135話 近縁種と妖精の知らせ
思わぬ所でフォルクさん達の失敗談を聞くことになってしまったが、その後も採取物の確認は続いていった。オレガノにタチジャコウソウ、セージにレモンバームとローズマリー。そしてハーブと言ったらのミント!しかもペパーとスペア両方……いやマジで採取しすぎだぞ俺よ。
「かなり種類があるねぇ」
「それに有用なものが多いですな」
「見覚えのあるものばかり採取していたもんですから」
因みにこの採取したハーブ達なんだがとある共通点があるんだ。それは――全部シソ科の植物たちだってことだ!この科はびっくりするぐらい有用な植物群なんだよ。まぁ、それでも一部は毒性があったりするから過信は禁物だけど…俺が採取したセージもニガヨモギと同じ成分が含まれているから多量の摂取は注意だったりする。
「それにこういうのも切っていたりしましたんで」
そういって取り出すのは細長いベルのような小さめの紫の花が鈴なりに付き、中程と頂点に少し大きく開いた花が咲き誇っている植物。こちらも葉の途中で切れていることからゴブリンの時に仕舞っていたらしい。
【ジギタリス・品質3:全草に猛毒を持ち、薄暗い場所に生えやすいため不吉の象徴と呼ばれる植物。いたずら好きの妖精がキツネなどの動物の足に花を巻き付け、足音をなくさせるなどの作用を持たせたため「妖精の手袋」や「狐の手袋」と呼ばれることもある他、儀式に使われることもある。薬用:水分を蒸発させるように暖かい風で乾燥させたものを錬金にて抽出させると、心臓病に効果のある薬が出来るが使用の際には細心の注意が必要である】
書いてある内容が所々コミカルだけど、全草が毒だってのが一番の注目点だな。日本だと別名のキツネノテブクロや英名をカタカナにしただけのフォックスグローブって名前で園芸店に普通に売ってる花なんだけど、これが生えている近くで作業をするときはゴム手袋とかをして作業をするのをオススメする…というかした方がいい。
もし切り傷が付いたりしてこの花の汁が付いたりすると、それだけで中毒が出るかもしれないからな……最近だと2008年にコンフリーって植物と勘違いして葉を6枚食べた人が10日以上ジギタリス中毒の症状の治療をする羽目になるぐらいのレベルなんだよ――まぁ劇毒と言われる物の中では優しい方で、コンフリーも2004年から国から肝毒性あるってことで販売が禁止されて、健康や美容目的の食用は避けろって言われてるんだけどな……俺が生まれる前から規制されてんじゃんと思ったよね。
「これは…ジギタリスですかな?」
「みたいです。この時期に花が咲いてるのは珍しいですよね…しかも王冠咲きもしていますし」
その名の通り花が王冠みたいに少しねじれて開いて咲いている現象のことだ。普通のジダキリスの咲き方とは随分と違うからめちゃくちゃ目立つ。
「そうだねぇ。基本は春に咲く花だから、妖精のいたずらかもしれないよ」
「妖精のいたずらですか」
リアルだと気温や湿度の変化によって起こりうる現象なんだけど、妖精が実在するこのゲームだとそんな解釈になるんだなぁ。というか妖精のいたずらか……シーズがやる光景が想像できるぞ。なんなら下部分だけ王冠咲きさせて変な形状にさせそうだ。
「それか不吉が起こっていると知らせたのかもしれませんな。仲間が困っているのを知らせていた可能性もありますぞ」
「仲間が困っている……成程」
採取していたのがフェルを救出?する前だったし十分にあり得るな…王冠咲きの場所も中腹と山頂だしフェルの居た洞窟とワイバーンの居場所を指していると思えば信憑性が増す。
「ただもっと分かりやすく説明してくれても良い気がしますね」
「そこは仕方がないね!野良の妖精ってのは興味のあることに突っ込むぐらいしかしないからね!」
「中にはこの様に何かを残すものを居ますが、気まぐれでしょうなぁ」
かなり自由だな。そう考えるとヒント的な物を残してくれていただけでも儲けもんなのか……そのヒント刈っちゃったけどな!まぁ刈った本人が解決したからヨシってことで!
因みにそんな分かりにくいヒントを残されていた妖精はですね
『むー…む、んぬ~?』
こんな感じでずっとむーむー言いながら目の前の紙に何かガリガリと書き続けてる――要望多すぎだろ。
ちゃんと分かりやすいというか、情報収集をすればヒントは見つかるようになっていました……スキルポイント不足で魔力視が取得できない場合の別ルートといった感じです。
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