86話 安全圏とパリィ
大樹は大クスと呼ばれるデカいクスノキみたいな太さを想像していただければと…神社とかにある幹の幅が広い木ってイメージです。
打開策となる救世主を背中から引っぺがして、エルダートレントが良ーく見えるように前に持ってきた。
『んー!?』
「こら藻掻くな藻掻くな。よーく考えるんだフェル…のんびりとここで話してる割にアイツが攻撃してくる気配はないだろ」
『…む!』
そういえば確かにという顔をしてるな。びっくりして隠れたから他のことに気が付いてなかったか…
「ここまでは枝が届かないみたいだね!」
「まぁ何かあってもアレぐらいならば、気が付いていれば避けられますからな」
俺も他の人たちが落ち着いてるから観察出来て気づいただけなんだけどな!
「ここが安全だとわかったことで…さぁフェルちゃん!貴方の火魔法が活躍するときよ!」
『むぅ~んん?』
「使える魔法がそこまで強くないやつしかないけど大丈夫かって…どうなのかしら?」
まだレベル5だもんな。えーっと今覚えてるのはファイヤーボールにバレットと…後は何だっけな?さっきのレベルアップの時に確認し忘れたからこの後確認しよう。
「流石に単体だと厳しそうね~」
「他の攻撃やスキルを組み合わせて倒すしかありませんな」
うーん、俺の取得スキルで役に立つもんあるだろうか?
「あたしは伐採だけならできるんだけどねぇ…こいつ等は核があればぶった切ってもそこから生えてくるのが厄介なのさ!チャコールなら思いっきり割ればよかったから楽だったけどね!」
「もしかして、戦斧でデカい範囲をバキバキ折ってたのって核を破壊するためでしたか?」
「ええ、基本トレントの核の位置は似ていますのでその範囲を切れば討伐できるのですよ。しかし、エルダーとなると核を移動させることも可能ですのでその方法が取れないのですよ」
うわぁ、もし幹を切っても核があれば生き残るのか。想像以上に面倒でやりにくい相手だけど、核が移動する点だけは何とかなるな…でもすぐ動かれたら意味ないか。
「俺が魔力視で核を見れば、そこだけは何とかなりそうですね」
「あ、確かにあの炭ゲットだ!の時に言ってたわね!」
「それ蒸し返すのやめてくれません?地味に恥ずかしいんで」
あの時わざわざ魔力視で確認する必要もほぼ無かったのも分かって、さらに恥ずかしさが倍だよ!
「ま、まぁ取り敢えずフェルが火魔法で攻撃してみますか!」
えぇーこの雰囲気でやるの?って顔をするんじゃない!ほら!バーンベリーおやきやるから!
『んむぅ』
しょうがないなあと、おやきを咥えながら動き出した。
「一番弱いファイヤーボールで頼む。魔力も普通の量でいいぞ」
『んー…うぁぅ!』
せめて食い終わってから飛ばせ…あぁほら、おやきがこぼれてるじゃないか!
ボゥと手のひらから生み出された、学校で使うようなバスケットボール大のファイヤーボールがエルダートレントに向かってゆく。
「おや、意外とでかいじゃないか」
「火への親和性が高いからなのかしらね~」
「チャコールトレントの時はダメだったけど、もしかしたら今回なら結構なダメージ入っちゃうかも?」
割と高評価だ。俺のウォーターボールもこれぐらいの大きさなんだけど、これが当たり前じゃないんだなぁ
…絶対称号とかが悪さしてる。
真っすぐエルダートレントに飛んでいき、生えそろう枝の下にまで達し幹に当たるまであと少しという所で――前方に大きな影が。
バァン!
今までまごついて下げられたままだと思われていた枝が突然持ち上がったかと思うと、瞬時にファイヤーボールの前まで動き出しその枝に巻き付けられた物によってファイヤーボールが弾かれてしまった。
「なんじゃありゃ!?っとアブね!」
『んやぁ!?』
「あれは…先ほど剥がれた樹皮ですな」
そう、あの時にバキバキと剝がされた自身の炭化した樹皮を盾としたのだ…しかも的確にファイヤーボールを放ったフェルに向かって弾き飛ばしてきやがった!
「あの下げてた枝はこの為だったのかい」
「エルダーで知性が高いばかりに、さらに厄介になってきたわね~」
「これは…どうすればいいの?」
どうすりゃいいんですかね?
既に戦闘描写が確定しているので少し筆が進まない…描写センスアップのために頑張ろう。
ブックマークや評価を頂けると嬉しいです!




