89話 牽制と火
戦闘開始?
甕にとあるものを詰め込み満杯となった後、ほかにもこまごまとした準備を終えいよいよ戦闘開始となった…いや本当に動かないタイプのモンスターで助かったわ。運営も温情があると一瞬思ったけど、そもそもチュートリアル扱いのエリアでコイツがいる時点で無いな!
「では作戦通りにお願いします!」
『あぅ!』
「了解だよ!」
「フェルちゃんに良いとこ見せちゃうわよー!」
「加減に注意しないといけないわね~」
「本当に全力でやらないように頼むぞ?地盤を復旧させるのは大変なのだから」
「地面に当てないようにはするわ~」
「取り敢えず振り被りすぎないようにしてくださいね…」
もう言葉の端々が物騒なのよ。目の前のエルダートレントが敵なはずなのに味方の方が危険というね…周囲への影響を考えなくちゃならんのはもう災害と変わらん!でも、そのうちプレイヤーも似たようなことができるって考えると…まぁ向こう見ずなのはレッドネームとかで居なくなっていくだろうし大丈夫かな?そうだと信じたい。
「一先ずフェルと俺は牽制だ!」
『んぁ?』
両手で持ち上げるようなジェスチャーをしてるけど…最初からエディファイヤを使わなくていいのかって事か?
「いや、今から使って一番重要な時に対策されたら困るからぶっつけでやるって言っただろうに…甕に詰め込んでる時はちょっとボーっとしてるなと思ったけど、濃縮薬のこと考えて聞いてなかったんじゃ」
『ん~?……あう!』
そうだったかなーとくるりと背を向け、少しの沈黙の後に覚悟しろとエルダートレントを指さした…絶対聞いてなかったな。甕に詰めてる時も満杯になってってのにまだ垂れ流してたから声を掛けたらビクってしてたし。
「はぁ…取り敢えず周囲を回りながらファイヤーボールやバレットであの樹皮の盾を持つ枝とかをウィーツさんたちから離れさせてくれ」
『あぃ!』
「やっぱ聞いてなかったな?」
『ん~ん?やぁー!』
どうだったかな?とまた背を向けたかと思うと、バヒュンと目の前から飛び去って火の玉を打ち出し始めた。
「……まぁちゃんと動いてくれてるしいいか!そんじゃ俺も――ファイヤーボール!」
ボシュッという音と共に、ソフトボール大のものが飛んでいく。フェルが飛ばしてるのと比べて大分小さいな…やっぱ種族特性や称号だったりが威力に関係してそうだ。
「そんで俺のファイヤーボールは普通に樹皮シールドを持った枝で防がれると。フェルのは何回か弾かれてるけど、そこも大きさやらが関係してんのかな…わからん」
因みになんで俺が火魔法を使えてるのかというと、攻撃要員は多い方がいいだろうと普通にスキルポイントを使って取得したからだ。本当は3ポイント消費の闇魔法が欲しかったんだけど火魔法も草木灰を作るときとかに使うことがあるだろうし早めに取っておいて損はない…ロマン的には闇が良かったけど。後もやしとかが暗所じゃなくてもできるんじゃと思っとあぶねぇ!
「あの野郎、的確にフェルが放ったボールやバレットを弾いて来るから立ち止まってちゃいかんな」
まぁ敵と戦ってるのに立ち止まって変なこと考えるなってことだ。よし!お前を倒した経験値でレベル上げて闇魔法手に入れてやるからな…いや、レベル上がっても1しか貰えんから取得できんか……くそぅ!燃え上れ老木野郎!そして倒したらドロップするであろう木材は大切に使わせててもらうぞ!
『ぬぅ?』
何か八つ当たりを近くで感じる気がすると思うフェルであった。
ちょっと夏バテ気味なので今日はかなり短くなりました…次回までに治します!
ブックマークや評価を頂けると嬉しいです!




