20話 俵担ぎと腕輪
この主人公全然フィールドに出ない…ま、まぁマイペースほのぼのギャグ路線の予定なので。
宿屋というかホームステイのようになったが、寝泊まりする場所の確保は出来た。宿代を払いたいと伝えたのだが
「そんなもん気にしなくていいよ!」
「ええ、この村の為に尽力していただけるのですから、こちらがお支払いしたいところですとも」
そういわれてしまった…これはさらに本腰を入れなきゃいかんな!
そう思いながら、早速二人に声をかけてモンスターを狩りに行くことにした。
「じゃあそろそろレベル上げに行ってきますね!」
「ちょっと待ちな!」
と、ウィーツに呼び止められてしまった。
「あんたライフポーションとかはあるのかい?いくらここら辺のやつらが弱くても用心は大事だよ」
「ライフポーション?」
「それにここに突然来られたのですから、モンスターの戦いにも慣れてはおられないのでは?」
「あ…確かに」
考えてみればあの時に戦ったのは実質ゴブリン2体だけだし、混乱状態だったから一方的だったな。これからは攻撃を食らうことがあるか…ライフポーションって名前なんだから、恐らくHP回復アイテムだろうし必須だな!
「ちょっと急ぎすぎたみたいです」
「まぁ、それぐらい案じてくれるのは嬉しいけどねえ」
「一先ず雑貨屋がございますので、そこまで…ウィーツ案内してあげなさい」
「おやいいのかい?おまえさんがするのかと思ったのに」
「どうせフィールドまで付いて行くつもりなのだろう?…先程から手をずっと動かしているからね」
ずっと手をグーパーさせていると思ったらそういうことか。なにかしらのトレーニングでもしているのかと思ったわ。
「というか外まで付いてきてくれるんですか?」
「最初だけはね!ここらのはすばしっこいのが多いから苦戦するかもしれないからさ」
第3エリアは敏捷を生かしたモンスターが多いってことかな?ってなると本当にポーションは必須かもしれないな…俺敏捷が平均以下らしいし。
「取り敢えずは雑貨屋に行って色々準備をしないとね!ほら行くよ!」
「おわ!抱えられなくてもついていきますって!」
目的が決まったら即断即決なのか、モルトを肩に抱えてドアから出ていくウィーツ。
「い、行ってきまーす!」
その光景に懐かしいものでも感じるのか、フォルクは微笑ましそうな顔で手を振って見送っていた。
途中でウィーツに降ろしてもらい、周囲の光景を一辺に見られるがその周囲にいる村人からまじまじと見つめられる、楽し恥ずかし移動は終了となった。ただ村人たちが一切驚いた顔や訝し気な顔をせず、寧ろ微笑ましそうな顔をしていたのが謎だ…よくある光景なのか?せめて村の外の人が担がれていたら変だとは思わないのかね?
「すまんすまん!息子を外に連れて行くときは偶にこうしていたから癖になっていてね!」
よくある光景だったみたいだ…そして哀れなり息子さん。
「いやまぁ、ちょっと楽しくはあったので…」
「おやそうかい。なら今度は肩車でもするかい?」
「そこまではしなくていいです」
冗談だよと笑うウィーツ…いつかやられそうではあるなぁ。
「さて雑貨屋はもう少しだよ」
「結構近いんですね」
「そら村の中にあるからね、みんな近所みたいなもんさ」
みんな近所…現代じゃ家は近くても心は遠いってのが多いからなあ。その点は良いことなのかも――待てよ、そうなるとさっきの俵担ぎされていた話がすぐに村中に広がるんじゃ…うん、このことを考えるのはやめよう。
若干目が遠くなりながらも、考えを切り替えることに。
「疑問に思ったことがあるんですけど」
「なんだい?別段モルトは重くなかったよ?」
「そちらはとくに気になってはいませんでした…ひょいと担がれましたので。えーっと、村の人たちが俺の事を疑っていないというか友好的な気がするんですけど」
「ああ、それは簡単さ」
「簡単ですか?」
「ほれ、あんたの着けている腕輪。それが要因だよ」
ウィーツが指をさす先には精霊花の腕輪が。
「これですか?でも、これって特にそんな効果は」
確か腕輪には幸せが訪れますようにとか書かれていたから、幸運の上昇だと思っていたんだけど違うのか?
それとも他にも効果がある?
【精霊花の腕輪:花園の守手を助けてくれた者に与えられた腕輪。あなたの人生に幸せが訪れますように、見守っています。】
簡易鑑定をし直してみたけど、見守っているってのが追加されたぐらいかな?
「ああいや、それを着けているってことは精霊の加護を持っているだろ?」
そっちか。
「はい。泉の精霊の加護をもらいました」
「やっぱりねえ。加護を持っているのはそれなりにいるんだけど、加護を与える奴を気に入ったり恩を感じていると、武器やアクセサリーを渡されたりするのさ…この者は俺や私のお気に入りだって知らしめるためにね!」
これそういう腕輪なのか。そうなると見守ってるのが少し重い理由が含まれてんじゃないかって気がするけど、有用そうだからなあ…スライムを助けたのがこれにつながるとは思っていなかったし、そんな棚ぼたアクセサリーにこんな意味合いがあったとは。
「そんでそういうものを身に着けているのは大体気のいい奴が多いからね。だからみんな疑ってはいないのさ」
「成程。そういうことだったんですね」
「あと、あたしが担ぐのは夫のフォルクや息子とかの身内ぐらいなもんだからね!親戚が来て村を案内していると思ったんじゃないかね!」
ああ、それも納得がいく気がする…てかフォルクさんも担がれたのか。
実は便利な精霊花の腕輪。
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