29話 草原のスライムと種族間特性
種族のメリットとデメリット。
「さぁさ次の草を採取したいんだったらモンスターを倒しな!せめてレベルが上がるぐらいには頑張りな!」
ブォンと戦斧を振るって肩に担ぎ、また離れてゆくウィーツ。今振った時の風圧でニシヨモギが綺麗に反ったし、今度また採取を続けたらアレが飛んでくるかもしれない…大人しくモンスターを狩ろう!
「取り敢えずここを少し離れないとな。ウィーツさんが居たからモンスターが避けているだろう――お」
移動を始めようと思ったところで、近くの草むらがガサガサしている。
「襲われることがないように隠れていたのか?でも、普通に気付かれていそうなもんだけど」
そう考えていると、ぷるんと草むらからスライムが出てきた。
「あースライムか。動きが遅そうだし隠れるしかないよな」
にしてもこのスライム、ちょっと色が薄い気がする…気のせいかな?
【スライム:非常におとなしいモンスター。子供がお小遣い稼ぎで狩ることもある。愛玩やちょっとした作業の手伝いとして飼われることもあるが、臆病な性格なためテイムには根気が必要】
「あの時簡易鑑定したのとあまり変わってないな。飼われているってのが追加されたけど」
ただの思い違いか?それともちょっとした色の変異はあるのかもしれん。そしてスライムは害虫駆除を手伝ってくれるから狩りたくはないな…テイムもしてみたいけど、畑とかはないし戦闘に参加させるのは不安だからまた今度にしよう。
ふるふるしているスライムを横目に手を振って去ってゆくモルト。しかしその前方に
ギーギ
「あ、ゴブリンだ。こいつも隠れていたのか…後ろを向いて周囲を見ているし、弓持ちもいなさそうだな」
それじゃあ早速アースバレットで先制を…あ、ちょっと待てよ。地面の土を少し手で掬って
「ちょっと実験に付き合ってもらうぞ!ウォーターボール!」
グギ!
後ろから大声を出されて慌てたようにこちらに振り返るゴブリン。すると
バシャン!
ゴブリンに土砂が混じり濁った水の玉が顔面にぶち当たった。
グギャァァ!
たまらずドスンと頭から倒れ、衝撃と目に入った土砂の痛みで左右に転げるゴブリン。
「おーおー苦しんでる。魔法に他の物を混ぜてもちゃんと飛ぶんだな」
そんで自分にその時のダメージはないし、割といい方法を思いついたんじゃないか?
今も痛みに苦しんでグギャグギャ言っているゴブリンを前にして思うことがあまりに非道。
「検体ご苦労!では作物荒らしに慈悲はないんで逝っとけ!」
そう言われ、ゴブリンはロックバレットで射貫かれて煙になりましたとさ。
<ゴブリンを討伐>
<ゴブリンのこん棒と空の小魔石を獲得しました>
「さっきの時もそうだったけど、何で魔石が空って表示なんだ?もしかして、ここら辺もあの山に魔力を吸われてるってことなのか…そんで奴のこん棒なんぞ要らん!」
鑑定結果に書かれていたとはいえ、彼が何をしたっていうんだ。
その後も順調にゴブリンとチャージラビットを狩っていくモルト。弓持ちのゴブリンに矢を食らったり、遭遇したチャージラビットの突進に追いつけずにダメージを負う場面はあったが、傷にポーションを振りかけることで問題なく対処できた。まだこれを飲む勇気はない!
<ゴブリンを討伐>
<空の小魔石を獲得しました>
<レベルが上昇し、スキルポイントを1獲得しました>
「お、やっとレベルが上がったな」
そして貰えるポイントは1だけかぁ、ランダムかもしれないけど魔力視覚えるまでが長そうだ。
「レベルが上がるまで倒したモンスターは、ログを見るとチャージラビットが2匹のゴブリンが9体か」
合計で11…レベル2までの経験値としては倒した数が多い気がするな?ちょっとウィーツさん呼んで確認してみるか。
手を振ってウィーツを呼んでみると、藪の方から近づいてくるのが見えた。頭だけ飛び出しているのが少し面白いな。
来るまでに他にも何か上がっている物がないかとステータスを調べていると、スキルの水と土魔法が1ずつ上がっているのがわかった。ただ何かが増えてるわけじゃないから、もっと戦うなりしていかないとか…早く農業をしてスキル上げしたいな。
ついでに他の上昇はこんな感じだ
名前:モルト 種族:土龍人 Lv2
ジョブ:ノービス Lv2
HP:25+5 MP:30+12
筋力:12+3 頑強:15+7 俊敏:8+1
器用:10+3 知力:12+5 精神:10+4
幸運:20+1
残りSP:1
頑強と知力の上昇が高くて俊敏が低いってのが龍人の特徴みたいなもんなのかな?それで土ってつくから頑強が一番上昇がいいのかも。でも他の種族のステータスが分からないから、ログアウトした時にでも姉ちゃんに聞いてみるか。
その姉から未だに質問メールが爆撃されているのだが、現実で彼が質問できる時間はあるのだろうか。
「どうかしたのかい?」
細かく確認していたら、ウィーツが既に傍まで来ていた。
「あ、ちょっと調べ物をしてました。すみませんこっちが呼んだのに」
「かまいやしないよ。何かが気になるのなら即調べた方が良いだろうし、あたしを呼んだってことはレベルが上がったんだろう?」
「そのことなんですけど」
チャージラビットとゴブリンを合計で11体程倒してやっとレベルが1上がったことを話した。
「そりゃアレだね、種族によってレベルの上がり方には差があるのさ」
「差ですか」
「龍人は特に上がりにくいみたいだねぇ。あたしたちは1からのレベル上げはしたことが無いというか、子供のうちに勝手に上がるから出来ないけど、人族と獣人族で少し差があるってのは聞いたことがあるよ」
「マジですか」
「あたしと旦那も、他の種族と比べると上がりにくいのは痛感したねぇ」
ってなるとユニークなんて付いていた龍人なんてどんだけ差があるんだ。
「代わりと言っちゃなんだけど、人族以外だと固有の種族スキルを持っているのさ。龍人なんだから強力なスキルでも有るんじゃないかい?」
固有スキルでレベル上げの釣り合いを取っている感じなのか?そうだとしても
「俺の種族スキル、龍眼って魔眼系のやつなんですよね…」
「ああ、だから魔力視の時にあんなにやる気に満ちてたのかい。魔眼なら便利ではあるけど、戦闘系のスキルじゃないね」
「ですよねー」
「ま、無くても何とかはなっているんだから頑張るしかないさ!」
シーズの言っていた龍化が、今非常に欲しくなった。
ゴブリンはお気に入りです。
主にやられ役でって感じですが…ついでにゴブリンは経験値が少なめになっています。
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