31話 夜戦とピンチ
夜戦開始!そしてモルトに危機が迫る!?
グラスウルフが攻めてきたと唸り声がした方向に転身し、大鎌にも手をかけたが
「あれ?居ないな…なら今のうちに消臭剤を使っておくか」
消臭剤は瓶に入っている体に振りかける粉のようで、取り敢えず塩を振るような感じで数回体に掛けた。
<消臭剤の残り使用回数は3回です>
「複数使用できるタイプのアイテムか。錬金を持っているんだから、こういうのも作れるようになるのかな?」
ガウ! バウ!
ギャア!
そんなことを思っていると、近くから叫び声が聞こえてきた。
「もしかして近くにゴブリンがいて、それをグラスウルフが狙ったのか?奇襲を受けなくて助かったぜ」
現実の自然で動物が争うみたいに、モンスターが争うのも実装されてるんだな。
どちらにせよ戦って経験値を稼がなくてはと、叫び声のした方向に向かってゆく…何故かシロツメクサを防具のポケットに入れたまま。
「グラスウルフってんだから狼なんだろうし、コイツが効くかもしれないな」
また非道戦法を披露する気か。
ウオォーン!
背が高めの草むらに身を潜めながら音や草の揺らぎを出さないように近づいていると、グギャグギャ聞こえていた声が無くなり丁度グラスウルフがゴブリンを倒し終わって遠吠えをしていた。でもゴブリンはぴくぴくとしているから、まだ生きてるっぽい?
「後で狩っておくか…」
ゴブリン、やはり許されません。
ウォウ バウ!
他にも感じていたはずの臭いが無くなったことに疑問を感じているのか、周囲を確認するように2匹のグラスウルフが顔を動かしている。
「草むらを確認されだしたら厄介だし、そろそろ仕掛けるか」
すると臭いを確認するように、1匹のグラスウルフがモルトの潜んでいる草むらにだんだんと近寄ってきた…今だ!
ウォウ! ブンッ!
ギャン!ッザザ
「ちいっ!顔に傷がついただけか!」
バレるギリギリまで引き付けてまで大鎌を振るったが、違う場所を見ていた方に気が付かれてしまい軽傷で済んでしまった…発言がどこまでいっても敵側。
「本当は一匹減らして、戦闘の動きを確認してから複数戦をやりたかったが仕方ない。シロツメクサを使うのは諦めてぶっつけ本番だ!」
食わせてどんな反応をするか見たかったが仕方がない!
…まだ使う気だったことに驚きを隠せない。
グルルルル!
暗殺まがいのことをしようとした結果、警戒されているのか2匹のグラスウルフは遠巻きに唸っている…囲われる前に叩くか。
「アースショット!」
牽制ついでに当たればいいなと思って飛ばしてみたけど綺麗に避けられて、一匹がこちらに駆け出してきた!
ガウ!
「おっと!チャージラビットよりは遅い感じだしこれなら楽しょ」
バウ!
回避して後ろの着地地点を確認しようとした瞬間に、もう一匹が既に迫ってきていた!
ガキンッ
「あっぶねぇ!」
大鎌の柄を噛ませて何とか嚙みつきを防いだ。チャージラビットの時もだけど、武器が頑丈でよかった――
ボァ!
「いてっ!後ろ脚で引っ搔いてきやがったな!」
防がれたことに腹を立てたのか、柄を噛んだまま太ももを攻撃してきた。チャージラビットの方が突進の速度はあるけど、厄介さはこいつらの方が数段上だな!
ガァ!
両手が塞がり身動きが取れないと判断したのか、先ほど後ろに回ったもう一匹が駆け出してくる。
「ただ残念!筋力的には問題ないし、武器はまだあるんだな!」
大鎌をグラスウルフごと投げると腰に装備していたナイフに手を付けながら低くしゃがみ、顔を噛みつこうと飛び上がってきたのを回避しながら
ドスッ!
キャイン!
「ナイスヒットォ!」
自分の上にグラスウルフがやってきたタイミングでナイフを振りぬいて、柔らかい腹にダメージを与えることに成功した。上手くいったけど、ミスったらガブっといかれていただろうな…1だけだけど俊敏上がってて良かった!
