75話 実食と当たり
おやき食べるだけの回。
「それじゃフォルクさん、手洗い用のアクアありがとうございました!それとお先におやつ頂きます!」
『あう!』
「ええ、どういたしまして。あそこの親子が静まり次第、私もそちらに戻ります」
「了解です!それで親子って…ああ」
バーンベリーの茂みの方で、あの時のお玉を持ってニコニコしているパネットさんに対して平謝りしてるピリンさんが見える。やけに謝り慣れてるように見えるのは気のせいだろうか…
『ん?』
「何でもないぞーほらおやきが待ってるぞ!」
『んーぅ!』
そちらに目が行かないようにさせながらウィーツさんが待っているレジャーシートまで向かい、座った後に改めておやきを積んだ皿を2つ出した。ずっと出してたら冷めちまうからな!
「お待たせしました!」
「そんなに待っちゃいないさ。それよりもあたし達も食べていいのかい?」
「結構多くできたので大丈夫ですよ。何なら追加も少しありますし…と言ってもパクパクいかれるのはきついですが」
「そこは自重するから大丈夫さ!ほら、待ちきれない子もいるから早く食べようじゃないか!」
待ちきれない子…おぉう。フェルの口元の涎がMAXだ。
「じゃあ早速…いただきます!」
『いぁう!』
「有難くいただくよ!」
それぞれが1つ手に取り、パクっと食べだした。
『んんー!!』
「お!フェルは無事にバーンベリージャムのおやきが当たったか!」
「あたしのは…こりゃポトフの骨髄かい?」
「ですね。パンと合わせて食べるって話なので合うんじゃないかと思って…一応唐辛子とかも入れて甘辛くして有るんですけど大丈夫ですかね?」
「問題ないね…むしろ旨いよ!」
「なら良かったです!」
ジビエの肉や豚の軟骨を入れたおやきもあるって話だから作ってみたけど問題なかったようだ…包む前に食べたときは旨かったから大丈夫だとは思ってたけど。
「んで俺のはセリかな…この香りとシャキシャキとした触感がいい!」
結構種類がある中で最初に野草を食ったのだから運がいいな!
【ロシアンおやき・品質3:とある遠洋に存在する国の郷土料理。具材がランダムに入っているが、判別する方法がないため中身は食べてからのお楽しみである。食用:味は1つ1つで違う。満腹度回復1つにつき15】
因みに皿に積んだ後のおやきたちを鑑定したらこんなことが書かれてた。…料理名の判定を組み込んだ担当を呼べぃ!確かに窪みや焼き印で見分けを付けるべきだがロシアン呼びは酷くないか?
味の好みとかあるからこういう名前になったんだろうけど、おやきでこの名前だともう丸い焼きピロシキなのよ。生地の発酵をさせて無いからか違う料理扱いになったみたいだけど…いや下手すりゃ餡餅判定もあったか……もうそっちは中国版おやきとか言われてるし、どっちも起源が古いしで分からん!旨けりゃヨシ!
フェルが機嫌よくパクパクと食べてるのを見て安堵し、改めてモグモグとセリのおやきをゆっくり味わっていると
「あー!もう食べてる!」
「あらあら、まだ残ってるかしら~?」
説教が終わり手も洗い終わったのかパネットさん達とフォルクさんが戻ってきた。
「まだ食べ始めですからいっぱい有りますよ!」
「ではモルト殿、ご相伴に預かっても良いですかな?」
「勿論です!ただ印をつけてなかったので中身が分かりませんが…」
「それも楽しみという物でしょう…では私はこれを頂きましょう」
「う~ん…この焼き目が綺麗なのにする!」
「じゃあ私はこの綺麗な円形のにするわ~」
3人がそれぞれ選び、そのまま全員が車座の形になってまた食べ始めた。
「これはハーブを利かせた牛肉ですかな」
「私のは…ノゲシかしら?シンプルだけどシャキシャキして美味しいわ~」
良かった、フォルクさんとパネットさんには好評っぽい。特にパネットさんが美味しいって言ってくれたのが野草ので嬉しいぞ…いや、ノゲシやアキノノゲシはヨーロッパでは野菜の分類だっけか?ここら辺は建物とかを考えると欧風だし普通に食べられてるのかもな。
「……」
「あれ、ピリンさんどうしました?」
おやきを一口食べたっきり静かになってしまった…別に変なものを入れたつもりはないんだけど。基本的にポトフの具材やキッチンにあった野菜を頂戴したものを炒めたりして包んだだけなんだが…
「…に」
「に?」
「にっがーい!?なにこれ!!?それに苦いのになんで香りがこんなに爽やかなの!?」
あ、そういや2つぐらいセイヨウヨモギを炒めたのを餡として包んだな…
案外苦いよセイヨウヨモギ(フーチバー)!
ピリンがオチキャラと化しつつある…
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