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M・C・O 植物好きの道草集め  作者: 焦げたきなこ
第2章 生まれたての妖精
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63話 お願いと懇願

好きな物には全力疾走。

「そのお会計のことなんだけど…お願いを1つ聞いてくれたらタダにするわよ~?」

 なんと!?あの旨い料理がタダになるだと…でも、一体どんなお願いなんだ。


「んな身構えなくてもいいと思うぞ。そいつも真似しちまってるぞ」

「真似?」

 もしかしてフェルが何かしているのかと思って見てみると、椅子の上でファイティングポーズを取っていた…君は筋力低いでしょうに。後椅子の上に立つのはやめなさい!

『む!』

「ほれ、そんなポーズを取らないでちゃんと座れって…俺も身構えないから」

『ん』

「ちょっと警戒されちゃったみたいだけど、別に難しいことじゃないから大丈夫よ?さっき仕舞っていた物が欲しいのよ~」

「仕舞っていた物…あっ、バーンベリーですか?」

 あ~、確かに料理が運ばれてきた時に仕舞ったな…プロングさんが渡したって話だし、多分フェルが摘んできた方だろうな。そう予想して先程仕舞ったベリーをそのまま出してみるモルト…最後に仕舞った物を操作せずに即出せるってのは案外便利かもしれんな。


「そうそれ!」

「うぉ!?」

『!?』

 テーブルの横にいた筈のパネットさんが一気に目の前に迫ってきていた…今の見えなかったぞ。そして詰め寄るのはこの家族の特徴なのだろうか?

「あら、ごめんなさいね。あまりにも良い状態なものだから~」

「それは同意します。俺が摘んだのはここまで大きくなかったので…品質も高めなんですよね」

『♪~』パリパリ

 フェルが少し驚いていたがバーンベリーの質を褒められたのが分かったのか、すぐに持ち直し服に隠していたクルスキを取り出して食べ始めた。やけに減りが早いなと思ったらそんなところに隠してたのか…そんで満腹じゃなかったのか?辛いものは別腹なのか?


「出来たらそれを譲って欲しいんだけど…この大きさでムラのない熟成具合の物は貴重で値段もお高くなるのよ。でも、ベリーの香りと味わいがするのに辛味のあるこの実は幾らでも欲しいのよね~」

「幾らでもってそこまでですか」

「ええ!香辛料は何処まであっても良いし、珍しいものは確保しておきたいのよ~」

「これだから隠しておきたかったんだ…俺の研究素材の量は残してくれよ。品質の高いやつなら薬の効果も向上すんだから」

「善処するわ。差額はお金で支払うしどうかしら~?」

 多分残らなさそうだな。しかし、差額が出そうなぐらい品質の良いバーンベリーって貴重なのか…これ以上とかどうなるんだろう。


「全部じゃなければ俺は構いませんけど、フェルが大丈夫かどうかですね」

『?』

 ちらっと確認すると首を傾げている…いや、お前さんが摘んだ実でしょうに。

「こいつからすりゃ、摘んで欲しいって頼まれたものを渡しただけだとよ。だからお前さんが良いのなら交渉成立だな!」

 ありゃ、受け取った時点で俺の所有物って感じなのね。

「ならお渡ししますよ。ただ、あまり量が多くないんですよね」

「少量でも構わないわよ~。これで宴会の料理のバリエーションも増えるし助かるわ~」

 これは楽しみが増えそうだと思いながらバーンベリーの交渉を終える。帰りにボウルを用意するからそこに入れて欲しいとのことだ…フェルが短時間で摘んだものだから本当に量は多くないんだけど大丈夫かな。

 俺も自分用で確保しておきたかったんだけど、おやつ用のだけ残して渡すしかないか。


「あたしも少し欲しいけど、ここで作った方が良い物は出来るからねぇ」

「それに宴会も頼んだのですから、お任せしましょうか」

 そんな話をフォルクさんとウィーツさんがしているのを聞き、一つ思いついたぞ。


「なら明日の昼にでも摘みに行きませんか?まだまだ実は生っていましたし」

 実が少ないというのならば、摘んでくればいじゃないか!リアルだとちょっと夜更かしになるが何とかなるだろ。

「おや良いのかい?この子が何が出来るのか確認するかと思ってたんだけど」

「まぁ、それはチャコールトレントに試してみればいいですし」

 流石に大人しそうな植物系モンスターとは言え、あの燃えている現状をそのままにしておく訳にもいかないだろうし一石二鳥だろ。


「それなら私も付いていってもいいかしら~?」

「パネットさんがですか?」

「ええ。普通の品質のバーンベリーも確保しておきたいし、トレントの木材って良く燃えるし持つから直火での料理に最適なのよね~」

「それが変異したやつってなれば更にいいだろうよ。俺も行きたいが、予告なしで2日連続店を休むのはな…耐性薬は家で渡すぞ」

「ええ、助かるわ。このお店は基本夜の営業だから問題ないわね~」

 羨ましいもんだねぇと、プロングさんは店を経営している身として流石に行けんなと判断したらしく肩を落としている。やっぱり珍しいものが絡んでこない限りは真面目な人だ。


「後で鱗を含めて防具とかの相談に行きますね」

「そいつがあったな!含めてってことは他にもあるってことか…こりゃ念入りに手入れをしておかねぇとな!」

 テーブル越しに一度こちらに迫ったかと思うと、まだ見ぬ素材に思いを馳せながらはしゃいでいる…うん、絡むとこうなる。俺も人のことは言えんけど。


 でだ

「……ピリンさんもついて来たいんですか?」

「勿論!」

 当たり前じゃないかと大きな声で答えるピリン。

 丁度バーンベリー摘みの話をした所で戻ってきたのが見えたけど、ぴくっとして固まったかと思うとこちらに期待の眼差しを向けてきたんだよ…

「お願い!あなたの邪魔はしないし、勿論フェルちゃんにちょっかいとかは出さないからぁ!?」

「ぬぉ!?」

 スイングドア付近に居たピリンさんが、顔を下げて手を前で合わせたと思ったら目の前まで迫ってきていた…こりゃ間違いなく血筋だな。

濃さが増すプロング一家…


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