力も涼介が居た箱庭では生き残るのに必要だったりする

因みにだが、このヒューミント能力は師匠から教わってソレを経験から磨き上げたモノなので一応はチートではない

涼介の師匠、何者だよ?そう思うだろうが気にするな←


感想とかブクマとか評価とかレビュー貰えると嬉しいからチョーダイ♡

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