42話 移動とギフトの力
地味に明記していたギフトが登場します。
良く誰にも見せずに俺のもとに持ってきたと背中をバンバン叩かれたかと思うと
「このバーンベリーは砂漠や火山の近くでしか見つからない、魔法薬の材料でな!効果は高いんだがキュアベリーの変異を待つしかねぇし、その確率も低いと来たもんだからめちゃくちゃ貴重なんだ」
「貴重…茂みが出来るぐらい生えてたんですけど」
「なんだと!?」
「うぉ!顔を下から詰めてこないでくださいって!」
「そんなことよりも茂みがあっただと!?あの貴重なバーンベリーだぞ!?」
「本当にあったんですって!証拠として実を出すんで離れてください!」
「お、おう…すまん、流石に近かったな」
喝が入ったようなモルトの声で少し我に返ったのか、視界一杯の状態から離れ売り物として陳列している小さめの草かごを持ってきたかと思うと中に布を敷いた。
「ここに取り出してくれ」
「わかりました…では」
アイテムバッグからバーンベリーを手に取り出しては籠に入れていく。これ10個ずつしか出せないの面倒だな…更に入れて…もういっちょ…
「多いわ!」
「え、まだありますけど」
不思議なことに採取した量よりも多くあるのだ…これって採取量アップの効果かな?
「そんなに採取してきたのかよ…確かに茂みがあったってのは本当らしいな」
「ええ!取り敢えずで持ってきたのでまだまだ実ってましたよ!」
目が痛くなるレベルで緑と赤のコントラストがすごかったよなぁ。
「おいおい最高じゃねぇか!早速魔法薬作りに移るぞ!」
「了解です!…あ、魔法薬を作るのなら俺にもちょっと教えてくれませんか?」
折角錬金を持ってるんだし、学べる機会があるなら積極的に行かないとな!
「あん?錬金は持ってんのか?」
「取得はしてあります!まだ何も出来ていないので1ですけど…」
「まぁ基礎のレシピを知らねぇと何もできねぇからな。ついでに器用はいくつだ」
器用?ステータスの数値のことなら確か
「えーっと、今は25ありますね」
「ほう、初級ライフポーションぐらいなら問題なく作れそうだな…よし!良いものを持ってきた礼として教えてやろうじゃねぇか!」
「ありがとうございます!」
これで自分が採取してみた物で錬金をしてみるっていう第一歩は踏み出せそうだな!目指せ自分が育てた作物で魔法薬に栄養剤!
では早速錬金をしようと思ったが、何故かプロングさんはちょっと待てと言ったかと思うと従業員室に入り鍵と休業と書かれた看板を持ってきた。え、なんで?
「裏で作業をするんじゃないんですか?」
「数があるとはいえ貴重なもんだからな。客がいると集中できねぇから家でやるぞ!」
えぇ…それでいいのか。
「随分と訝しんだ顔をしてやがるが、考えてもみろよ。俺の家自体はこの村にあるし、簡単な作業や手入れ以外はあっちでやってんだよ」
「はぁ」
「そんで店がやってなくても村の奴らは用事があれば家に来て頼んでくるからな!実際この雑貨屋は鍛冶の依頼とポーションを買いに来る以外は行商人か稀に来る冒険者用にやっているようなもんだ」
なるほど…考えてみればナイフやライフポーションとかは結構あったりするのに、村の人が使うような農具や籠みたいなのって1種類ずつしか置かれていなかったから疑問はあったんだよな。
「あとはまぁ、もし飯屋の野郎が畑にやってくるついでに包丁の手入れだとかでここにやってきたら、バーンベリーがあることがバレて俺の取り分が減っちまうからな!」
ほぼそれが理由なんじゃないか?モルトは再び訝しんだ顔をした。
雑貨屋の鍵を閉め、ドアに看板を立て掛けて移動を開始した。そしてプロングさんの家に行く途中にまたウィーツさん達が作業をしているのが見える…畝はもう綺麗になくなってるなー。
「プロングさんプロングさん」
「なんだ」
「フォルクさんが肥料っぽいものを畑全体に撒いたと思ったら、畑の土がぼこぼこ混ざってる気がするんですけど…他の所でも似たような感じで蠢いてますし」
またもや不思議な光景を見てしまったぞ。
「あん?ありゃギフトのミクスだな」
「え!あんな範囲を混ぜられるんですか!?」
「いや、土魔法を持っているってのと範囲拡大の応用だな。でかい畑をやるんならあれぐらいできた方が便利だぜ?」
範囲拡大…そういやレインって魔法もそれなりに範囲が広かったけど、攻撃的な魔法じゃなかったしあれもギフトのアクアってやつの応用なのかな?組み合わせ次第で色んな可能性がありそうだな…
俺がやったウォーターボールに土を混ぜたりするのも、土を拾わずに出来たら目つぶしが気楽に出来そうだ。
「でも、あんな風に混ぜられるのなら畝を崩す必要はなかったんじゃ」
「固まった土が残ってると上手く均一に混ざらねぇからだよ。大雑把な所はあるが、畑に関しちゃあの夫婦はこの村一番だぜ?」
「あ、成程…どっちみちレベルを上げて魔法を覚えていかないとか」
鍛えていかないとままならないかぁ…農業なんかまだ上がってすらいないし。由々しき事態だ!
「そういうこったな。ほれ、家に着くぞ」
プロングさんの家に着いたが、煙突がでかいな…本当にここで鍛冶をしているってのがわかる。
「今回は鍛冶場の方から入るが、用がある時は表の方から入ってくれよな」
「了解です」
「頼んだぜ…ウィーツだったりはいきなりこっちのドアを開けて入ってくるから手元が狂いそうになるんだ…」
結構切実だった…
上げて落とす…食事処の人はいつか出てきます。
突然高い音が鳴ったりすると手元がずれたりしますよね…学生時代それでアイロンが手に倒れてきました。
ブックマークや評価を頂けると嬉しいです!




