76話 食後と拘束
個人的にセリは天ぷらと混ぜご飯が好きです。
その後俺にもセイヨウヨモギのおやきが当たったが、そんなに苦みを感じることもなく美味しくいただけた…ついでにピリンさんはセリのおやきにも当たり苦いと叫んでいた。多分だけど苦いに対して耐性があんまないんだろうな…んで俺は野草をそれなりに食べてきてるから問題なく食べられると。
「私もお肉のやつ食べたかった!」
「こういう所でも運が無いというかなんというか…悲しいところだね」
「私や夫はそれなりに運が良いはずなんだけど~」
「見事に野菜や野草のだけ食べていましたな」
「あそこまで連続し肉の具材以外の物を掴むのは、逆に運が良い気がします」
俺は野菜でも肉でも良かったんだけど、綺麗に半々に手元に来たんだよなあ…バーンベリージャムのおやきも1つ食べたが割と良い具合に甘みと辛味がマッチしてた。
『~♪』
「お前は綺麗にバーンベリーのおやきを食べてたなぁ」
「香りとかで判断してたのかね?」
「えー?小麦の香りしかしなかったけど?」
「ドライアドだから植物の認識がちゃんとできてるのかもしれないわね~」
「その可能性は十分にありますな」
可能性というか確実な気がする…なんせわざわざ外側のおやきを退かしたりして中央のを選んでたからな!中身がわかってなけりゃあんなことしないだろうし。
「にしても不思議なぐらいに腹が膨れたもんだね!」
「私も3つが限界だった!」
「普通の見た目だし大きさもそこまでじゃないのに面白いわね~」
「モルト殿はそれなりに食べておりましたな」
「いやー…まだ体がこっちに馴染んでいないとかが関係してそうな気がしますねー」
実際はプレイヤーに満腹度が設定されてないだけだったりする。料理に設定自体があるんだからそのうち実装される気はするが…油断すると栄養素だったりも追加されそうな予感。まぁ、されたとしてもおやき1つで15も満腹度が増えるんだからそこまで気にしなくてもいいだろ。
『ん~むぅ♪』
ぽて…ぽて…
満腹なはずのフェルが上機嫌にさらに残ったおやきを手に取ったかと思うと、もう1つの皿の端に積み始めた…何してんだ?
「もしかしてバーンベリーのおやきだけ分けてんのか?」
『う!』
試しにその皿に残っているおやきを移動させフェルが分けた物のみにして鑑定してみると、しっかりと【バーンベリーおやき・品質3:4個】と表示された。
「おお、見事に分けられてる!」
「これで認識しているのは確定しましたな」
「じゃあフェルちゃんに聞いたらお肉が入ってたの分かったのよね?聞けば良かった!」
「まず貴女は冷静に近づけるようにならなくちゃいけないわね~」
「もう少しだと思うの!一緒にご飯は食べられたし…ね!フェルちゃん!」
『……』
キラキラした目を向けるピリンさんから目を逸らすと、おやきの分別をやめ無言で俺の袖を引っ張り背中に回るフェル。
「先は長そうね~」
おやつ休憩を終えシートを片付けたところでいざフェニス山へ向かうとなったのだが、その前にパネットさんが少し話がある用だ。
「と言っても簡単な話なのよ。ただ、昨日のお話が関係してるから…」
ちらっ
「え、何々?昨日の話って何のこと?…あ、フェルちゃんが居るのと関係があるのかしら!?確かモルトさんって最初1人だったはずよね!」
「まぁ、関係があるというか…」
そういや山の問題が解決したって話はピリンさんは知らなかったな…噂好きだから話を広めるかもってことだっけ。流石に俺だと判断が出来ないんで、昨日の今日なんだけど伝えちゃっても大丈夫なんですかね?とフォルクさんに目を向けると
「ええ、もう大丈夫でしょう。土地に魔力が戻っているのも確認できましたし、明日にでも村の皆を集めて伝える気でいましたので」
「土地が光ってるってのなら、もう畑で芽が出るのも秒読みだろうからね!」
成程…基本的に魔力があれば魔力草は育つって話だし、今の話を聞くと土地が光ってるほど豊富なこの状況なら芽吹くのも早くなるんだろうな。それを村の人たちが確認したら山の異常が解決したってのもすぐに広まるか…んじゃ早いとこ伝えるか!
食事処でした話をもう一度ピリンさんに話をすると、目にもとまらぬ速さでフェルを抱きしめ始めた。よくジェットで飛んでいる状態のを抱きしめに行ったな。
『んん~!!?』
「苦労したのね!もう大丈夫よ!」
『んむ~!』
今まさに苦労していると言わんばかりに唸り声をあげ藻掻いているが、悲しい事に筋力が全く足りていないのか抜け出すことが出来ないようだ…
「ジェットで抜け出せばいいんじゃないか?」
『む~!』
「それだと傷つけちゃうかもしれないから嫌なんですって~いい子ね~」
「優しい!そんなところも愛らしいわ!」
『むぐ~!?』
ああ…抱きしめる力がさらに強く…
順調に妖霊ジャンキーが進行するピリン…パネットの話は次回になります!
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