133話 説得と要望
非常に心配ではあるけど、今持っている物で一番使えそうなものであることは確かなんだよなこの種皮…どうしたもんか。
『まう?』
「だから畑に撒くっていうんじゃない。そもそも俺には畑がまだないんだから」
『んむ~』
じゃあどうしようかって、そんなに暴走されるのが嫌か……いやまぁ、言ってしまえば蛇の脱皮殻を脱いだ者の前で涎たらしたりしながら興奮して触っているって状況になりうるって感じだもんな。
「う~ん、ちょっと違うか。蛇で考えたら卵の殻……ってだめだ、カルシウムだから畑に撒くやつだ」
こっち方面での説得はやめておいた方が良さそうな気がする。だってどうあがいても体の一部だったものを愛でまくる変態にしかならないもの。ただそう考えると俺も刈り取った葉を愛でる変態になるんだけどな!うん、気がするじゃなくてやめよう…空しくなるから。
「私から言ってしまったんで何ではありますが、恐らくピリンも最初は興奮するでしょうがすぐに落ち着いて真面目に取り組むと思われますよ」
「え、本当ですか?」
『んにぃ?』
フェルがめっちゃ懐疑的だ。俺も今までの行動が行動だから疑いたくなる気持ちは分かる…ただ一定の理性は残してくれるんじゃないかという希望もあるんだよ。
「興味のあることへの落ち着きは少し足りないけど、仕事に関してはきちんとやり遂げる子だからね…アクセサリーの品質も期待出来るさ」
「一番簡単に想像していただけるのは、パネットとプロングが良い品質のものを目にした状況ですな。モルト殿は両者とも見たことがあるのでは?」
「パネットさんとプロングさん……」
あー、確かに最初の興奮は凄いけどその後は静かになって使い方を考えたりとかしていたような?それにプロングさんの作業は見ていたけど、バーンベリーを使った耐性薬を錬金していた時はかなり色々なことを試して最適解を探そうとしていたか。
「パネットさんは先日別れる前の凄く考えているのしか見ていませんけど、プロングさんの仕事は見ていたんで真面目にやりそうってのは分かりますね」
『ふむぅ』
プロングさんが真面目にやっていたのを聞いたからか判断が揺れ始めっぽいな。あと一押しあれば問題なさそうなんだけど何かないか?
「あ、耐性薬もそれがあったからできた物なんだぞー?」
『んむ…ん!』
「お、渡す気になってくれたか! ボソッ(やはり好物で釣るのが正解か)」
『む?』
「いやなんでもない。ナンデモナイゾー」
『んぬぅ?』
本当だって。モルトウソツカナイ……だってプロングさんが作ったのは事実だもの。
フェルの追及の目を避けながらも、今日の予定はピリンさんへのアクセサリー依頼をするってのに決まった。と言ってもまだ少し渋っている様子だったんだけど
「興奮が続くようなら一度仕舞っちまうのも手だよ!なんなら一度帰ろうとするのもいいかもしれないねぇ」
「あの手の者たちは手に出来るものが本人が原因で出来なくなると、とたんに従順になるものですから」
「それと依頼の内容を紙に書いておいたり、口頭で伝えたりした後に直ぐにその場を離れるのもありだよ!まだ持ってるんじゃないかとか追及されずに済むからね!」
そんなことを言われたりしたので、要望を紙に書いて渡したら去るって方針に決まった。そういやプロングさんにエルダートレントの木材渡した後に割とすぐ移動してたな…あれってちゃんと理由があったんだ。
『んむ!』
「紙とペンを出してくれと。すみませんが貸していただけませんか?」
「あいよ!紙は何枚必要だい」
『ん~…みぃ!』
「三枚だそうです…どんだけ要望書く気だ?」
「まぁ詳細であった方が作り手もやりやすいでしょう…詰めすぎもよくないでしょうがね」
『んぬ』
そこはちゃんと調整すると。本当か?とんでもない機能とかつけようとするんじゃないぞ。
「これでいいかい?」
『ん!あぅ!』
「はいよ!お礼が言えていい子だねぇ」
紙とペンを渡されてお礼を言ったフェルを見て、頭をなでるウィーツさん。力加減が絶妙なのか頭が揺れることなく嬉しそうにしてんなー。
「さて…フェルが書き終わるまで暇だな」
「少しゆっくりされては?色々ありましたし整理するのもよいでしょう」
確かに。そうと決まればさっきもしたマジックバッグの中の確認をするか――いい加減ゴブリン称号のアイテムも確認しないといかんし。
未開封アイテムがいっぱい!
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