83話 背後の嵐と仲裁
今回は短め!
目の前で烈火と雷雨から繰り広げられる嵐を戦々恐々としながらも眺めていると、抱えているフェルがもぞもぞしだした。
『…んむぅ?』
「お、目が覚めたか」
『……や!』
少しボーとしていたが、ハッとしたかと思うと気絶した原因となったピリンを見つけ、ビシィ!と指をさす…が
『う?…ん』
そのすぐ隣で嵐が発生しており矛先がピリンさんに向いているのに気が付いたのか、もう怒られてるのなら別にいいかと頷いた…というかアレに巻き込まれたくないだけだな?片手で俺の腕を掴んできたからすぐにわかったぞ。
「まぁ俺も嫌だから眺めてるだけにしてるんだけど」
『ん!』
その方がいいとまたもや大きく頷いた。ですよねーと2人して嵐の様子を眺めていたが、ふと後ろから足音がしてきた。
「ありゃ何をやってんだい?」
『おー!』
「あ、ウィーツさん。伐採はもういいんですか?」
遠くでチャコールトレントの伐採をしてたウィーツさんが戻って来ていた。そういやしばらく伐採音がしてなかった気がするな?んでフェルが興奮してる理由は、背中に下げてる腰鉈を間近で見れたからっぽい…目がそっちに向いてるし。
「伐採は気になることがあったんで一旦中止さ…それよりも気になることが起こってるけどね!」
「あー、まぁ。ピリンさんがまたやらかしたというか…暴走しすぎてフェルを強く抱きしめ過ぎまして」
『あ~ぅあ!……んう!』
ウィーツさんに近づいたかと思うと、大きく藻掻いた後に首をかくんとさせて気絶したってのを解りやすく再現したな…よく見ると疲れが残ってるのか息が乱れてるけど。気絶から覚めたばかりなんだから無理をすんなっての。
「成程ねぇ。確かに幾ら近くに妖精がいるとはいえ、主が決まってる子を気絶させるってのは駄目だね!この子にダメージが無いから良かったけど、あったら犯罪になっちまうからね!」
「え、そうなんですか?」
『う?』
「当たり前だろう?他人の仲間を傷つけたんだから、何かしらの罰はあるべきさ」
ってことはかなり危なかったってことか!ピリンさんがここまでするつもりは無かったって言ってたから、力のセーブはしてたんだろうけどこいつの頑強は未だに2だからな…下手すりゃ罰が発生してたわけか。多分プレイヤーのオレンジネームとかと同じな気がするけど。
「と言っても今回は傷をつけたわけじゃないし、流石にこの山で説教をするべきじゃないね」
「耐性薬があるとはいえ、時間制限がありますもんね」
「後はワイバーンが戻ってくる可能性もあるのさ。はぐれとは言え縄張り意識はあるだろうからねぇ」
ワイバーンが戻ってくる…確かにフェルが一撃加えてどこかに去って行ったとはいえ、この山や周辺に魔力が豊富なのは変わらないわけだもんな。縄張り意識もあるのならその可能性も高いか。
「それを聞くと結構ここにいるのが危ない気がしますね」
「だろう?旦那や私たちが居るとはいえ、この場所は魅力的な土地だろうさ!それにさっきも言ったように気になることもあるからね…ちょいと行ってくるよ!」
そう言うと何でもないかのように嵐の中に突っ込んでいった…勇気あるなー。そして
パンッ!
両手で叩いてパネットさんたちの注目を集めたかと思うと、直ぐに近づいて発生源の2人に対して何かを言い背後の荒らし製造機を治めた。そして反対側の項垂れて涙目のピリンさんの肩をバンと掴み
「ほれ、シャンとしな!ちゃんと理解できてるってんなら次からはキチンとするんだよ!」
「は、はい!」
そう言い放った。い、一瞬で解決しおった…途中から今までの妖精失敗談への説教になってたから止めるべきだとは思ってたんだけど、それに関しては部外者だしまず中に入れんって。
「旦那たちもいいね?」
「ああ…ちとヒートアップしすぎたな。それにまだ不確定要素のある場所で説教をするべきではなかった」
「今までのが出ちゃったわね。モルト君たちに迷惑をかけちゃったわ~。不確定なものは今まさにウィーツちゃんが見つけたって話だものね~」
「それがわかってるのならもう大丈夫そうだね…ほらピリン!フェルが目を覚ましたからちゃんと謝りな!」
そして2人も落ち着いた…気になることがあるってのを最初に話して思考を逸らしたのかな。んでワイバーンのことも話して説教をしてる場合じゃないって諭したとか?豪快な人だなーとは思ってたけど、判断力もある人だよなウィーツさん。
「そうしたいのは山々なんですけど…」
「どうしたい?」
「肩が外れちゃって…」
「おっと、力が入りすぎてたね!」
ただ、筋力は制御できてないけど。
豪快さはあるけど、その実周りの事はきちんと見ている人です。ただまぁその豪快さがでか過ぎる!
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