64話 寝落ちと受け渡し
は行から始まる名前が多い!そのうち誰かの名前が変わるかもしれません…
「それじゃあ明日はお願いね~」
「フェルちゃんにもよろしくね!」
「ええ…出来ればもう少し落ち着いてくださいね」
「頑張る!」
うん、こりゃ無理だな。ソースは俺!
手を振りながら豊沃の恵みを去る俺とフォルクさんとウィーツさんの3人…プロングさんはどうしたのかって?彼なら今キッチンで後片付けをしているよ。既に説教というか罰が始まっているとはな…頑張れプロングさん!それを乗り越えた先にはワイバーンの鱗とその他諸々が待ってるよ!
まぁその素材をパネットさんに渡す可能性もなくは無いけど。あの猛火を背負った笑顔で来られたらどうしようもないからな。
そしてよろしくされたフェルはこちら!
『……』スー…フスー…
「よーく寝てるな」
どうやら摘み取りの話をしている途中で寝てしまっていたらしく、仕方がないので起こさないようにおんぶをしてフォルクさんたちの家に帰ってる。考えてみればピリンさんが近づいてきた時も反応が無かったもんな…
「妖精と言っても生まれたてですからな。基本的なことは人の子供と変わりませんよ」
「それに初めてのことだらけで疲れたんだろうさ」
「確かに。俺でも驚きの連続でしたから」
プロングさん出血誤解事件に始まりボディービル、そして食事処での癖が強い一家。特にピリンさんは強烈だったろう…最後の詰め寄りの時にやけに目のきらめきが強いと思ったらフェルが寝ているのを発見したんだよ。
「フェルが寝ているのを発見して興奮し始めたピリンさんを、パネットさんがチョークスリーパーで抑えたのが山以来一番の驚きでしたね…」
「パネットも腕は鈍ってないもんだね」
「兎肉もチャージラビットを自分で狩っているそうですから。それに、あの父と娘がいますから鈍ることはないでしょう」
「逆にプロングも腕が鈍ることはないだろうね…ピリンは腕が上がってくだろうさ」
なんだろう、家族全員で各々の停止装置扱いになってる気がする。
起こさないように小声で話しながらもフォルク・ウィーツ夫妻の家に着き、おんぶしていたフェルを借部屋のベッドに寝かせた。今思ったけど歯磨きとかさせなくて良かったのかね。まぁプレイヤーの俺が必要ないんだから大丈夫か?もし必要があるんだったら歯ブラシを用意しないと…テイム相手の生育や教育って大変な気がするぞ。
ガチャ パタン
「寝かせて来ました」
「お疲れさん!いやぁ、小声ってのは疲れるね!」
「防音によって声や音が漏れることもないので、フェル君もぐっすり休めるでしょう」
「ですね。…それじゃ早速なんですが」
「ええ、帳簿等を見させていただきましょう」
ウィンドウを操作し、まずは裏帳簿と書かれた台帳をフォルクに手渡す。これで1つ目の荷が下りたぞ…もう1つの方がデカすぎるけど。
「ふむ」
パラパラと表記された内容の確認していくフォルク。ウィーツもその後ろで凝視しており、この裏帳簿の重大さを伺わせている。
「こりゃ酷いね」
「ああ、まさかこの村の開拓当時から着服を行っていたとは」
Oh…そりゃ着服金があんなにあるわけだ。ただこの村が出来たのって30年前だよな…下手すりゃあれでも一部の可能性が出てきたんじゃないか?相当に闇が深いぞこの話。
「これじゃ気が付かないわけだよ」
「あの時にご領主の子息に爵位が継がれたのだから、そのゴタゴタに乗じて着服を増やしたのだろう。この村が出来る以前の記帳も存在する…これは急ぎ伝えなければな」
大事が終わった後にまた大事だ。こりゃ大変だぞ…ただ俺に出来ることは渡すことだけなんだけどね。
「じゃあお金も出しちゃいますね。ちょっと多いので床になっちゃいますけど」
「なら散乱しないように毛皮でも敷いておくかい?」
「ああ、私が持ってこよう。少しお待ちいただけますかな?」
「勿論です!俺も心配だったので…床も傷みそうですし」
「どんだけ溜め込んだんだい…」
フォルクさんが納戸からかなり大きい毛皮を運んできたのでその上に着服金を出す…この毛皮デカ過ぎないか?トラ皮なんか目じゃないサイズだぞ。
「えーっと、これを選択して後は取り出すと」
お、手に持てるサイズじゃないから取り出す場所を指定できるみたいだな。あんな大量の麻袋だったのに表記は<着服金×1>だったから変だとは思ったんだよ…チュートリアルの農具品評会みたいになる所だったわ。
ガチャン! ギギッ…
「うぉっと」
「これは…」
「多すぎだね!」
毛皮の上に置かれた麻袋は優に30袋を超えている。しかもその袋から漏れ出した硬貨は殆どが金貨だ…あの時は燃焼枝の光だったから奥までは見えなかったし、色とかはワカラナカッタナー
あまりの金貨の量に現実逃避をするしかなかった。
今更だけど、金貨以上の硬貨はどうしようかな?
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