クリスマスSS3 シュトレンで意趣返し
こちらは後編です!
姉ちゃんが買ってきただろう例の麦コーラが飲みかけというか、殆ど残っていた時は何で明らかな地雷を踏みに行ったのかと思ったぜ。あれもあの店で買ってきたんだろうな…それか大量の雑貨が売ってる本屋。残りは父さんが飲んだんだっけか。
「取り敢えずコーヒーの魔力は置いておくとして、今回はブターシュトレンってやつになるね」
「ブター…バター?」
「んだね。生地の重さに対して4割のバターを使うから」
「多すぎない!?」
そうかねぇ?姉ちゃんが好んで買ってくるクロワッサンなんかはそれ以上にバターが使われていたりするんだけど…話のネタになりそうだし黙っとこう。にしてもブターシュトレンもそうだけど、作る時に調べたら結構種類があって驚いたよ…日本で普通に売られているやつだけかと思ったら、とある北海道の番組でミスターと呼ばれた人が苦しんだアーモンドプードルで作ったマジパンをそのまま入れたやつとかあったりで結構面白い。
「クッキーとかにはバターは結構使われている物なのよ」
「へぇ~だからあんなに美味しいのかしら」
「脂が旨味と思っていらっしゃる?」
「間違いじゃないでしょ」
それはまぁ、確かに。
「てなわけで姉ちゃんはこのバターをひたすらに練って下さい」
「う、改めてみると結構な量」
「クリーム状になったら砂糖と卵黄入れるのよ」
「注文が多い!」
「まぁまぁ取り敢えず練ってればいいから」
そう言うとブツブツと呟きながらもバターを練り始めたので、俺は持ってきたクルミ達をアーモンドやカシューナッツが並んだクッキングシートのオーブンの天板に追加で敷き詰めていく。
「結構量があるのね」
「張り切って取りすぎたみたいで…残りは冷凍保存しておくよ」
「なんだったら全部入れちゃってもいいんじゃない?」
それやるとナッツの比重が狂うんでやめてください。生地よりも多くなるぞ。
「ふざけたこと言ってないで母さんもドライフルーツの準備して」
「はいはい…片方はお酒入れていいのよね?」
「そりゃ母さんと父さん用のだし」
正直入っていた方が保存が効くんだけど、姉ちゃんとこっちは未成年だから自重ってことで。
「さて、ナッツ達をオーブンに入れてっと」
取り敢えず15分ぐらいで様子を見てみるか…焦げないことを祈ってスイッチオン!
ピーピー!
「お、焼けた」
「待ってました!」
実際他の作業は全部終わってたもんな…さぁキチンとできてるかな?
「大丈夫そうかな?」
「食べて見れば分かるわよ…あっつ!」
そりゃオーブンから取り出したばかりなんだから熱いでしょうよ。せめて粗熱は取らないと。
「でも美味しい!クルミの味がさらに濃くなった気がする!」
「それは良かったわね…でもつまみ食いはダメよ」
「イエスマム!」
良い返事だ。俺?俺はこうなることがわかっているんで手は付けてないよ…年上を見て学ぶのだよ年下というのは。
ナッツの粗熱が取れるのを待ち手で触れるぐらいになったんで、いよいよ全てを混ぜ合わせる工程だ。と言っても本当にうまいことナッツやドライフルーツがばらける様にしながら生地に混ぜ込んでいくだけなんだけどさ。
「これ結構外に出てく気がするけど大丈夫なの?」
「そういうもんだから。店で売ってるのもそうでしょ」
「う~ん…そうだったかなぁ」
若干心配になるようなことを言わないでくれ。今回のドライフルーツには夏休みに祖父ちゃんと山に行ったときに採取したキイチゴも入ってるから失敗したくないんだ。
「お酒入りの方も終わったわよー」
「となればまた少し待ったら整形して焼いていけばいいんだっけか」
「待ちが長いのね」
「パン作ったときもこんな感じだったでしょ」
「そういえばそうね」
あの時は何でか姉ちゃんのパンだけ膨らまなかったんだよな…父さんの遺伝子なんじゃないかと思ったけどそれ以外はうまくいってるし偶然だろう。
10分ほど生地を寝かせ終わったので、打ち粉を付けた綿棒で長方形に伸ばした後に3つ折りにしながら都度綿棒で軽くならす。そして新しくクッキングシートを敷いたオーブンの天板に酒ありとなしが分かるように乗せてさらに30分ぐらい待つ…そしたら180度に予熱したオーブンで30分程度焼く!焼き時間とかは者に寄るけどな。
ピーピー!
「焼けた!」
「ずっといい匂いがして反則!」
家の中に広がるこの甘いパンの香りは確かに反則だ…だがここからさらにレッドカード待ったなしの行為をするんだけどな。
「焼け具合は…良い具合だな」
「美味しそう…」
「ステイ」
「アッハイ」
まだまだ待って貰わなければならないのに今から涎をたらされていたら持たんぞ…この記事からはみ出すような勢いのドライフルーツやナッツの誘惑が凄いのは否定しないけど。
「ここに…溶かしバターを塗る!」
「えぇ!さらに追加するの!?」
驚く姉ちゃんをよそに満遍なくバターを塗っていく。なんなら何度も重ね塗りをやって表面をテラッテラにする…そこにグラニュー糖をざっとまぶす!
「……カロリー爆弾だわ」
「今更気が付いたのか。なんなら後日粉砂糖も振りかけるよ」
「とんでもないものなのねシュトレンって…でもこんなに美味しそうだし仕方がない――ん?後日?」
お、聞き逃さなかったか。
「そう後日。なんなら粉砂糖を振りかけた後も冷蔵庫で寝かせるから、食えるのは…五日後とかかな?」
「え!い、五日後…そんなに掛かるの」
「その間に味がなじんで美味しくなるそうなのよー。も・ち・ろ・ん、つまみ食いは許さないわよ?」
「うっ」
「ついでに言えば、これクリスマスまでにゆっくり食べる物だから食べても一日一切れだからね」
キチンとドイツに習おうじゃないか……何かプルプルしてるし、これで俺のMCOを楽しみにさせられている意趣返しにはなったかな?
「こ、こんなに良い香りをさせているのに生殺しよー!?」
その叫び声は近隣に響いたという。
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余談だが、今日作ったシュトレンは不思議なことに両方とも1週間の命だった。割と横幅も嵩もある量にしておいたのに日が経つごとに消えていったんだよ…
仕方がないのでまた新しく作る羽目になった。クルミを余分に取っておいたのは正解だったよ!
「にしても本当に不思議なことがあったもんだ」
「そうねー」
「大事に食べてきたのに残念だわ」
「あんたらに言ってるんだあんたらに」
「「ナンノコトカナー」」
こやつら…
「ははは、みんな大変そうだね。どれ!ここは僕もお手伝いを」
「お「父さんは」」「あなたは」
「「「仕事で疲れてるだろうからゆっくりしてて!!」」」
「……そうかい?ならテレビでも見ているけど、手伝いが必要なら呼んで欲しいな」
「「了解」」「わかったわ〜」
こうして物体Xの製造は防がれた。
甘い物の魔力は凄まじい…それでは皆様、良いクリスマスを!
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