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M・C・O 植物好きの道草集め  作者: 焦げたきなこ
第2章 1人きりの妖精
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68話 料理開始とお楽しみ

予想よりも長くなった…

 料理をするという言葉に反応したのか、輝きの増した目でこちらをジーっと見つめてくるフェル…でもナッツを摘まむ手と口は止めないのね。

「うしっ、行ってくるぞ」

『んむぅ~』

 片手を振りながら見送ってくれるのはいいけど、声を出すのはやめとけ…ナッツがこぼれてるぞ!


「んじゃ預かっとくよ」

「はい!よろしくお願いします!」

「といっても向かいのキッチンだから問題ないだろうさ!」

 まぁ確かに。さっきも謎の頷きをしてたし何とかなるだろ…


 そう考えながら、一応料理中にいきなり入るのはどうかと思ったのでノックをした後に隣のキッチンに入った。

「お邪魔します」

「おや、モルト殿。おはようございます」

「ええ、おはようございます!少しキッチンを使わせて欲しいんですが大丈夫ですかね?」

「構いませんよ。後は煮込み終われば完成といった所ですので」

 キッチンのコンロのにはでかいホーロー鍋が2つ鎮座していて、その中には肉と骨に玉ねぎや人参等の野菜がいくつか煮込まれた状態の物とその煮込んだ出汁を利用したのだろうもったりした見た目のスープが作られている…今日はポトフとポタージュか?ポトフもそうだけど、その煮汁をそのままスープに使わないとか朝からめっちゃ手間がかかってるなー。


「旨そうですね!」

「ありがとうございます。宜しかったらフェル君も交えて朝食を共にいかがですかな?」

「いいんですか!…フェルも居るんですけど」

 ウィーツさんは追加で頼むってすぐに言ってくれたけど、フェルも増えたし申し訳ない気持ちがまた出てきたんだよな…今もナッツを食べてるだろうし。

「勿論構いませんとも。食卓は明るく囲むものですから」

「そう言っていただけると有りがたいです!」

 俺はまだパンとかの主食だったりを持ってないから、フェルの空腹を満たせるのがバーンベリーしかないんだ…流石に飽きるだろうし可哀そうだ。プロングさんの店にはパンとかは無かったし、この後の採取でパネットさんに聞いてみるか。


「こちらも楽しくさせていただいてますのでお礼の言葉は必要ありませんよ。…それに彼はお腹を空かせているでしょう?あの頃は空腹になるのが早いものですから」

「ええまぁ…なので軽いおやつみたいなものだけでも作っておきたくて」

 場所によっては主食にもなってた日本の郷土料理だけど、それぐらい腹持ちも良いってことだから最適だと思うんだよな。


「成程…調味料に小麦粉等は自由に使って下さい。それとコンロは魔道具になっていまして、手前のつまみを押して回すと点火いたします。」

 あ、そこは現代に近い感じなのね。遠目には石製の枠組みで中段に鉄扉のオーブンが備え付けられてる、写真で見たことが有る感じのキッチンに見えたんだけど…まぁ魔道具の噴霧器とかがある時点で今更か。


「調理器具はこちらに」

「ありがとうございます!」

 入ってきたドア付近に棚があり、そこに様々な調理器具が入っている…横に置かれてるでかい寸動鍋が気になるけど、今はフライパンと片手鍋っと。

「えーっと砂糖と塩はここで小麦粉はこれと…さぁ作るか!」




 今日も素晴らしい朝食だった…本場風のポトフは初めて食べたけど、長時間煮込まれた肉――食事中に聞いてみたら牛の魔獣のすね肉とからしい――はオレガノやローズマリーのハーブや、クローブに胡椒のスパイスによって肉の臭みもなく更にほろほろと崩れていく程に柔らかかった…そしてその肉と骨の骨髄の旨味がしみ込んだ野菜たちの相性よ!

 人参はスプーンが簡単に入るほど柔らかく甘みが最高で、玉ねぎやセロリはもう形が保たれているのが不思議なほどだった。カブも旨かったし野菜嫌いな子供にも最適な気がするぞ…ただしめっちゃ時間かかるけど。


 ぷふぅ

『ん~ぅ』

「残念だがフェルよ。食べ物は食べたら無くなるんだ…」

 だからポタージュが入ってたスープ皿を眺めて声を上げるんじゃない!俺だってまだ欲しいぞ!

「そんなに気に入っていただけましたか」

「ええ!昨日のミネストローネも最高でしたが、今日のポタージュはそれを超えてきましたよ!」

 あのポトフの食材たちが煮込まれていたスープを利用して作られた物だぞ。肉の旨味に骨髄から抽出されたコクと野菜たちの甘みが凝縮され、主役のカボチャの甘みとトロミによって舌に広がる幸せ…更に牛乳のコクと旨味も倍率ドンで最高以外の何物でもない!


「まぁ、ポトフとそのスープを使った物は旦那の得意料理だからね」

「基本のシンプルな料理のポトフではありますが、だからこそ素材の旨味やスープを利用した料理が映えるというものです」

「正直目の前で作っていたアレの自信が無くなってきましたよ…」

 一応上手くできたってのは鑑定をして分かってるけど、それでもこれを食べたフェルが気に入るかどうか。


「おや、何も持ってこなかったとは思っちゃいたけど…失敗したわけじゃないんだろう?」

「ええまぁ。ただ初めて使った物なんで他の人がどうかは分からないんですよね」

「そうですかな?試食をさせていただきましたが、私は良い出来だと思いますよ」

「なら少しは安心できますかね…ん?」


 クイクイと袖を引っ張ってくる小さい手。

『あー?』

「アレって何かって?それはおやつの時のお楽しみだ」

 ただこの後はパネットさん達が合流するからな…なるべく隠して与えよう!バーンベリーも使ってるから詰め寄りが怖い!

さぁ、モルトは何を作ったのか。

日本のポトフとフランス本場のポトフって割と違いがあって面白いです。


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