45話 危機と結果
(プロング)の危機。
連続投稿2日目!
さて昼食の付け合わせは何にするべきかと考えながら歩いていると、丁度農作業が一段落したらしいフォルク達が畑から出てくるところだった。
「おや、モルト。プロングの家に行ったかと思ったのにもう戻ってきたのかい」
「見てたんですね」
「そりゃあ、アイツがキョロキョロと周囲を気にしながら歩くもんだから嫌でも目に留まるさ…大方何か見つけたんだろう?」
「大事そうに布に覆われた草籠を抱いていましたからな」
急いで移動した意味がまるでねぇじゃん…
「いやまぁ…あの山の熱に耐えられそうな薬が出来るかもしれないと思って持ってきた植物に、プロングさんがえらく興奮しまして」
「ほう…となると変異植物ですかな?」
「ですね」
「そして恐らくは食することも可能ですかな?」
「出来ますね…辛味が強かったですけど」
「ならああいう動きをするのも納得だね。食事処の奴らに見つかると争奪戦になるだろうさ!」
「彼女たちも珍しい食材となると目の色が変わりますからな」
プロングさんが言っていたことは本当だったのか…
「そんでプロングの奴はその薬づくりに没頭して何も聞こえていないから家を出てきたってところかい」
「その通りですけど…良くわかりましたね?」
「まぁ、彼が希少な物を手に入れて作業に没頭する姿は昔からのことですから。それこそ出会った当時も私が提供した素材に大層興奮していましたな」
えぇ…出会った当時ってことは少なくとも旅団の頃からだから30年以上前ってことだよな…情熱は尽きないのか。そこは見習いたいところだな!
既に興奮ってところだけならば変わらない気はする。
「ああそうだ!軽い眠気がやってきたので一度お借りしている部屋のベッドで休んでくる気なんですけど、もしその間にプロングさんが薬を持ってやってきたら受け取っておいてくれませんか?」
あの具合だと持ってくるかはわからないけど、もしもの対策は必要だよな。
「構いませんよ」
「なんなら1時間もすりゃ普通の薬なら幾つか出来てるだろうから取りに行っておくさ!何も聞こえちゃいなかったらデコピンでもしてやろうかね!」
再びの赤頭かもしれない…プロングさん気づいておくれ!
さぁログインでステータスアップだと思ったが、流石に短時間でもう一度寝て付与するのはダメだったらしい…まぁそれが出来たら効果が切れる6時間ごとにベッドでログアウトしてまたログインしなおせば、ずっとステータスが1割高い状態が維持できるもんな。
長時間戦う戦闘職はきつくても俺みたいな生産職なら可能な方法だから、対策されてるのは当たり前か。
「そこらへんは後で掲示板でも見て調べておこうかな。1日ごとだとは思うんだけど、それがゲーム時間なのかリアルなのかは分らんし自分で試すのは面倒だ!」
俺みたいな生産職というのには疑問が有るが、昼食を食べ再びログインをしたモルト…今のゲーム内時刻は15時ほど。
「一応姉ちゃんに、ログアウト前にパスタを作るから食べるなら起きるか返信をしてくれと送りはしたけど、まさか茹で始める直前で滑り込みしてくるとはな…」
あんなダイナミックエントリーをしてから前転をするぐらい慌てて入ってくるなら、普通に食べるって返信してくりゃいいのに…昼飯はアブラナとベーコンのペペロンチーノと、悩んでいた付け合わせはトマトの簡単マリネになった。
オリーブオイルにお酢と砂糖を混ぜて、好みで胡椒にバジルやローズマリーなんかのハーブを加えてトマトに和えるだけなんで簡単だぞ!後お酢じゃなくてレモン汁でも大丈夫だし、生レモンならさわやかな香りが追加されてボーノだ!
「さて、こっちだと4時間ぐらいは経ってるからプロングさんの錬金は終わってるかもなー」
そんなわけでリビング側のドアをコンコンコンっと。
"こっちにいるよー!"
「お、もしかして薬を持ってきてくれた後に待っていてくれたのかな?」
それか時間的におやつの時間だし戻って来てるのかも…ウィーツさん体格が良いからかなり食べるもんなぁ。
リビングに入ると、テーブルにあの時に見た茶菓子の山が出来ておりその後ろにジョッキを持ったウィーツ
が座っていた。フォルクは他の部屋に居るか出かけているようだ。
「別にノックをして入らなくてもいいんだよ?今はここがあんたの家なんだからね!」
「一応居られるかどうかの確認でしていたんですけど…」
「そんなこと気にしなくていいさ…あの部屋を貸した時点で身内みたいなもんだからね!旦那だって同じことを言うだろうさ!」
「ええと、なら今度からは普通に入りますね」
うちの両親は油断すると甘い世界を作り出しているから、リビングに行く時に油断するとダメージが入るけど…ウィーツさんとフォルクさんは仲はいいけどイチャイチャはしなさそうだし大丈夫そうかな。
「それがいいさ!…それで、用はプロングの作った薬かい?」
「ええ、それなりに時間が経っているので出来ているかなと」
流石に1時間で出来てるって話だし大丈夫だとは思うんだけど、持ってきてくれているかが心配だ…
「ちゃんと出来ていたよ!これらがそうだね」
そう言ってマジックバッグから取り出したのか幾つかの透き通った赤色の液体の入った瓶を並べるウィーツ。その中にはモルトが作ったであろう、少し内容物が沈殿したライフポーションも混じっていた。
「あ、そのライフポーションも貰えるんですね」
「素材は提供したけど、作ったのはモルトだから持ってけだとさ!それとこっちのライフポーションもオマケだとさ!」
10本ほど初級ライフポーションが追加された。
「なんか悪い気が…」
「元々買いに行ってたのに、早く錬金したいあいつがそのまま家に連行したんだろう?謝罪の品だとでも思っておきな!」
ああ、そう言えば買ってなかったや。
「なら有難く受け取っておきます!」
「そうしておきな!代わりと言っちゃなんだけど、集中しすぎて錬金のことしか考えてなかったあいつは前よりも真っ赤にしておいたよ!」
あぁ、やっぱり今回もダメだったよ…
アイツは話を聞かないからな。
トマトの簡単マリネは、お酢に砂糖が入っているタイプの物だともっと楽にできます…言ってしまえばマリネって漬けるって意味なので、トマトの甘酢浅漬けですね。
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