4話 武器とモンスター
プロローグが終わらん!
非難をするように叫ぶシーズを状況がつかめないままに宥め落ち着いたところで話を聞いてみると、先ほどのノーマ草の説明が出てきたのは簡易鑑定というもので、この世界の人々で有れば基本で備わっているギフトと呼ばれるものらしい。
他にも火をつけるパイロットやコップ一杯ほどの水を出すアクアに若干の風が送られるブリーズ等があるが、検査中に習得出来るのは1つのみでレベル5と10の時に1つずつ選ぶことができるそうだ。
『と言っても私たち担当者が気に入った人じゃないと教えないから2つだけになる人も出てきそうね。あなたはさっきあたしが教えようとしたから勝手に覚えたみたい』
若干抜け道みたいな取得方法である。
『スキルと違ってギフト単体だと火を強くとか水の量を増やすのは出来ないのよね。簡易鑑定ならステータスとかは出てこないけど多少情報がわかるから便利だしいいと思ったのに…ハァ』
「随分疲れてるな」
『誰のせいよ誰の!』
不思議と似たようなやり取りをした気がする。
『まぁいいか、元々教えるつもりだったから手間が省けたと考えることにするわ』
「教えるつもりだったならいいじゃないか、実際便利だし」
『教えるのと突然使われるのじゃ全然違うわよ!ほら、さっさと進む!』
スパァン!っと持っていなかったはずのハリセンで頭を叩かれる。
「ふぐっ…そんなもん何処にあったんだ」
『私たち妖精専用の魔法のハリセンよ。ダメージはないけど、これで何時でもツッコミとかで叩けるって寸法よ!』
「なんだその悪質な魔法は」
そうぼやきながらも、また叩かれたくはないのか真面目に移動を始めた…所々でノーマ草以外の物を探してはいたが。
『もう気にしないことにしたわ…そろそろモンスターが出てくるから警戒しておきなさいよー』
「モンスター?武器とか何もないぞ?草花と種は手に入ったからバッグに入れたが」
『そこは大丈夫。検査の間だけ念じれば好きな武器が出るようになっているの…さっきの話聞いていなかったわね?』
「すまんすまん、この世界で初めての植物だったからつい。えーっと、武器の出せる数とかは決まっているのか?」
『別に決まってないけど…いっぱいあっても邪魔なだけよ?消せはするけど』
「じゃあ使えそうなやつだけにしてみるか…おぉ、ちゃんと出てきた」
『大鎌と手斧に両手斧と鉈…後はウォーサイスだっけ?若干王道からは逸れたラインナップね…他にもいっぱいあるけどなにこれ?』
「開墾鍬に十字鍬と三角鍬、フォークに鋤だな。火力を考えたから斧が両刃になっちまったな」
『聞く限り農具な気がするんだけど』
「なんだったらそっちのも全部農具だぞ。ウォーサイスは何で出てきたんだ?鎌と同じ扱いなんだろうか」
ぷる
『これじゃない感が凄いわ…この中から選ぶ気?』
「といっても剣とかじゃ扱い方がわからないし」
『一応扱いとかを確かめるために色々な武器が出せるようになっているんだけど』
ぷるぷる
「それでも俺は農具がいいや、爺ちゃん家でずっと使っていたから」
『本人がいいならいいけど…』
ぷるぷるぷる
「…さっきからそこでぷるぷる震えてるのがいるんだが、アレがモンスター?」
『そう、スライムね。敵対は基本してこないし逃げる速度も遅いから初めて戦うモンスターとしては最適よ。何なら簡易鑑定してみたら?』
「それもそうか。よし、簡易鑑定!」
『別に言わなくても出来るわよ』
「先に言ってくれ!」
【スライム:非常におとなしいモンスター。子供がお小遣い稼ぎで狩ることもある】
「小遣い稼ぎってそこまで弱いのか」
『たまに酸を飛ばしてくるのも居るけど、石投げとかで遠くから倒せば当たらないもの。それよりもほら!逃げちゃう前に倒しちゃいなさい!』
「逃げるというか近づいてきている気がするんだが…取り敢えず鍬でいいか」
そういって十字鍬を拾い上げ、扱いやすい状態に構えると
「お前に罪はないんだが、ごめんな」
そう謝罪し、逃げようとしないスライムに対して鍬を振り上げ
(若干罪悪感があるけど、チュートリアルを進めるためだし仕方が――
『廃棄物処理や害虫駆除に役立つけど、これは検査だものねー』
ビタァッ!
「害虫…駆除?」
スライムに振り下ろそうとしたところで止まり、耕司の顔がグルンとシーズの方に向いた。
『え、ええ。テイムしてきちんと食べてはいけないものといいものを教えたりすればそれぐらいは出来るようになるらしいわ』
「中止!討伐中止!俺はこんな益モンスを狩りたくない!」
『ええー…』
スライムはそんな中変わらずぷるぷるしていた。
農具は結構危ない。
あ、それと耕司の祖父母は健在です。
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