134話 採取整理と苦い思い出
思いがけず時間が出来てしまったのでアイテムバッグの整理を始めたけど、意外と採取した覚えのないものが大量にあるな……ゴブリンのドロップ品も同じく。粗末な弓とか何に使えってんだ?
「確認したいものって出してもいいですかね?」
「構わないよ」
「布を用意いたしましょう」
「そこまでしていただかなくても…」
あ、汚れがついていたりしたら困るしあった方がいいかも?
「こちらをお使いください」
「ありがとうございます」
んじゃあ最初に気になったのはこちら!
【ウェンスヨモギ・品質2:ウェンス王国にて普遍的に生えているヨモギの一種。マグワートとも呼ばれ春の若芽は食用に、秋の育った葉は外用薬や入浴剤として使われる。食用可:成長しきっているので非常に苦みが強いため、他のハーブと組み合わせてハーブティーにすると良い】
出てきたのは茎が赤く、途中からスパっと切られているギザギザの葉を持った物。この微妙な長さから切られた感じはゴブリン狩りの途中で間違って切ってしまったやつみたいだな。しかも秋が繁殖期だからか花が付いている……申し訳ないことをしたな。
「おや、マグワートですか」
「この時期のだとこのハーブティーみたいに茶葉として使うぐらいかねぇ」
「っぽいですね。しかも結構苦みが強いそうで」
「ただその苦みが肉の癖を抑えることや灰汁取りに良いのですよ。今回のフォンも物によっては乾燥させたマグワートを少量加えております」
「使い方いっぱいあるんですね……流石ハーブの女王」
他にも止血止めやらで世界中で広く活用されているから万能薬みたいになっている薬草だし、ヨモギのその異名にも納得がいくよ。他にも女王と呼ばれるのはラベンダーがあるけど、今回採取したものにはなかったんだよなぁ…まぁこっちの時期が秋だから仕方ないんだけどさ。
「にしても見事にヨモギばかりを採取してきたもんだね。他にもあるんじゃないのかい?」
「あと1種類ありますけど、このウェンスヨモギは偶然ですよ……ゴブリン狩りの時に切ってしまったのを無意識に仕舞っていたみたいです」
「まぁ無駄にはなっていないんだからいいんじゃないかい?」
それはまぁ確かに。ただもう一度上から刈り取ってしまったウェンスヨモギたちには合掌を――ついでにゴブリンは滅べ。
「さて、これは仕舞って次のヨモギだ」
さっきも言ったけどあと1種類あるんだ。ここらだけで3種類もヨモギ生えてるし、幾ら薬草として使えるからと言っても群生し過ぎなんじゃないか?下手すればもっと種類ある気がしてきたぞ…日本でも結構な種類あるらしいしから、このゲームでも色々発見できそうで今後が楽しみだ…でも覚えていられるか心配になってきた。
「ん?お二人ともどうしました?」
「いえ…そのヨモギには苦い思い出がありまして」
「このヨモギにですか」
【ニガヨモギ・品質2:ウェンス王国にて普遍的に生えているヨモギの一種。似た分布のオウシュウヨモギと比べると複雑であり爽やかな香りがあり非常に苦みが強く、葉の表面にも白い産毛が広がることがあるのが特徴的である。食用可:基本的に香りづけや駆虫薬として少量が使われる程度であり、多量に摂取すると人体に悪影響があるため注意が必要】
取り出したのは全体的にウェンスヨモギよりも小さくて、葉先が丸くなって産毛が表面にも多く生えているニガヨモギって種類のヨモギだ。リアルにも生えているこれに苦い思い出か……ギャグじゃないよね?フォルクさん何とも言えない雰囲気と疲れたような顔をしてるし。
「多く摂取すると危ないってのは書かれていますけど、それですか?」
「ええ、幻覚や錯乱…それに嘔吐の症状が強く出ます」
「旅団時代に流れの錬金術師が売っていたポーションにコイツが大量に使われていたみたいでね?そりゃあもう酷い目にあったのさ」
うん、光景が想像できるな…
今売っているニガヨモギを使ったお酒とかは、法律で危険な成分の量の含有規定が決まっているので大丈夫です。それでも独特な味わいと香りなので人をかなり選びますが。
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