13話 村人と村長
作者は話しかけることはできますが、3の次ぐらいから言葉が詰まるぐらいのコミュ障です。
前回が短かったので何とか早めに…
村人がいる方向に向かって歩き出したはいいが、どうしても気になることがある。
「なんでどこの畑も何も植わっていないんだ?草が雑然と生えているだけじゃないか」
周りを見渡した時にも畑は見えたが、歩きながら確認してみると広大な畑がいくつもあるようだ。しかし、周囲を見渡してみても何かが植わっている畑がどこにもない。
幾つかの畑には何かを植えようとして準備をされていたであろう畝の痕跡が辛うじてあるだけで、俗にいう雑草たちがひしめき合って生えている。
「休耕中の畑か?でも全部の畑がそうなることはないだろうし、何なら畝も作られているのはおかしいよな?畑をやっていた人が腰を痛めたとかか?でもこんなに広大な畑を一人でやるわけないからなぁ…」
畝に種や苗が植わっているのかや、生えている草達を調べたいところだが勝手に中に入るのはなぁと、あーだこーだと畑の様子について考えていると
「どうかしたのかい、お若いの。ここらへんじゃあ見ない顔だが」
「おわっと!」
どうやら立ち止まって長いこと考えてしまっていたようで、近づいてきていた大きな女性に気が付かなかったようだ。
「おっとすまないね!驚かせようと思っていたわけじゃないんだよ」
「い、いえ、こちらの不注意でしたんで」
声も大きいしアグレッシブな人だなー。
「それでどうしたんだい?こんな寂れちまった畑を真剣に見て」
「寂れたということは元は違ったんですね?周りの畑が全部休耕中みたいな感じで可笑しいと思っていたんですよ」
「当たり前さ!そうでなけりゃこんなに広い畑をいくつも作るわけないだろう?…今はこんなだが、ここは魔力草の一大産地だったのさ」
そう畑を見つめながら寂しそうに話をする。その瞳には魔力草が一面に育っていたころの望郷が見えているように思えた。
しかし
「魔力草…ってなんですか?」
モルトの一言でかくんとずっこけるようにこちらに戻ってきた。
「魔力草を知らない?そりゃおかしな話だね。あんたどこから来たんだい」
そう訝しむように聞いてくる女性。どうやら普通に知られている植物らしい。
「えーっと、来たというか異転してきたというか…」
そうしどろもどろに説明するモルトに対し
「いてん…?あんた異転人かい!?」
驚きを隠せない女性。そりゃ突然湧いたように村外の人がいたと思えば、違う世界から来た人だったというのだから当然の話だ。
「ええまぁ、でも何でここにいるのかは分からなくて。突然ここに送られてきたんですよね。」
そう答えるしかないモルト。実は既に運営からのメールは届いているのだが、通知を切ってしまっているのでこれがバグによって起こった状況だとは気が付いていない。
「突然?…どうやら訳ありのようだね。ちょっとついてきなさいな」
そう言って住宅が建っている方向に歩いていく。まだ困惑しているモルトではあるが、ついていって悪いことにはないだろうと思い後を追いかけていった。
女性の後をついてゆく中で、猫耳の生えた人や角の生えた人といった村人と出会い挨拶を交わした。どうやら部外者に嫌悪や忌避感のある村ではなさそうだが、出会う人々には悲壮感が漂っている。あと会話の中で分かったことだが、前を歩いている女性の名前はウィーツというらしい。
そしてそのウィーツは村の中でも一際大きな家の前で立ち止まり、家に似合う大きさのドアをドンドン叩き始めた。
「お~い、おまえさん!お客さんだよ!」
大きな声で声をかけながらもドアを叩き続けていると、ガチャリとドアが開いた。
「ウィーツや、そんなにドアを叩かなくても分かるっていつも言っておるだろうに…」
「別にいいじゃないか、間違いなく伝わるんだから。それにお客さんが来ているんだから早く伝わった方がいいだろう?」
体格に似合う豪快な性格をしているようでワハハと笑いながら話すウィーツに対し、ため息がおまえさんと呼ばれた人から聞こえた。
「まぁいい。それでお客さんだったか?」
「そうさ!異転人がこの村に来ていたんだよ…畑をじっと見て唸っているちょっと変わった子だけどねえ。モルトや、この人はここの村長だから事情を話してみなさいな」
後ろを振り返りながらウィーツさんは声をかけてくれるが
「取り敢えず横に移動してくれんか。お客さんが見えんぞ」
ウィーツがでかくて村長とモルトがお互いを見れていなかった。
「ありゃ悪かったね!気が付かなかったよ!」
そういいながらウィーツが避けると、そこにいたのはトカゲのような姿をした人だった。少しぎょっとしてしまったが、獣人や魚人といった種族を選べるゲームなんだから居てもおかしくはないのかと納得するモルト。あなたも人族ではないんですがね?
「こ、こんにちは。モルトといいます」
気を取り直して村長に挨拶をするが、固まったまま反応がない。
「どうしたい。モルトに問題でもあるのかい?」
ウィーツがこちらを確認しながら声をかけるが、それでも瞬きもせずにこちらを見つめている村長。
「え、えっと、大丈夫なんですか?」
「おかしいねえ。普段こんなことはないんだけど…初めて見る異転人に緊張でもしちまったのかね」
ウィーツに村長が無事なのかどうか聞いてみたが、なぜこうなっているのかはわからないようだ。
ピクッ
「あ、動いた」
「りゅ」
「りゅ?」
「りゅ、りゅ」
「なんだい一体」
同じ言葉を繰り返す村長に、気でもおかしくなったのかと近づくウィーツ。
「りゅ、りゅりゅ、龍人が来られたぞー!?」
「突然大声で叫ぶんじゃないよ!近所迷惑になるじゃないか!」
バシッ!
突然叫びだした村長に対し、うるさいと平手打ちを繰り出すウィーツ。若干理不尽な気がする。
「んぐぅ!…う、ウィーツや平手打ちはやめとくれ。意識が飛ぶぞ」
「うるさいんだから仕方がないじゃないか。で、落ち着いたかい」
随分と荒いショック療法だ。
「ああ、首が痛いがな…と、取り敢えず家に入って下され。詳しくは中で聞きましょう」
首をさすりながらも、モルトに畏まった態度で家に促す村長。
龍人が来たと言われたけど、この種族って何かあるんだろうか?
そう思いながらも、お邪魔しますと家の中に入っていくのだった。
村長夫婦の種族は次回にでも。
修正というか追加:モルトが畑に入っていかない理由を追加しました。チュートリアルではあんなにはしゃいでいましたが、ちゃんと勝手に入らないぐらいの常識は持っています。…まぁ許可されたらはしゃぎますが。
ブックマークや評価を頂けると嬉しいです!




