43話 プロング宅と味の原因
簡単錬金教室始まるよー。
プロングさんに続いて鍛冶場のドアから中に入ると、まず目についたのは煙突につながっている大きな炉だ。
「でっけぇー」
「なんだ、炉を見るのは初めてか?」
「はい!暖炉は見たことがありますが、鍛冶に使う炉は初めてです!」
「そうか…今は火床を付けちゃいないから大丈夫だが、暖炉の比じゃないぐらい暑くなるぜ?」
「まぁ、ですよね。余計に表から入るようにしますよ」
「それを聞いて安心したぞ…そんじゃあ魔法薬用の部屋はこっちだ、設備が気になりはするんだろうが…俺に早く、バーンベリーを使わせてくれ!」
アッハイ。
丸太に鍛冶道具がついてたり形状の違うでかいハンマーが幾つもあったりとめっちゃ気になるけど、またあの至近距離詰め寄りは嫌だから後にしよう…今融通しておけば雑貨屋の畑で何か貰えるかもしれんし、気になるものをお預け食らうのはキツいからな!
付いていった部屋に行くと2重扉になっていて、奥のドアは引き戸みたいだ。2つ目のドアに入る前に体の全身をはたいて一度軽めの風を当てられた。
「部屋に虫やらが入り込んだりゴミが混じりこむと薬がダメになっちまうからな。普通ならここまで気にする必要はねぇが、ここには貴重なもんがあるってのが理由だ…ただ、外で作るにしても体をはたいてゴミを落とすぐらいはやっておくのがいいな!気合も入るってもんだ」
ルーティーンってことか。俺も寝る前と朝のハーブポットたちの確認は必ずやっているし、確かに重要だな!
落ちたごみや虫は端に置かれているゴミ箱のような魔道具が回収してくれてるらしく少し吸引音がしている。その後に引き戸を開けて案内された部屋はかなり整頓されていて、研究室のような様相をしていた…あれだな、科学の石で出てきたラボに似てる。
「かなり綺麗ですねー」
「そらテキトーに置いていたら崩れて道具が台無しになっちまうし、刺激されると爆発するもんもあるからな!」
「気を付けます!」
光ってる液体があるなーと近づいていったモルトはすぐさまその場から離れた。自分の体で正の走光性と負の走光性を再現すな。
「まぁ落としたりしない限りは問題ねぇさ。仮に爆発しても俺は耐えられるし、お前さんは異転人だからどこかで復活できるだろ?」
「ああまぁ…多分フォルクさんたちの家のベッドですね」
「なんであの家で…ああ、あいつらの倅の部屋か」
納得がいったように頷きながらも、薬研などがあるテーブルに向かっていく。
「さて、初級ライフポーションの作り方を教えるぞ」
「あ、先に教えてくれるんですね」
「簡単にできっからな。それにバーンベリーの方は久しぶりの錬金で、試行錯誤を繰り返すんで時間がかかりそうだからな…なんだその目は」
「いや、その試行錯誤でテンションが上がって変な物を作りそうだなって」
「失礼な奴だな!俺がそんなことをするわけ…するわけが…」
腕を組んだかと思うと、右手を顎髭にあて段々と明後日の方向に顔を背けていくプロング。
「……よし!早速ライフポーションを作るからよく見ておけよ!」
素早くヒール草を取り出すとすり鉢に入れ始めた…逃げやがったな。
「はぁ…俺も集中しすぎて可笑しな行動をとることはあるから、責められんか」
そういうと机に近づき、プロングの手元を観察し始めた。
「まずすり鉢やらでヒール草を磨り潰す。この時に使うヒール草は新鮮で質がいい方が効果が高いぞ」
「だから雑貨屋の裏で育てているんですね」
「いや、こいつはこの家の横で育てているやつだな」
「なんですと!?」
こっちにも畑があったのか!
「つってもまさに家庭菜園って規模で、魔法薬に使うのはヒール草しか育てていないがな。キュアベリーは土の管理が面倒でなぁ」
「もしかして酸性土壌じゃないとだめとかですか?」
「お、よく知ってんじゃねぇか。ついでに水の量やら栄養やらもあるから、スキル持ちのやつらに任せた方が楽だし良いものが出来んだよ…俺は植物に役に立つスキルは持っていないんでな」
「なるほどー」
そうなると、ヒール草はスキルを持ってなくてもある程度の質までは育つんだな。
「んでペースト状になるまで潰せたら、今度はこいつの成分を抽出した後にこの混合水を加える。この時の水は軟らかい方を選んだ方がいいぞ、上手く成分の抽出が出来なくなる…人によっちゃあギフトのアクアで出せるが、持っていないのならそこにあるような村の井戸水を使いな」
「井戸水…あ、これですね」
【ファティリ村の井戸水・品質3:村民が日常的に使用している井戸水。飲用可:軟水であるため非常に飲みやすく、出汁取りに最適】
お、軟水だ。確かお茶とかの抽出に良くて、硬水は肉の灰汁取りとかにいいんだっけ?コーヒーを飲むときにエブアンでやってみたらめっちゃ苦渋くなって、調べたらそんなことが書かれてたんだよな…あ、コーヒーは最後まで飲んだぞ。
「俺はアクアを持っていないので井戸水を使わせてもらいます…あと、その混合水の色が凄いんですけど」
何というか、黄土色に近い緑で澱んだ色をしている。
「そらこの混合水は煮込みまくって溶けたノーマ草が元だ!ヒール草だけのポーションは効果が強すぎて副作用が出るんでな、中和用にこいつを用意して調合するってわけよ…だから味が良くないんだがな!」
ああ…昔の青汁になる原因はこの煮込み汁なのか…
今は仕方がないが、自分がきちんとポーションを作る時は味が良くなるように研究しようと心に誓ったモルトであった…農業の片手間だけど。
メカプロングとかは出てきません。
野菜の適正土壌って中性から弱酸性ってのが多くて、何もしないと土壌って酸性やアルカリ性にどんどん傾いて栄養素が減っていくので調整が割と大変だったりします。あと日本は酸性土壌多めですが、海外は逆にアルカリ土壌が豊富な場所がそれなりに…全土の3割ぐらいですね。
次回投稿はGWの本番的な休日…ちょっとしたことを計画しています。
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