7話 拾ったものと隠された花園
レアアイテムって嬉しいですよね。
「こりゃすげぇ…」『綺麗ねー!』 ぷるっ!
スライムが指示した先の近くまでたどり着いた二人は目の前の光景に圧倒されていた。
煌びやかに色とりどりの花が咲いており、ゆらゆらと風に揺れる様子は非常に美しい。
少し遠くに見える池はエメラルドグリーンに見え、花園と合わさった光景はずっと見ていたくなる。
「神秘的だなぁ」『そうねぇー』 ぷるぷる!
景色に見とれてぼんやりとしていたが、腕の中でスライムが左右に激しく揺れだした
「お、おお」
『どうしたのよ?』
「いや、スライムがさっきから腕の中で揺れてんだよ」
『降ろしてほしいんじゃないの?』
確かにそうかもしれんと思い、降ろすぞーと声をかけて地面に降ろすと花園の方に跳ねて向かっていった。
ぐにーんぐにーん
「これさっきもやっていたな」
『ってことはまだ目的地じゃないのね』
「じゃあまた付いて行けばいいってことか」
そう思いつつ近づいていくと、スライムの目の前だけ花が無いことが分かった。
『あら、ここだけ通り道になっていたのね』
「どうやって花を傷つけないように池に近づこうかと思っていたから助かったな」
『あたしは飛べるから関係ないけどねー』
「でも戦えないじゃん」
『その時は今みたいに追いかけてきて助けて頂戴よ?』
「花の犠牲となってくれ」
『なんでよ!?』
冗談冗談と手に現れたハリセンに叩かれないように宥めながら、スライムの後を歩いていく。
「にしても本当に綺麗だなー」
『採取はしないの?』
「多分珍しい花なんだろうが無しだな。この環境は壊したくないし霜のついた花の育て方なんてわからないからな」
『ノーマ草はあんなに刈っていたのに?』
「一応根っこは傷つけていないからまた生えてくるぞ?ちゃんと刈ったのは回収していたし」
『そう言えば一本も落ちていなかったわね…』
変に器用なことするわねぇと感心しているのか呆れているのかわからない顔で見つめられた。実際はマジックバッグに自動回収されていただけなのだが。
「…試しに鑑定してみたが<変わった花園>って名前以外何もわからんな?」
『珍しいものや隠されたものは簡易鑑定じゃ見えないのよ、あくまで普遍的に知られている情報が出てくるだけだから。普通咲いていないような花もあるから特別な場所なんでしょうねー』
「そんな制約もあるのか。まぁ珍しいものってのがわかるから良いか」
珍しいものと言えばと
「確かバッグの中に…あったあった」
『どうしたのよ』
「いや、ノーマ草を回収しながら移動しているときに変なのも一緒に拾ったらしくてな」
そういって取り出されたのは何かの枝と黒くて少し長丸の板っぽいものだった。
「これなんだかわかるか?回収した時に<枝>と<鱗>っていう表示だったんだけど」
『簡易鑑定は?』
「今やってみたがよくわからん」
鑑定結果が<凄そうな枝>と<強そうな鱗>しか表記されていない。名前安直すぎない?
『ってことはここの花みたいに珍しいものね。うーん、枝は普通に考えれば何かの木だと思うけど…凄そうってなんなのかしら。鱗は貴方の手ぐらいの大きさだし大蛇の鱗とか?でもそこまで珍しいものじゃないはずだし、ここまで大きくないわよね…あなたは何かわからない?』
試しにスライムにも聞いてみたが、ふるふると動くだけであった。
「まぁこれも珍しいものってことでいいか」
『軽いわねぇ…良いものなんだろうからもっと喜べばいいのに』
「嬉しいは嬉しいぞ。レアな物ってのは手に入るだけで儲けものだからな。ただ、今はこの花園を目に焼き付ける方が大事だからな!」
『さいですか』
植物には抗えないのだ…
ぴょんぴょん!ぷるぷるぷる!
「着いたのか?祠みたいなのがあるな」
『池もよく見えるわねー』
花の通り道の先は池の目の前まで繋がっており、その手前に小さな祠が見える。
「綺麗にされてるな。誰か掃除しているんだろうな」
ぴょん!
