5話 癒しと追っ手
ようやっと戦闘
ぷるぷるぷるぷる
ツンッ
ぷるんっ!
「おお、すごい触り心地がいいなお前」
『良いのかしら…こんなにまったりで』
結局スライム討伐をあっさりと止め、耕司たちはスライムと戯れていた。
『普通はここで武器の使い心地を試すんだけど』
「俺にはこんなに良い子を倒すことは出来ん!」
『はぁ、余計なこと言わなければよかったわ。それにしても、攻撃されそうになっていたのに逃げもせず寄ってくるなんて変わったスライムね』
「そこは俺も不思議に思った。まぁ敵意はなさそうだし…うん?」
よく見ると、スライムは耕司のウエストバッグに体を伸ばしているようだ。
「なんだ?バッグの中にでも入りたいのか?」
『そういうわけじゃないでしょ…中身が気になるんじゃない?』
「となるとさっき採取した草花とかか。ほれ、簡易鑑定で見た後に状態を確認して選び抜いた自慢の一品だぞ!」
そうして鞄からどこに入っていたんだと言いたくなるほどに出てくる様々な草花たち。
『いや多すぎでしょ!一体いくつあるのよ!』
「ノーマ草以外のものをと思って探していたら、それなり群生しているのがちらほらあったからちょこちょこ採取していたらこうなった。ちょっとやりすぎだとは思うが反省はしない!」
『少しは反省しなさい!』スパァン!
「ふぬぅ!」
『…ふぅ。というかそれマジックバッグなのね。ただのウエストバッグだと思っていたわ。』
「(ハリセンで叩いたことはスルーか)やけに入るなと思ったらそういうことか。じゃあこの農具たちも…入ったな。物理法則どうなってんだ?」
『マジックバッグだもの、気にしたら負けよー』
若干コントめいたやり取りをしていると、スライムが紫蘇のような葉をした草の前で止まって跳ねている。
「お、それがいいのか」
『それってヒール草じゃない。考えてみたら、いつものスライムなら人の膝下ぐらいの大きさなのにちょっと小さいわね。もしかしたら怪我でもしたのかも』
【ヒール草:微量だがHPを回復する草。魔法薬の原料として知られる。】
「それはいかん!ほら早く食べるんだ!」
素早くヒール草をスライムに差し出すと、こちらを少しうかがうような動きを見せながらも体の中に取り込み始めた。
「よしよし、足りないならまだあるからな。…農具しか出てこない!」
バッグを漁ってみるが、先ほどしまった物ばかり出てくる。
『確かマジックバッグならウィンドウから出すのを選べたはずよ。何もしないと最後にしまった物から出てくるのよね。』
「便利だが若干不親切な仕様だなぁ。おぉ出た出た」
愚痴りつつもバッグを見つめて念じてみるとウィンドウと自動回収の項目が出てきた。
「回収も選べるのか。取り敢えずオンにしておいて⋯ほれ、次のヒール草だぞー」
そういって差し出すと、今度は気にする様子もなく取り込んでいった。
ぴょんぴょん!
「だいぶ大きさが戻ったんじゃないか?」
『そうね。嬉しそうに跳ねているし元気そうだわ』
「さっきまでの動きは弱っていたからなのかもな」
『だとしても大分懐っこいスライムな気がするわ…他のところでも同じなのかしら』
ガサッ!
遠くからではあるが、確実に草を踏みしめたような音がした。
「何の音だ?スライムじゃ…なさそうだな」
警戒してか浩司は声を小さくして、音の発生源から後ずさりをしながら移動を始めた。
ギャギャ!ギャッ!
しわがれたような、若干高い声も聞こえてくる。
『げっ、ゴブリンじゃない…また碌でもないことでもしていたのかしら』
「ゴブリン?麻の種でもまけばいいのか?」
『なにそれ?…ってそんなことよりも、多分あいつらがそこのスライムを傷つけたのよ!声が聞こえてから震えなくなったし間違いないわよ!』
「そうなのか?」ぴょん…「みたいだな」
『そんなのんきに確認している場合じゃないわよ!近くまで来ているんだから!』
「んなこと言われても、姿が見えないとどうしようも『因みにあいつらの趣味は作物をいたずらで荒らすことよ』いよぉし!やってやらぁ!」
いきなり大きな声を上げバッグから大鎌を取り出したかと思うと、音の鳴っていた方向に駆け出してゆく!
『ちょ、待ちなさいよ!(発破が強くかかりすぎたわ!)』
「シーズはスライムの傍にいてくれ!また狙ってきているかもしれないから―!」
――草ジャンキーが暴走した後のシーズとスライム
『……行っちゃった。私、戦えないんだけどー』
ぴょん!ぴょん!
『どうしたのよそんなに跳ねて。まさか追う気?』
ぴょん!
『うーーん…あたしは戦えないし、あなたは回復したばかりだしであいつの近くにいた方が多分安全…よね』
ぴょん!
『よし!それじゃあ追いかけちゃいましょう!傍にいてくれって言われただけで、ここにいてくれって言われたわけじゃないものねー♪』
しません!次のお話に持ち越しです…(´・ω・`)
因みに未だに耕司のプレイヤー名は出ておりません。
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