6話 ゴブリンと寄り道
戦闘はあっさりと終わらせます。
描写が苦手なわけではないです。ホントダヨ。
「どこだー!作物に危害を加えるド畜生はー!」
駆け出して行った耕司は、若干怨嗟の混じった叫びを上げながら目の高さまである藪を帰りがわかるようにある程度鎌で刈りながら駆けてゆく。
途中木の間に緩く紐が結ばれていたのを触れてしまい、カラカラと音が立ってしまった…どうやら鳴子のようだ。
すると――
ゲ、ゲギャ? グギャギャ?
「聞こえた!そこかぁ!?」
ぐるんと顔を向け足でブレーキをかけたかと思うと、声の方向へ急カーブし少し開けた場所に出た。
「よぉし、見つけたぞ!」
そこには大人の腰ぐらいまでの大きさで黒みを帯びた緑色の肌小人が2体いた。
ギャ!? ギィギャ!
突然周辺で叫び声と仕掛けた鳴子が聞こえたと思ったら、大鎌を持った男が現れたから戸惑っているようだ。
【ゴブリン:家畜や作物に悪影響を及ぼす厄介者。強くはないが小賢しく、人を死に追いやることもある。】
戸惑っている隙に簡易鑑定を済ませ
「ビンゴだ!…それに」
ゴブリンをよく見ると、1体は顔にやけどのようなものがあり――もう1体は持っているこん棒にジェルのような液体が付着している。
手に持っている鎌をドンと床に突き立てると息を吸い込み
「貴様らァ!スライムと被害を受けた農家の痛みを思いしれェ!」
作物に関してはとばっちりではあるが、威圧感があるのかゴブリンは戸惑い続けている。
「生かして帰さん!」
その言葉とともに鎌の柄を槍のように持ちながら突進を仕掛けた!
ギ、ギャウ! グゥ、グガッ!
流石にゴブリンたちも攻撃されるのがわかったのか持っている棍棒を構えだしたが
「遅い!」
ギゥ!…
柄を左手の中で滑らせ、突き出された鎌の峰が顔面にもろに当たり1体は突き飛ばされ
「もういっちょ!」
ブォン!
もう1体は、近づきながら左手を入れ替え長めに持った鎌を横なぎに振り、首を――
『Oh…ここまで来たの正解だったのかしら…あなた、あの時本当に良かったわね』
ぷる…ぷる…
ゴブリンの首の中ほどまでが切断され、霧に変わっていく様をまじまじと見てしまったシーズは追いかけてきたことを少し後悔した。
「…ん?何でここまで来てるんだ?」
『だって傍にいて欲しいって言われただけだし。それにあたしはあんたの担当官なんだ「あ、ちょっと待った」…なによ』
「まだ苦しませただけで1体生き残ってんだ。ほれサクッと」グギッ「よし討伐完了!」
<ゴブリン2体を討伐>
<小魔石×2を獲得しました>
『容赦ないわね』
「そりゃ鑑定しても害意しかないようなモンスターだったからな。話せばわかるようなやつとかにはああはしないさ」
『まぁこのスライムを見ればそこは理解できるわね…あれ?スライムは?』
ぴょんぴょん!
『あんなところに…ゴブリンがいなくなって安心したのかしら』
「これであいつも大丈夫だろ。達者で暮らせよー!」
ふるふる…ぐにーんぐにーん…ぴょんぴょん!
広場の端に移動していたスライムは不思議な動きを続けている。
『何をしているのかしら。あっちの方向に伸び縮みしているみたいだけど』
「付いてきて欲しいのか?」
ぴょん!
「そうか。じゃあついていくか!」
『どんどん樹から離れていくわ…でもまぁ、面白そうだからいっか!』
好奇心が抑え切れない似た者同士はスライムの船頭の元、道なき道を突き進んでゆく。
『ちょっとした疑問なんだけど、あなた随分と戦いに慣れているような気がしたんだけどどうして?』
「そりゃあっちの世界でも、イノシシやクマに河童なんかとは作物を守るための仁義なき戦いをしてきたからな」
イノシシは現実で電気柵での対策をしたことはあるが、他はゲームでの話である。
『えぇ…確かあなたの元居た世界って基本平和だって聞いたけど』
「どんな場所でも多少の小競り合いや危険はあるもんだろ」
『それはそうなんだけど…納得いかないわ』
シーズが耕司からの返答を疑問に思いながらも、変わったのは今に始まったことではないと思いなおした。
時々立ち止まり周囲を確認しているスライムを眺めていると、近くの木に先ほど引っ掛かった鳴子やくくり罠が設置されていたりトラバサミまでもがあった…先ほどのゴブリンの仕業かと考えたが、奴らに鉄製品が作れるのだろうかと悩む。
『うっわぁ、あのゴブリン共は余計なことしかしないわね…ご丁寧に死角や見えづらい場所においてあるし』
「あのゴブリンが仕掛けたっていうのか?確かに鳴子には引っ掛かったがトラバサミまであるぞ?」
『そうよ。あいつら無駄に小賢しいから村はずれにある猟師小屋とかから盗んでくるの。それで引っ掛かった動物や人を見て笑い転げたりするのよ』
「うげっ、厄介者とか書いてあったけどそのレベルか。狩っておいたのは正解だったか」
トラバサミに引っ掛からなくて良かったーと安堵しながらも、少しは警戒しておくかと気を引き締めた。
それからも、スライムが後ろを付いてきているかを確認してくるのに返事をしながら10分程度が経った頃。
少し視界が開けスライムの目的地が近づいてきているような気がした。
「ありゃ、獣道みたいなのが出てきたな」
『そうねぇ、いったい何があるのかしら――って』
妖精故に高くまで飛べるからか耕司の上の周囲を飛び回っていたシーズが何かを発見した。
『絶対あれよ!綺麗に輝いているものー!』
ピュンと飛んで行くシーズ
「あっ、おい!…戦闘能力がないから離れないんじゃなかったのかよ」
ぐにーん ぴょん!
「シーズの向かった方向で合っているんだな?よし、じゃあ抱えていくか!」
そう言うと持っていた鎌をバッグに仕舞い、30センチぐらいまでに回復したスライムを抱き抱えるとそのまま駆け足で追いかけ始めた。
「おーい!そんなに急ぐなよー!」
『そんなこと言われても凄いのよ!綺麗な池と色とりどりの花が周辺に咲いているの!』
「ほぅ…ちょっとスピード上げるぞ?」
スライムの返答を聞かずに落ちないように強めに抱えなおすと、ちょっとではないスピードアップを始めシーズに追いつかんとする。
ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる…
スライムは早く移動できるのが嬉しいのか、小刻みに揺れていた。
ゴブリンの肌は木賊色をイメージしています。
電気柵は絶対にアダプターとかを介して設置しよう!
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