グラスウルフの飛び掛かりの力も利用したことにより、かなり深くまで刺すことが出来たので倒したものかと思ったら…地面にへばりついてはいるが此方を睨み、もう1匹もそちらに合流しながらも唸り声をあげ威嚇してきていた。
グルルル…
「手負いの獣ほど怖いものはないってのがあるけど…確かに迫力が段違いだな」
他のMMOや農業ゲーで狼系のモンスターと戦ったことはあるけど、ここまで怒っている表情を表現しているのは無かったぞ。
「大鎌は投げちまったし、ナイフじゃ射程が短い…こうなったら」
そう言って警戒される中取り出したのは、あの時20秒だけ登場した十字鍬。
「さぁ第2ラウンドと行こうか!」
十字鍬も活躍できることが嬉しいのか、キラリと月光で輝いていた。
<ゴブリンを4体討伐>
<空の小魔石×4、ゴブリンの腰布を獲得しました>
<レベルが上昇し、スキルポイントを1獲得しました>
<水魔法が3まで上昇し、ウォーターバレットを習得しました>
「よし!やっとレベルが上がった!」
4体で纏まって草原を漁っていたゴブリンを大鎌と魔法で倒したところでやっとレベルが上昇した…え?十字鍬での戦いはどうしたのかって?グラスウルフがヒットアンドアウェイしてくるのを迎撃するだけで倒せてしまったからカットだ!
「いやぁ…あの後他のグラスウルフが唸っている所に穴があったんで覗いたら、中からチャージラビットが顔面目掛けてぶつかってきたのはびっくりしたな!」
綺麗に逃げられちまったし!ヒールポーションが減っちまったぜ!
名前:モルト 種族:土龍人 Lv3
ジョブ:ノービス Lv3
HP:30+7 MP:42+12
筋力:15+3 頑強:22+7 俊敏:9+2
器用:13+4 知力:17+6 精神:14+4
幸運:21+1
上昇スキル:【水魔法2+1】
残りSP:1+1
「おお、俊敏が10を超えたぞ!」
そんで今回は他も伸びがいいな…結構ランダム性がある気がする。あと幸運が1しか上がり続けないのは運が良くないのか?それとも精霊花の腕輪に幸運のことが書かれていたし、似たような感じで泉の精霊の加護にそういう効果があるとかかもしれん。
「月が明るいからとはいえ、夜だからモンスターを探すのにも苦労したな…最終的にグラスウルフが4匹にゴブリン5体だもんなぁ。後で本当にプロングさんの所でランタンを買っておかないと」
ただ、ランタンの明かりで敵が寄ってこないかが心配だけど。
「よし、流石に疲れてきたしここまでにしておくか!今何時だ?」
【現在時刻:猿の月30日(水)2時30分・現実時刻:3月30日16時50分】
「地味に日付が細かくなってる気がするな…やっぱマスクデータで解放されたのか?そんで今日はプロングさんの店やってないんだっけ――あれ?」
【現実時刻:16時50分】
えーっと、16時50分ってことはもう少しで17時だよな…そんなにやってたのか。
実際は戦闘と採取を半々ぐらいでやっていたので余計に時間がかかっただけです。
「んじゃ、そろそろ夕飯になるしログアウトしてタンポポの処理をしておかないと」
あと何か忘れている気がするんだけど、そんなに重要なことじゃないだろ!
「ログアウトを選択してっと」
<セーフティエリア外でのログアウトになります!モンスター等に倒された場合、ドロップアイテムや採取したアイテムがロストしますが宜しいですか?>
「宜しくない!この植物たちはロストなんかさせんぞ!」
ってなると村に戻るしかないか…
「まぁ近いからいいけど――あ」
未だに表示されているウィンドウにはメール部分に赤丸が付いている。更に調べてみると姉からの件数が天元突破しており、最新の件名には<あんたの部屋に行くから>…時刻は現実で10分ほど前。
「やっべえぇぇぇ!!?夕方に説明するってのすっかり忘れてた!」
その雄たけびのような声は、狼の遠吠えを超える勢いで草原に響いていった。
不遇な十字鍬…そしてモルトもとい耕司は無事タンポポを食えるのか?
本当はグラスウルフをテイムをしようかと考えていましたが、別段変わった生き物ではないなぁと却下になりました。その内獣好きな人がテイムするでしょう、きっと。
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