『このスライムがやっているみたい。本当に賢い子ねーゴブリンとは大違いだわ』
「そこまでしてゴブリンを貶したいのか。気持ちは分からないでもないが」
あの畑を荒らす野郎どもは見つけ次第狩らなければ。
『当たり前じゃない!クプースの妖精たちにはゴブリン嫌いが遺伝子レベルで刻み込まれているのよ!』
実際にそうである。古事記にも――クプースにはないな古事記。
ぽんぽん!
関係のない話をしていたからか、それともゴブリンのことは忘れたいのかスライムが軽く小突いてきた。
「おっと、すまんすまん…取り敢えずお祈りしておくか」
そう言って祠の近くで屈むと、バッグからヒール草の葉を数枚取り出した。
『まだ持っていたのね…』
「ヒール草は結構群生しているところがあったからな!きちんと下の葉から採取したぞ!」
『そこまでは聞いてないわよ。でもあなたが集めていたおかげでスライムも元気なったわけだし、供えるのには丁度いいのかもね』
ヒール草を祠の台の部分に置くと、手を合わせこれからの植物たちの出会いを願い、シーズもそれに習ったのか手を合わせていた。
ぷるぷる!
「うん?お前も供えるのか。スズランみたいな花だがここに生えてたか?」
『いろいろな種類があるんだし生えているんじゃないかしら?というかそれって精霊――
シーズの発言をよそに、スライムはスズランのような花を体の上から台に移動させた。
すると
パァ!
<泉の精霊の加護を獲得しました>
祠が少し発光したかと思うとアナウンスが流れ、祠にあったヒール草と花は無く代わりに腕輪が置かれていた。
腕輪自体は銀色で、ツタのような装飾とそのツタに覆われたような形で先程のスズランのような花が綺麗に色付けされている。
『「……」』 ぷるぷる
「えーっと。どうすればいいんだ?」
『と、取り敢えずその腕輪を見たらどう?』
「確かに」
【精霊花の腕輪:花園の守手を助けてくれた者に与えられた腕輪。あなたの人生に幸せが訪れますように】
「精霊花の腕輪だってよ。それにしても守手?」
ぴょん!
「ああスライムのことか」
『やっぱり精霊花だったのね。結構貴重な物なのにあっさり供えちゃうんだもの』
「花園の守手って書いてあるから、問題ないかそこらへんを把握しているんだろ?なースライム」
ぴょん!
「ほらな?」
『問題ないぐらい生えているなら、ここは精霊が良く訪れるぐらいの池ってことになるんだけど…そういえばこの腕輪って珍しい物なのに鑑定が出来ているわね?』
「そういや泉の精霊の加護ってのも貰ったな」
『訪れるどころじゃなくて精霊様のお膝元じゃないの!』
そう叫んだシーズは真剣に祠に対して祈り始めた。
「随分と熱心だな」
『当たり前じゃない!加護をくれる精霊様ってことはかなり格が高いのよ!?不手際があったかと思うと心配で心配で』
「ふ~ん…お、確かに泉だな。至る所で水中の砂が湧き上がってるし」
『…』
「そういや腕輪の名前がわかったんだし、これで枝とかの名前もわかるんじゃ…駄目か。精霊に関するもの限定とかか?それじゃあこの花園の花を調べに行くか!」
祈っている者の前で余りにもフリーダムではあるが、よく分からないのだから仕方が
『……』
「いや分かった、その出したハリセンを仕舞え。俺も一緒に祈るから」
流石に顔を真っ赤にしてハリセンを持たれたらどうしようもない。
『本当ね?これ以上不手際をして泉に飲み込まれるのは嫌よ?』
そうして真剣に祈るものが2人に増えようとした時
⦅大切なお友達の恩人なんだから、そんなことしないわよ~腕輪はただ見えるようにしているだけね~⦆
「そうだったのか…あれ、シーズ今何か言ったか?」
『あなたが話したんじゃないの?』
「それじゃスライム」ふるふる「違うみたいだな」
ぐにーん
「うん?前を見ろって?」
『前?…ふぇ!?』
そこには白色のポンチョを着た、髪の青い少女が浮いていた。
スズランの花言葉には再びの幸せが訪れるというのがありまして、ゲームのプレイヤー設定的にはこれがいいかと思って選択しました。
後は精霊や妖精が持っているイメージがあるもので…
修正:腕輪が一部指輪表記でした。
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