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M・C・O 植物好きの道草集め  作者: 焦げたきなこ
第2章 生まれたての妖精
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59話 連行と提供

不憫要員プロング。

どうしてこうなったんだ…

 エルフの女性はもがくプロングをズルズルと引っ張り、スイングドアにパタンと入れた。

「ちょっとこの人はお預かりしますね。きちんと料理は致しますので少々お待ちください~」

「アッハイ」

 うん、これは断れない。だってあのコック帽の人の背中に猛火が見えるもの…プロングさん、抵抗しない方が身の為だと思うぞ。


「ピリンも手伝って頂戴~」

「はーい…そんな訳で注文は承ったのでお待ちください!」

「ああはい」

「デザートは後で決めておきますので早めに行きなさいな」

「助かります!」

 埃が立たないぐらいの速度の速足でプロングが吸い込まれたドアに向かうピリン。


「…あれ、大丈夫なんですかね」

「それなりに絞られるだろうさ」

「といっても料理を作りますから、本格的な物は家に戻ってからになるでしょうな」

 あの猛火は抑えられたものだったのか。あれ以上とか恐ろしくて想像すらできんぞ!

「フェルは…メニューに夢中だったか」

『?』

 他にも気になる料理があるのか真剣に見ていたらしく、あの圧に巻き込まれずに済んだようだ…下手すりゃ泣かれる可能性もあったし良かった。


『う?』

「ああいやなんでもないぞ。ほら、これとか旨そうだぞ」

『んーん』

 バーニャカウダをさしてみたところ、そこまで興味のある感じではなかったようで他の料理名を指さしている。

「えーっと…ペペローニ・クルスキ?」

 確かペペローニって万願寺唐辛子みたいな辛味の少ない唐辛子の事だよな…クルスキはなんだっけ?


「それは乾燥させた甘唐辛子の素揚げですな」

「パリパリした触感が良くてつまみにもいいしパスタや目玉焼きとかのトッピングにもいい万能選手さ!」

 成程、結構旨そうだ。でも

「これはそんなに辛くないけど、それでもいいのか?」

『ん!』

「多分一緒に食べたいんじゃないのかい?」

「恐らく注文したものがそれなりに辛いというのがわかっているので、せめて見た目の似た物で分かち合いたいのでしょう」

 俺は別にあの劇薬みたいなものじゃなければ辛さは大丈夫なんだけど…あ、プロングさんが辛いのが苦手だからってことか?俺よりも周りのことを考えてるな。


「よし、ピリンさんが戻ってきたら追加で頼んでみるか」

『んー!』




 メニューを眺めながら待つこと5分程…バーニャカウダもあったので追加で注文したいが、先にラタトゥイユを頼んだから次回のお楽しみにした。食べきれないような量を頼むのは良くないからな!満腹があるのかは知らんけど。

「お待たせいたしました!先に食前酒の赤ワインとノンアルコールのベリージュースになります」

 そう言い小さなガラス製のグラスに入った飲み物を1人1人の前に運び、付け合わせとしてミックスナッツも小皿で渡された。


「おや、赤ワインとは珍しい」

「少し前に来た行商人さんが軽くて甘めの赤ワインを持っていたので、お母さんが是非にと購入していたんですよ」

「知らぬ間にそんなもんを買ってやがったのか」

「あ、プロングさん」

 スイングドアの方を見ると、少し疲れたような表情のプロングが戻ってきていた…良かった、頭は赤くなってないな!


「そんなもんって…また怒られるよ?」

「どうせ家に戻ったらこれの続きだ。多少増えようが変わらん」

 本当に説教が続くのか。ちょっと昨日の自分を見てる気分になってくるな。

『う!』

「おう、戻ったぞ。ついでにバーンベリーも渡してきたからな…今日は難しいが、次来た時にゃぁ楽しめるだろうよ」

『む~…』

「待たなくちゃならんのかって言われても、旨い料理を作るには試行錯誤は必要だろ?中途半端なもんは出せねぇさ」

『う…ん!』

 またもや少し不満そうな顔をしたが、中途半端なものは出せないという言葉に押されたのかまた今度という言葉を受け止めたようだ。ってことは近いうちに再来店だな…その時は俺もバーニャカウダを頼もう。


「そうだ。なんならフェルが摘んできたのもお渡ししたいんですが…たぶん俺やプロングさんが摘んだものより品質が良いんですよ」

 試しに自分が摘んだものとフェルが摘んだものを手のひらに3粒ずつ程出してみる。取り出すときにマジックバッグを見たら、品質3と品質5って書かれてたから3が俺で5がフェルの方だな。

「ほう?確かにこちらの方が粒が大きいですな」

「それに全体がムラのない赤色。ここらへんは流石植物の妖精ってところだね!」

「随分と良い質じゃねぇか…これはアイツの溜飲も下がるかもしれんな」

『ん~ん!!』

 自分が採取した実を褒められて嬉しいのか、声を上げながら両手を腰に当てニカッと笑っている。これなら村に馴染むのもそう遠くはないんじゃないか?元々好奇心旺盛で明るい性格っぽいし。


「癒されるわね…お父さんへの溜飲が下がるかは分からないけど、試しに伝えに行ってくるね!」

「その必要はないわよ~」

 プロングが先ほど出てきたスイングドアの方から聞こえてきた声に向くと、幾つかの料理皿が浮遊しておりその中心に彼の妻なのだろうエルフの女性が立っていた。猛火は収まったようだ。


「お待たせいたしました~。あと貴方への溜飲は下がることはないわよ~」

 燻ぶってはいるようだが。

ここまで書いたのにプロングの妻の名前が出ていない!次回表記いたします…


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