閑話 室長は板挟み
モルトが呆然としていたり行動を始めた辺りの開発室の様子。
昨日、日間SFVR連載ランキングの3位に入っていました!
感謝の連日投稿でございます。次回は普通の間隔ですが…2連続はキツイ(´・ω・`)
現在MCO仮想開発室は阿鼻叫喚の様相を醸し出していた。
「室長!こちらでも第3エリアに異転で来れてしまう現象が発生しています!」
「室長!街で犯罪を犯してオレンジネームになるプレイヤーが予想以上に発生して牢が足りていません!」
「室長!掲示板を見て種族が追加されるの知ったプレイヤーが、やり直しを要求するメールを大量に送ってきています!」
「室長!」「室長!」
出るわ出るわ大量の問題点。鳴りやまぬ犯罪検知AIによる通知とチュートリアルやり直しを要望するメールの嵐。
このままでは間違いなくパンクに陥る状況といったところで
「落ち着けお前らぁ!」
その喝の入った一言で、混沌していた開発室に静寂が訪れる。
室長は自分自身も落ち着かせるように深呼吸を一度すると、部下に指示を出し始めた。
「まずは犯罪を犯した奴らは牢じゃなくて一度最初の空間にでもぶち込んどけ!牢の増設と対策はその後だ!」
「わかりました!」
「そん時にきちんと閉じ込められた理由を書いたウィンドウを目の前に表示させてやれ!」
「了解です!」
「次!チュートリアルのやり直しは出来ないって公式に書いてある!見ていなかったとしても妖精は注意するし、さらにはスキル選択時にもやり直しはできないって書いているんだからその旨を送ってやれ!」
「そんなもん知らんってクレームが来そうな…」
「それこそそんなもん知るか!いちいち対応していたらゲームの質に問題が出るわ!」
実際妖精に止められてチュートリアルをやったプレイヤーもいんだから、それをすべて無視した奴に補填をするのは不公平だろ?
「一旦おいて最後!第3エリアに異転か…まさかの過密状態によるバグが出るとはな。第2への異転は出来ないようにしていたが、第3の隠し村は条件満たさんと外からは入れんようにしていただけだったのが祟ったか」
クローズドテストではプレイ人数が固定で少なかったが故に起こらなかったバグだ。
「どうします?取り敢えずで転移自体を禁止はしておきましたが…強制的に第1に戻すとか」
「それは別にせんでもいい。第5まではモンスターも強力になるわけじゃないからな。それよりも突然違うエリアに飛ばされちまったんだから、そっちの補填とこれ以上のバグ発生防止で異転時のエリア拡大か待ち時間を設定する方が大事だろ。隠し村だったりは第3以降はちょこちょこあんだからな」
MCOは第5エリアまでは基本的にモンスターのレベル差がなく、近接攻撃や魔法に防御といった戦い方を覚えるためのチュートリアルエリアの扱いをしている。
「確かに…それで補填はどうします?」
「第3に行っちまったプレイヤーにはその説明と第1に戻るのと初期武器をもう1つ提供か、そのままの場所で初期武器をもう1つかを選んでもらう。人数が少ないのが幸いだぜ、全く。」
そう、押し出される形で第3エリアに送られた人数は一桁で収まった…それでも一桁押し出されたともいえるが。
「他のプレイヤーたちはどうされますか?」
「他も初期武器でいいだろ。いや、チュートリアルをやり直したいって奴らがいたな…流石にもう一度ってのは無理だが、そいつらには初期の種族だけでも変更できるようにするか?」
結構名案じゃねぇか?きちんと最初にチュートリアルをやったプレイヤーには追加武器を、そうでなかったプレイヤーには種族変更を…悪かねぇぞ。ついでにこれ以上のクレームには毅然と対応するって明記しとくか。運営が弱気じゃあ心配になるプレイヤーもいるだろうからな…遊びでの緩さは良いが、締めるところは締めとかんと。
「いいと思います!クレームの数も減りそうですし!」
「クレームってか自分の確認不足によるいちゃもんだろ。まぁいい、作業再開だ!」
「「「「はい!」」」」
各自が対応すべき問題に向かい作業を再開していく。
「はぁ、開始初日からこんなんじゃ持たねぇぞ。AIも使っちゃいるが、微調整は人間がやらにゃいかんからなぁ…部長に増員を打診しておこうかね」
そういいながらどっかりと椅子に座った室長。
MCOでの対応に当たる為に作られた専用の仮想空間だが、加速していても人数がカツカツだわ。部長に話すべき内容を考えながらも、件の第3エリアに居るプレイヤーたちを注視し始めた。
「最初に選んだ武器は、こいつはバイオリンでこっちは釣り竿…まともな武器を持っている奴がまるでいねえ…こういうのも武器として扱うようにしたこっちが悪いんだけどよ。お、こいつは大鎌か…なんで畑をずっと眺めてんだ?そこは山だろ」
そいつのチュートリアルを見たら納得がいくと思います。
実際のゲーム開始からのバグ対応はこれで済むのだろうか…無理そう。
急ぎのバグ対応などがあるため、開発室は仮想内にもあるという設定にしました。
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