9話 残った物と特殊な種族
原因は枝に鱗と大量の草。
無事(?)大樹の麓から最初の空間に戻ってこれた2人。
『酷い目にあったわ。まだ目が痛い気がする』
「それをやった妖精がこの空間にいた気がするが」
あの事を忘れたわけではないぞと、シーズを睨む。
『ナンノコトカナー?』
「ったく…あれ?バッグがないぞ!?」
それどころか胸当てや籠手等の防具もなくなっているようだ。
「せっかく採取した植物たちがない!種もあったから畑を手に入れたら植えようと思っていたのに!」
『あー…何となくわかっていたけどやっぱり消えちゃうのか。あっちに移動したときに装備として出てきたものだからねー』
「酷い!?無駄足だったってことか!?あんまりだー!」
人が苦労して集めた植物だぞー!とよつん這いになり叫ぶ耕司を、苦労?楽しんで採取していた気がするけど…と思いつつも
『ま、まぁ検査結果が良くなっているかもしれないからいいじゃない!何か良い種族が出てくるかもしれないわよ!』
「だとしてもあの時採取したのは帰ってこないんだぞ…」
これは大分響いちゃってるわねぇと困ったシーズ。どうにかして立ち上がらせないと種族選択どころじゃないわよねと考えていたところ
キランッ
「…なんだ?何か光ったような」
『あぁ!精霊様から頂いた腕輪じゃない!』
確認してみると、あの時に受け取った精霊花の腕輪が右手首に嵌まっていた。普通気づきそうなものだが、動転していてそれどころでは無かったようだ。
「これだけは残ったのか」
『良かったじゃない!あの時のヒール草でスライムが助かってこの貴重な腕輪に繋がったんだから無駄ではなかったのよ!』
「そうか…よし!あの植物たちは今度集めればいいか!」
そういって跳ね起きる耕司。バッタか己は。
「何故か大根の葉を喰いまくりやがった野郎に例えられた気がする」
『どんな例えよ…それにしても復活が早いわね?もう少し時間がかかるんじゃないかと、励ましの言葉を考えていたのだけど』
「作物での失敗は慣れっこだからな!」
『そこは慣れていいのかしら』
ダメなんじゃないですかね。
『気持ちも落ち着いたってことで、早速種族選択の時間よ!』
そうシーズが言うと、ウィンドウが現れた。
『その中から選んでね!珍しくて面白い種族だと嬉しいわ!』
「隠そうともしないな」
『もう必要ないかなーって。あなたも楽しい方が好きでしょ?』
「そりゃそうだけど…取り敢えず確認してみるか」
ウィンドウを見るとかなりの種族が書かれている。
「人に小人とエルフとドワーフに獣人…他に魚人もいるが、やけに獣人が多いな」
『種族全体でもかなりの氏族が居るのが獣人種だからねーそれよりも珍しいのはいないの?』
「数が多くて何が何だか」
煩わしいなとウィンドウの横を確認してみたら、選定種族以外の除外と書かれた項目があった。
「検査した場合の種族って別枠なのか」
『よし!絶対に面白いのがあるはずよ!』
「何か違う意味が込められている気がするがまあいいか」
そうして検査前に選べる種族は除外されることになり、選定種族の中から選ぶことになった。若干シーズに乗せられている気がするが、農業に役立つ種族がいればいいなと思い調べだす。
「まずは獣人族でジャガー。何でジャガー?」
『あれじゃない?ゴブリンを1体首狩り一発で倒したからとか』
「そんなもんも結果に出るのか。次はボーパルバニー」
『兎氏族から分派した者たちね。スタミナの高さと容赦なく急所を攻撃するのが特徴よ』
「似たような理由で出てきてるな。獣人はもう飛ばしてもいいんじゃないか?」
大鎌での戦闘が反映されているのは分かったが、個人的に旨味のある氏族はいなさそうだ。
『もう少し見ましょうよ。バビルサ氏族とかはないの?』
珍しい種族のわりに知っている人が多い氏族である。
「それ頭に牙が刺さって死ぬって言われているやつじゃん」
『実際そんなことでなくなるのは殆どないそうよ?』
因みに牙が伸びるのは男性のみで、女性の場合は獣人族以外からするとイノシシ氏族と見分けがつかないと言われている。
「どちらにせよ却下だ」
『えー』
ぶー垂れるシーズをよそにウィンドウのスクロールを進めていく。
「おお、ウッドエルフってのもあるな」
『ウッドエルフ!?上位種じゃないの…拾っていたものが原因かしら』
「となるとあの枝か?採取物でも増えるってのは面白いし、さらに無駄にならなかったのが分かって嬉しいな」
『エルフ種は魔法や精霊との相性がいいし、草木の知識があるからスキル選びの際に必要な力が少なくて済むわ』
「じゃあウッドエルフに」
『まだ全部見てないでしょ!あの鱗が要因の種族もあるかもしれないじゃない』
実際はエルフの延長線上の氏族だとそこまで面白くないかなと思っただけである。
「そりゃ確かに。となるとこのリザードマンとドラゴニュートとかそうじゃないか?」
『リザードマンはまだ分かるけど、希少種族まで…あの鱗、神様が置いたのかしら。そうじゃなきゃおかしいわよね』
「希少なのか。でも農業するのには意味ないしなー」
ドライアドとかのまさに植物って感じのはいないもんかね。
そう思いつつウィンドウ一番下までスクロールさせると――特殊との表示があり、龍人と土龍人と書かれていた。
「ユニーク?」
『まさかあったの!?ウッドエルフやドラゴニュートよりも希少なのよ?』
「あるぞ。龍人と土龍人だそうだ…何で土限定?」
『龍人…希少どころじゃないぐらい珍しい氏族よ!しかも属性龍だなんて…絶対にこれにしなさい!』
「なんで勝手に決められなきゃ『確かタップをすれば説明が書かれているはずだから納得するはずよ!』わーったわーった。そう興奮して近づくな」
言われたとおりにタップをしてみる
【土龍人:土属性の魔力を多く持つ竜人族の希少氏族。土龍は豊穣を招く存在として知られ、その血を持つが故に農業や鉱石の採掘の技能においてはエルフやドワーフたちを凌ぐ実力を持つ。龍人の中ではかなり穏やかな性格ではあるが――
<土龍人に決定しますか?>
<はい> <いい「勿論はいだ!」『やたー!』
<・・・種族を土龍人に決定しました。続いてスキルの選定に移ります>
何故か覚えてしまっているバビルサ。
スライムを助けていることや、泉にたどり着いているのも要因ではあります。言ってしまえば加算されて出てきた感じですね。
修正:腕輪と指輪がごっちゃになっていました…正しくは腕輪です。
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