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M・C・O 植物好きの道草集め  作者: 焦げたきなこ
第2章 生まれたての妖精
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閑話 騒動は胎動

第2章閑話からスタートです!

 MCO開始2日目昼頃の開発室は大分落ち着いた雰囲気をしている。


「昨日と比べてゆったりしていられますね~」

「そりゃ連日であんなデスマーチなんぞあってたまるか」

 休憩時間なのか、開発室内はコーヒーや紅茶の香りが漂い社員たちもリラックスしている…室長以外は。


「昨日のおかげで、俺にはまだ対策会議が残ってんだよなぁ」

「あれは結局サーバーの拡張によって解決はできたじゃないですか」

「あんなの応急処置みたいなもんだろうが。これ以上余計なバグを引き起こさないためにも、予算と人員をもぎ取ってくるんだよ」

「頑張ってください!」

「応援してま~す」

「飯行ってきまーす」

「お前ら…他人事だと思いやがって」

 肩を落としながら、室長は会議に向かっていくのだった…と言っても仮想空間内での会議となるので、隣に併設された部屋に移動するだけなのだが。


「あ、室長モニターつけっぱなしで隣行っちゃったよ」

「かなり疲れた顔していたから仕方ないでしょ。それにサーバー管理用のだし、何かあったら勝手につくようになってるんだから別にいいじゃない」

「そりゃそうだけど…おい!」

「どうしたの?」

「この第3エリアにいるプレイヤー!隠しクエスト出しやがったぞ!」

 その言葉とともに、開発室に残っていた社員達は一斉にモニターに集まった。




 2時間後

「戻ったぞー」

 結果的に予算の増量と人員の増加が無事に通ったため、ほくほくした顔で帰ってきた室長。今日は残業もせずいい酒が飲めそうだ。

「あん?お前らどうして俺の机に集まってんだ」

 仮想内で作業をしているもの以外が、全員自分の居場所に集まっていることに疑問を持つ…なんかやばい案件でも残してたか?


「室長!これ見てくださいよ!」

「なんだ一体」

 部下に促され、しぶしぶ囲われる形で自分の机に向かう。

「そういやモニターを切り忘れてたか。ってことはプレイヤーに何か動きがあったか?」

「何かどころじゃないですって!ほら!」

 指をさした数あるモニターの中の一つを確認すると――そこには燃え盛る山から岩が降り注いでいる。


「なんだ噴火か…別に驚くことじゃないだろ」

 MCOという世界内には数多くの山が存在し、その中には活発的な火山がいくつか存在する。恐らくその中の1つが噴火したのだろうと思ったが

「違いますって!これ第3エリアのフェニス山ですよ!」

「フェニスだぁ?……つーことは、あの大鎌を持ったプレイヤーがクエストを開放したのか!」

 第3エリアの隠し村だけあって、今回の転移バグによって数人が送られた場所は本来見つけること自体に労力が必要になる。更にそこでのクエストは条件をクリアせねば解放されないシークレットクエストとなっており、割と設定した人物の性格の悪さが出ている。


「ここでの解放条件は魔力視を持っていることに村長夫婦の好感度が高く依頼されること…後なんだ?」

「確か不名誉称号以外の称号と生産スキル所持も条件ですね」

「そんなもんか。にしてもよく条件をクリアしたもんだ」

「ログを確認したところチュートリアルで泉の精霊の加護を取得し、村長夫婦は彼の所持している腕輪と畑への興味の強さで好感度が初期から高かったようです」

「それに元々生産スキルを持っていますね…さらにその状態で魔力視の存在を聞いたことにより無事下地は完成と。順調すぎませんか?」

 ここまで羅列すると大分第1エリアとの開きが出来そうなものだが


「そこまででもないだろ。他の隠し村のやつも掲示板を騒がしてるし、第1にも隠し村はないがシークレットクエストはあんだからな」

「それはそうですね…まだ解放はされていませんが」

「探すのが下手なんだよ。ウェンスの広場で噴水に突っ込んだやつは良い線いってたんだがな」

「あれ妖精探していたみたいですよ。しかもこの妖精も第3にいる彼の担当者だった子です」

 その彼は、現在赤い液体を飲んで苦しんでいる。


「良い具合に引っ搔き回してくれてるじゃねぇか、お蔭でウェンスじゃあ住民の好感度は悪かないだろ」

「ですね。探索中に屋台で情報を聞くついでに買い物をしたり、路地裏で怪我をした住民を見つけ助けたりなどをしているので他の3国と比べると高いです」

「他のとこも気づいてくれりゃあいいんだがな…まぁ、あのイベントで多少は埋め合わせになるだろ」

 イストンのプレイヤーはもう少し闘技場以外に目を向けろってんだ。今のところ、住民の好感度が高いのは白熊のプレイヤー周辺だけだぞ。

サワスは釣り師騒動で良い具合に回り始めた…ノスはもう少し戦闘職が居れば何とかなるんだがなぁ。第6の開放を待つしかないか。

「ではそこは調整なしということでいいですか?」

「おう。第2に移動し始めたプレイヤーも出始めたし、もう少ししたら発表するか!」




「そんで…こいつはさっきから何してんだ」

「受け取った耐性薬が想像以上の辛さだったようで」

「あー…あの住民は止めるやつがいないと、味やらを無視してドンドン効果が高いのを作り続けるからな。一定の筋力がないと止められないようにしてたから劇物が出来たか」

「こんなんで最後大丈夫ですかね?」

「そのうち治まるし、飲む前に受けた熱ダメージを回復させればギリいけるな。レベルは低いが土龍人の頑強は高いしな」

 上のルートじゃなくて良かったというべきか。山頂にいるやつは俊敏も必要だし、今のレベルじゃクリアは出来ん…それにあっちはパーティー用だからな。


「っと、そろそろ持ち場に戻れお前ら」

「え~まだいいじゃないですか」

「別にここじゃなくても仮想に入りゃ見えるだろうが」

「あ、そういえば」

「ついでに予算も増えたし、追加人員のことも考えて台数も増やすか」

「いいですね!俺釣り竿のプレイヤー気になってたんですよ」

「私はゴブリンをテイムした人!」

「あの長剣2本持ちのサーベルタイガーもいいぞ」

「…お前ら、仕事はちゃんとしろよ?」

「了解でーす!」

「早速行ってきます!」

 ぞろぞろと自分の周りから離れ、何人かは先ほど自分が出てきた隣の仮想開発用の機器室に向かっていく。


「大丈夫かあれ?」

 心配にはなったが何だかんだで作業はきちんとする奴らだと知っている為、自身も追加人員等の調整が必要だと思い作業を開始した。

「これなら定時で問題なく上がれそうだ。不具合もあったが、そのお陰なのか他のプレイヤーも積極的に動き出したし結果的にはいい導入剤になったか?」

 ただこれ以上のことは起こって欲しくはないがなと1人ぼやく室長であった。


「まだ春にしちゃ涼しいし、上がったら飲み屋で熱燗でも飲もうかねぇ」

 その余裕をモニターに映っている彼に分けてあげて欲しい。

大きな範囲はAIが処理してくれますが、ちょっとした要望や細かいバグ取り等は開発室の社員がやっているという設定です。

次回は掲示板回でその次が本編になります。


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