36話 翌日と2度目の朝食
現実の2日目朝からスタートです。
「俺のバジ郎が!?」
その叫び声とともにベッドから跳ね起きる耕司。
「夢か…デコピンを構えたウィーツさんがバジ郎を笑いながら持ち去って、空で姉ちゃんが高笑いしてるとか魔王か何かかよ」
何という意味の分からない夢を見ているのか。
「昨日の衝撃が全部混ざった悪夢だったなぁ」
ベッドでのログアウト後、風呂に入ったりして部屋に戻りハーブポットに多肉植物を眺めるというルーティーンをこなして就寝したんだけど、もしかして今日は疲れたからと観察日記に何も書かなかった罰か!?
ハーブポットを確認すると、問題なくバジルはそこに存在していた…良かったぁ。一応他のポットや多肉植物たちも確認しておく…うん、みんな今日も元気だ!
「今は6時か。取り敢えずトイレ行って水分でも取ったら軽くストレッチでもするか」
祖父の家に泊まる際は鶏の鳴き声が聞こえるとともに畑の手伝いに駆り出していたため、アラーム等がなくても基本早起きの耕司。高校進学前の春休みであってもこの習慣が抜けることはないようだ。
「その後は母さんたちも起きてくるだろうし、顔を洗ったりした後に朝食を食べてリビングの観葉植物達の様子を確認してから…ブルーベリーも何とかするか」
まだ復活すると思ってお礼肥に寒肥もやって早8ヶ月…悲しいことにこの時期に生える新芽はなく、枯れていることが確定した…いつまでもあのままにしておくことはできないもんな。
枝や根は鉈や鋸で切るとして、土は振るって細い根を分けてからゴミに出せばいいか。家の周辺の自治体は土の回収もしてくれて助かるぜ…今回もお世話になります。
「取り敢えず今日は土と木に分けておくぐらいにしておくか…そんでその後は勿論」
勿論?
「昨日の天ぷらリベンジだな!今日はヨモギを採取してこよう!」
ゲームをやれゲームを。
両親と姉が揃い朝食を始めると、まず姉は夕方まで部屋に籠るといい両親は桜を見にデートに行くことを宣言した…ほんとに行くのね。耕司は今日の夕食こそは天ぷらにしたいと言うと、油の処理と片づけを手伝うことを条件に許可された。
そしていい加減に野草は料理に使うと紙に書いておくか部屋に持っていきなさいとも言われてしまった…キッチンが使えなくなるのは困るから素直に頷いておこう。
「観葉植物よし!ブルーベリーの処理もよし!ヨモギの採取もよし!三方ヨシ!」
そのヨシ!は良くない気がするが、取り敢えずゲームを始めるまでの事が終わり早速ログイン準備を始めていく――現在時刻は10時、採取にも行っていたことを考えると遅いのか早いのかわからない時刻だ。
「ついでに俺は小破でヨシ!」
何もよくない。
「まさかヨモギ採取に行ったら近所の犬たちのジェットストリームアタックを食らう羽目になるとは…」
中型犬と大型犬は無事抑えられたけど、まさかその死角からトイプーが突撃してきていたのは予想外だったぜ…正直グラスウルフ以上に強敵だ。
見事股間にクリーンヒットして後ろに倒れちまったし、顔は3匹にベロベロ舐められたからまた顔を洗っちまったよ…飼い主の人たちは謝って顔を洗う水道がある公園まで着いてきてくれたけど、その間道行く人々に生暖かい目で見られた気がするぞ…
「まだ息子が痛い気がするが、ゲームで寝ている間になんとかなるだろ」
そう呟きながらヘッドギアを装着しログインした。
<ベッドの上でログアウトしたため、ステータスが6時間の間1割上昇します>
「そんな効果もあったのか…あの時何となくで戻ってきてベッドで寝てみたけど、正解だったな。心地よく寝たって感じなのかもしれんな」
そういや村でのログインの時は空間から出てきたようだったし、ベッドとかで登録していないときはあの空間で寝てんのかな…硬そうだ。
そんで村の外というかセーフティエリア外だとその機能がなくてそのまま体が残るって感じか?だからモンスターに襲われると。
ベッドの仕様について考えながら現地時刻の方を確認すると土の日の朝6時。この時間ならフォルクさんたちも起きているかもしれないと思い、リビング側のドアに向かうことにした。
「どうせ魔力視を取得して効果を確認するなら、あの人たちの前でしたいからな」
コンコン!
「そういや防音なんだっけ…ノックしても意味ない」
"どうしたい?こっちに居るよ~!"
「…聞こえてきたな。どういうことだ?」
がちゃりとドアを開けてリビングに入ると、丁度朝食の時間だったようで幾つかの料理が並んでいた。
「あ、食事の時間でしたか」
「まぁこの時間だからねぇ…それでさっきも言ったけど、どうかしたのかい?」
「それが、レベルが十分上がって魔力視を取得できるようになったので報告をと」
「おやそうかい!朝飯の前に嬉しい話じゃないか!」
「ただ、龍人の方は大分レベル上げに苦労をされる筈ですが…」
「あぁー…まぁ、色々ありまして」
主にゴブリンを採掘したり、頭をサヨナラさせたりとか色々。
「ふむ?良かったら朝食を一緒に食べながらお話をして戴けませんか?」
「いや、大分食事中にする話ではないので…」
「それなら朝飯の後に話してくれりゃいいよ!」
「その間お待ちいただくのも心苦しいですから、是非ともご一緒に。朝食も余分に作ってしまったものですから」
「息子がいたころの気持ちになっちまったからね!それに、早朝に雑貨屋の裏で取ってきた新鮮な野菜をふんだんに使った朝飯だよ?興味あるだろう?」
「喜んでご相伴に預かります!」
段々モルトの扱いに慣れてきたウィーツだった。
実際農作業などをされる方は朝5~6時前後に起きる方が多いとされています。
気温の低いときに収穫して出荷をされることによって、鮮度が維持された状態で野菜がスーパー等に並ぶわけですね。
ブックマークや評価を頂けると嬉しいです!




