38話 村の畑と向かう先
モルト+畑=?
若干書いている時の深夜テンションが混ざったかもしれません…長くもなりました。
ウィーツとフォルクの先導で夫婦が管理している畑に向かってゆくと、そこはモルトが転移した直後に気になって眺めていた山近くの畝の整備された畑だった。
「お二人の畑ってここだったんですね」
「そうさ!週に何度かは変化がないか確認に来てるんだよ…丁度その時に、あんたがジーっと畑を見てるもんだからから声を掛けたわけだね!」
「その時はご迷惑を」
あれ完璧に不審者だったよな…どこからともなく湧いてきた人が自分の畑を眺めて唸ってんだもの。
「迷惑なわけあるかい!あたしゃあの時の自分を褒めてやりたいところだよ!」
「今ではこの村を救われるかもしれない大事な方ですからね」
「救うって…大げさなんじゃ」
「それぐらい期待しているってことさ。まぁ、気負わなくてもいいさ!税の猶予はまだ2年も猶予があるんだからね!」
う~ん、どちらにせよ責任は重大だな…ただ畑の現状を話していた時よりも2人は明るくなったし、村民の人たちも目に光が戻ってきている気がするから、俺も頑張らないとな。
「さぁ!実証と行こうじゃないか!」
そういってウィーツはガバッと畑の柵を開けてズンズンと中に進んでいった。
「やっぱ豪快な人だな―」
「あの性格のお陰で、村が陰鬱な空気にならずに済んでいましたので助かってはいるのですよ」
まぁあそこまで明るくてパワフルな人がいたら多少は気が紛れるのかね?
「ただ畑に関しては大丈夫なのですが、有り余った力でちょっとした問題を起こすのは今も昔も変わってはいませんがね?」
ああ――だめだ、プロングさんの頭を思い出して腹筋がつりそう。
では俺も畑にレッツゴーとなった所で、フォルクさんが木片のようなものを取り出して渡してきたので、それを受け取ってから中に入った。
「これなんですか?」
「一応の防犯用具ですね。これを持っていない者が侵入すると、所持をしている者の木片が赤く光るのですよ…プロングが付けておくだけならすぐに出来るからとやってくれたのです」
かなり便利な道具じゃん。現実でも電気柵の電圧通知とか監視カメラの動体検知やらがあるけど、似たようなものかな…あれ?
「そういえば雑貨屋の畑はこれがないんですか?」
考えてみれば、俺はこの木片を持ってない状態であの畑に居たよな?ウィーツさん達も一緒にいたからオフにでもしてくれてたのかな。
「恐らく雑貨屋の裏手から入られたのでは?行商に来る馴染みの商人が野菜を欲している時にはあちらから入れるようにしているので、検知の範囲外にしているとのことです」
「そういうことでしたか」
めっちゃ旨かったもんなあの野菜たち…行商人が買い付けに来るのも納得がいくわ。
「ほら、こっちだよー!」
ウィーツが手を振っている場所は畑の真ん中。確かに障害物が無いし、魔力の流れを見るには最適化かもな…畝を踏まないように移動しないと。
ウィーツの下に向かいながらも、畑に雑然と生えている植物たちを流し目で確認していく――あそこに生えているのはノゲシっぽいし野菊の1種みたいなのもある…密集して生えてる小さな葉と白い花のやつはメドハギだっけか?
こう見ると秋の野草ばっかりだな…外で見たのもそうだったし…もしかして季節ごとに生える植物が違うのか?それならば畑を手に入れたとしても、フィールドワークは欠かさず行わなくちゃいけないな。
「モルト殿?」
「通り過ぎてるよ!」
「あ」
畑に生える植物を眺めながら歩いているうちにウィーツを通り過ぎてしまったようだ…でかい案山子があるなぁって思っちまったよ!流し目で確認するつもりが、途中からガッツリ見ちまってたか。
「なんだい、何か気になるものでも生えてたのかい?」
「それでしたら、採取をしてしまっても構いませんよ」
「本当ですか!」
「ええ、今生えている物は今日にでも均す予定でしたから。魔力草が生えてくる可能性があるというのに、このままではいけませんからね」
「他の畑でもその予定だから集めるのなら今のうちだよ!ただまぁ、その前に魔力の確認だね!」
「了解です!」
いよーし!空の魔石のことを言わなかったことによって畑に来れたし、更には野草の採取も出来るなんてすばらしい一石二鳥だ!…ちょっと罪悪感はなくはないケド。
実際は魔石を加工しないと魔力を注入することが出来ないので、魔力が山に向かっているかの確認には使えないのだが、それについて知る事になるのはもう少し後になってからの話。
「何も持たずに来ちゃいましたけど、確認ってどうやるんですか?魔力視はいつでも使えますけど」
移動中にも使用していたところ1回の使用で5分ほど継続するのがわかっており、再使用には1分待たなければいけないのも判明した。ここら辺はレベルが上がれば使用時間が長くなったり間隔も短くなるかな?
