25話 月日と2つ目の農具
やっと外に出ます…もう25話やぞ。
道具も揃ったところでそろそろ出発をしようかとなったが、その前にプロングから知らせておきたいことがあるようだ。
「この雑貨屋は営業時間は9時から18時で、水の日と第1の風の日は定休日になっとるし鍛冶で忙しい時はやってねぇから注意してくれよな。修理だったり急ぎの用がある時は山側の村はずれにある俺の家に来てくれや」
「ここが家じゃないんですね」
「お前さんが買ったナイフだったりを作るのに鍛冶をやるからな。端の方で作業をした方が迷惑にならんだろ?ここでやったらガキンガキンうるさくなっちまう」
「ああ成程。それで、そもそも水や風の日ってなんですか?」
「おや?それも知らないのかい?」
もしかして常識?これは本当に公式を見直さないとダメだな。もしかしたらマスクデータ扱いで、現地人に聞いてみないと分からないとかかもしれないけど。
詳しく話してくれたことによると、この世界は1年が12か月であるということは変わらないみたいだが、曜日や月の呼び方が違くて、曜日は無火水風土闇光。んで日数は最大が33日で最小が24日になっていて、月毎の呼称は干支が採用されているらしい…猫はネズミを追いかけてください。耳なしの青いのは爆弾を仕舞いなさい…変な声も上げない!
「はぁ~そんな感じなんですね、ついでに今は何の月ですか?」
「今は猿の月、猿月の29日で火の日さね。」
「てことは、明日は休みなんですね」
「そういうこった。畑に居る時もあるが、基本は家の鍛冶場に居るぞ」
じゃあ最初は畑から確認すればいいか。そんで猿の月ってことは9月か…リアルが3月の下旬だからそこも3倍になってるのね。
「俺からの知らせってのは以上だ。そんじゃあ行ってこい!」
「はい!行ってきます!」
「最初のうちは守ってやるから安心して突っ込んでいきな!」
「まともに戦ったことのない初心者を突っ込ませるんじゃねぇ!」
平手でバシンとウィーツの足をはたいたプロングだったが、やはり自分の手を痛めるだけだったようだ…気を付けろよーと振っている手が赤くなっている。
「痛そうだなー…」
「あたしゃ頑丈さと筋力が売りだからね!」
フォルクとプロングの言葉通りの犠牲により、食らわずとも身に染みたモルトであった。
山の麓へと続くのとは逆の門、恐らく村の正門に辿り着いた。
「さぁここからだよ」
「ちょっと緊張しますね」
「大丈夫さ!さっきも言ったように守ってやるさ」
ウィーツが力こぶを作りながらそう答える。説得力の強すぎる言葉だなぁ。
そうして門を抜け、ノーマ草に覆われた道を進む2人。若干のデジャブを感じるが、あの時と違って他の草は生えてはいなさそうだ。あ、ついでにノーマ草を調べて追加情報を見てみるか。
【ノーマ草:クプース全土の暖かい地域にはどこにでも生えている草。非常に生命力が高く根っこさえあれば生えてくる。特に温かい地域では、2mを優に超える長さに成長するため注意が必要。食用可:秋の終わり頃に出来る穂を収穫し、乾煎りをしてお茶として利用される】
おお、結構増えてる…沖縄あたりではものすごく長くなるんだっけ?それに秋に穂を収穫してお茶に利用されるんだから、本当にススキっぽい植物で良さそうだな。そんで今思ったけど、暖かい地域ってことは寒い地域には他の植物が一帯に生えているってことだよな…これはフィールドワークが捗りそうだ!
「ほれ!ここから先しばらくモンスターは出てくることは殆どないけど、用心はしておきな。武器はあるかい?」
歩きながらではあるが手を顎に添えて何かを見るような仕草をしていたので、ウィーツがそう声をかけてきた。
「すんません!少し気になっていたのがあったので…ちょっと待ってくださいね。えーっと大鎌を装備して――ん?」
装備画面を表示させようとして、未だにメール画面が黄色の枠で覆われていた。何か追加されているのかと思ったけどそうではなさそうだし、確認し忘れたのがあったのか?
ついでに姉上からのメールは遂にカンストしたらしく99になっている…返信するべきなんだろうけど、ここまでくると怖くていやだな。
「あ、まだ武器を選んでなかったな」
補填が残っていたからまだ表示が消えていなかったのか。
うーん、また農具を選びたいけど長柄武器みたいなのしかないんだよな。じゃあ鉈にするか?剣鉈とかにすれば長さも十分…いや、それならもうナイフを買ったから必要ないのか。
こうなったら――
「おや、ピッケルかい?確かに武器にはなるけど、ドワーフがたまに使ってるのを見かけるぐらいなもんだね」
「ああいや、ピッケルみたいに採掘もできなくはなさそうですけど、これは十字鍬ですね」
あの時スライムを狩ろうとして使った十字鍬の復活である。また長柄武器だけど、こっちはツルの部分で刺突が出来るから攻撃の種類は切り替えられるだろ。それにあの時はスライムには攻撃しなかったから、ようやくこいつの初陣をきることが出来そうだ。
「それが鍬だってのかい…ああ、反対側についているのは確かに鍬の形をしているね」
「一応大鎌も持ってるんですが…どっちのほうがいいですかね?」
「それなら鎌のほうが戦いやすいだろうさ。鍬ってことは、それは振り下ろす感じなんだろう?この村周辺のやつらには横薙ぎとかで振るう方が対応はしやすいからね」
「じゃあ大鎌にしておきます!」
持っていた時間は20秒ほど。すまない十字鍬、また今度だ。
十字鍬にも出番はあります…いつになるかは分かりませんが。
次回掲示板回です。
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