56話 誘導と特性
今回から特記事項がない限りは鑑定の表記を省略いたします!
『……』
「少し見えたところ、小人族の子供に似ていますが」
「ただ、1人で居るってのはおかしいね」
「えーっと…なんて説明したらいいのか」
人が視線が2人増えたからなのか、フェルが更に俺の後ろにに引っ付いてしまった…でも横をチラチラ見てるから、若干意識がバーンベリーの茂みに向いてるっぽい…なら
「ほらフェル、そこの実を採取してな」
『う?』
背中越しにそう話すと、首を傾げるフェル。
「話してるところなのにいいのかだってよ」
自分はぐずるぐらい緊張してるのにこっちのことを気にしてくれたのか…
「もう少し掛かりそうだし、気になってるんだろ?」
『むー?』
すると右手で茂みを指さしながら、左手を口に添えた。ちょっと目も輝いてるな。
「食べてもいいかってことかな?少しならいいぞ…後良さそうなのがあったら採取しておいてくれると嬉しいかな」
『ん!』
バヒュン!
採取しながらのつまみ食いが嬉しいのか、返事とともに茂みへ飛んで行った…知らない人から離れられるってのもありそうだなー。この間に簡単なことだけでも話しておかないと。
「もしや妖精ですかな?多少特殊な様ですが」
「ええ、ドライアドらしいです。よくわかりましたね?」
「ほぼ話してないのに、プロングが意思を理解してたからね」
「ああ、成程」
プロングさんが判定機扱いされてる気がするぞ…
「こいつの話によりゃ、山が焼けた原因らしいがな」
「なんと!?」
「ただアイツだけが原因じゃないんですよ…寧ろ被害者でもあるというか」
「成程…詳細はこの後村の中でお聞きしましょうか」
それまでの間に色々整理しておかないとな。取り敢えず裏帳簿と着服金は早いとこ渡して安心したい!
「じゃあ一番重要なことだけでも聞いておこうかね…もう魔力が山に吸われることはないんだね?」
少し不安そうに聞いてくるウィーツ。そりゃ山の木はまだ焼け続けてるわけだし、まだ根本は抜けてないとは思うか…でも。
「はい!これからは魔力草がきちんと育つようになりますよ!」
「おお!」
「よくやったじゃないか!」
「おわっ!」
感極まったのかウィーツがこちらを両手で掴み高い高いをしだした…ムラガヨクミエルナー
「これ、興奮したとはいえ高く上げすぎだ」
そう言うフォルクも、何時もより目が潤んでいるように見える。
「おっとすまんね…思わずやっちまったよ!」
「いえ、結構楽しめはしましたんで」
村に帰った時が少し怖いけどな!また微笑ましい目を向けられるんじゃなかろうか。
「こりゃ宴会だな」
「そうなると食事処に行かねばね」
「…後回しに出来んか?」
何故そこまでして行きたくないんだろうか…そりゃバーンベリーを隠してるってのはあるんだろうけど、あまりに頑なな気がする。
「よし!あのドライアドが採取を終えるまで、山で拾ってきた物を出してもらおうか?良い物があるって俺の勘がビンビンしてんだ!」
話をそらすようにではあるが、自身の勘が強く反応しているということもあり興奮したように近づこうとするプロング。しかし
「ウィーツ」
「はいよ!」
その一声でプロングは首元を摘ままれジタバタともがく事になった。
「なにしやがる!はなせぇ!」
「こいつは本当に鼻はいいのに暴走するねぇ。昔から一切変わってないよ!」
「あははは…でも確かに良い物かはわかりませんが、鱗は拾いましたね」
「……ほう、もしやワイバーンの鱗ですかな?」
キランと瞳が輝くフォルク。そう言えばこの人はドラゴンとかの興味が強すぎる人だったな…言うタイミングミスったかも。
『~~♪』
そんな中、フェルは嬉しそうにバーンベリーを時々口に運びながら採取していた。
ワイバーンの鱗はフェルを連れてくることになったことに関係するのでその時に出すと話すと、少し残念な顔をしながらも納得してくれた。講座開設じゃなくて助かった…多分ウィーツさんが背中に手を添えていたのも関係してそうだけど。
『~~♪』
「お、もういいのか?」
ヒュンと戻ってきたフェルにそう確認すると、口の周りを真っ赤にした顔でコクコクと頷いた…こりゃ随分とわんぱくに食べたなぁ。
「プロングさんタオルってまだありますか?」
あの時回収し忘れたタオルは採取の袋代わりに使われてしまった…
「ああ、まだ何枚か持ってきちゃいるが…その前にこいつの手を何とかしてくれ」
「暴走しないって約束できるのならいいよ!」
「もう落ち着いたっての。だん、村長のあの顔を見たら冷静になったわ」
「心外だな。私はお前とは違って純粋な興味だよ」
「だとしてもあの眼の光り方はねぇだろ」
それに関しては同感です。
解放されたプロングからタオルを受け取りフェルの口の周りを拭い取っていると。
『ん!』
笑顔でタオルで作られた袋いっぱいに採取してきたバーンベリーを渡してきた。ちゃんと端を縛って作ったのか、器用だな。
「おー!短い間だったのに結構とってきたな!しかも大粒で艶もいいぞ」
<バーンベリー・品質5>
鑑定をしたところ、俺が採取をしてた時よりも品質が高い…良さそうなのがあったらとは言ったけどすべてこの品質か?
「おお、流石はドライアドですな」
「こいつらはいい素材を見つけるのが上手いからなあ」
この話の感じだとドライアドって植物の品質を見抜くことができるのか…羨ましいぞ!こっちは鑑定で1つ1つ確認しなくちゃいけないし、そんなことをしたらMPが枯渇するからな!
ピュッ
「あっ」
視線が集まったからかまたもや後ろに隠れてしまった。
『う~』
「警戒心が強いのかね?」
「いえ、多分少し人見知りなんだと思います」
「興味があれば近づきはするからな」
「成程…でしたら美味しい食事などを共にいかがでしょうか?」
ピクン
美味しいという言葉に反応したのか、少しフォルク達の方を見始めた。
「ってことは本当に飯屋に行くのかよ…」
「あんたもそろそろバーンベリーのことは隠しちゃおけないだろう?丁度いいじゃないかい!」
「飯屋…もしかしてウィーツさんが言っていた食事処ですか?」
「そうだよ!あんたが山の問題を解決したとなれば、喜んで旨い料理を作ってくれるだろうさ!」
ほうほう…気になってた所ではあるし、行ってみたいな。
「如何ですか?そこの店主は怖い方ではありませんし…それにこの実を使った絶品料理に興味はございませんか?」
そうフォルクがフェルの引っ付いている高さまで屈んで声をかけると少し左右を見て、一度モルトの顔を確認するとゆっくりと小さく頷いた。
レベルの上がりにくさ以外にも種族特性は色々考えております…
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