「簡単さ!今から畑の土に向かって水魔法を使うから、その残滓を追うんだよ!」
「行使された後の魔力は私たちの意思からは外れますからな、この周囲で取られる魔石と同じようにどこかへ吸収されて行くのではと思い試したことがあるのですよ」
「そん時はマナポーションと同じで撃った場所の魔力が無くなっていくのしか分からなかったけどね!」
「でも今回は俺がいるから山に向かっているのかや、その場所もわかると」
「そういうこったね!」
若干脳筋方法に思えるけど、魔力を追えれば何でもいいか!
早く採取をしたいからか、考えが短絡的になっている気がする。
「それでは行きますよ?」
「わかりました!先に魔力視を使っておきます!」
「畑を注視しておくんだよ?魔道具で土を検査した時はすぐに魔力がなくなっていたからね」
「得意分野ですので大丈夫です!」
どんな得意分野だ。
「…レイン!」
魔法が行使されモルト達がいる畑の上空に青い色をした魔力が集まったかと思うと、雲が集まりだし目の前でポツポツと雨が落ちだしサァーっと音が鳴るレベルで振り始めた。
「おぉー」
「流石旦那だよ。あたしたちの目の前までで範囲を区切るとはね…腕は鈍っちゃいないねぇ」
「当たり前でしょう。30年の月日で鈍るほど、修羅場を潜ってはいませんよ」
ちょっと気になる話をしているけど、今は魔力の確認だ確認…畑と俺の採取のためにもな!
清純と不純の混じった思いで雨の降っている場所を眺めていると、降っている範囲に薄い青色の少し光った魔力が液体のように広がりだしているのが見える――ライトの時は黄色だったし雲が出来るときは青色だったけど、こっちは薄い青色なんだな…なんかペンキをこぼしたみたいに見えてくるな。
「どうだい、何か見えるかい?」
「はい、雨以外の液体っぽいのが畑に広がっているのが見えますね。ただ、色が薄い青色ですけど」
「それは魔力の属性の違いでしょうな。行使後の魔力は属性を失って無属性となりますので…雨粒で見えづらくなると困りますから、この辺で止めておきましょう」
魔法の行使が止められると、雨が止み雲がだんだんと晴れてゆく。
「あっ!」
すると、畑に纏まっていた魔力がだんだんと1方向に引き込まれていくのが見える。その方向は――やはりあの焼森の山。
「何かわかりましたか!?」
「魔力が山の方向に引っ張られていくのが見えました!」
「やっぱりかい…これで大手を振って調べることができるよ!」
「ええ…事後承諾にはなってしまいますが、解決の糸口が見えてきたのです。領主様には後で手紙を送りましょう」
「昔みたいに許可どりなんかをしていたら時間がかかって仕方がないからね!それにあの厭味ったらしい代官に知られると面倒そうだ!」
ん?どういうことだ?
「許可って何のことですか?」
「おや、話していなかったかね?」
「そんなことは…ありましたね。いやはやこの周辺では当たり前のことでしたので伝えるのをすっかり忘れておりました。」
「はぁ」
「あの山にはとある伝説がありましてね、その伝説があったことによって山が焼け驚きはしても村を離れようとはしなかったのですよ」
「その名も不死鳥伝説!この村は不審人物が侵入しないように管理する所でもあるんだよ!」
「へぇ~……なんですと!――おわっ!?」
確認が終わったし、言い伝えは何となくで聞いて採取に移りたいなーと思っていたモルト。しかし突然の不死鳥伝説の発言に驚き詳しい話を聞こうと体と2人の方に向きなおそうとして――畑のぬかるんだ土に足を取られ畑に顔を突っ込んだ。
暴走は今回なし!
代わりに畑に沼っていただきました。
ようやくの10万字超え…まだまだ駆け抜けます!
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