132話 素材と懸念
変な想像をしてしまったことにより、頬がぴくぴく動くモルト。
『んむ?』
「な、なんでもないぞ」
言えん、めっちゃ笑顔で筋肉が光り輝くような状態のフェルがマッスルポーズを繰り広げているのを想像していたなんて。体格と顔があっていなさ過ぎて吹きそうになったぞ。
「何かアクセサリーに出来るもののアテはあるのかい?」
「アテですか…何かあったかな」
タイミングよくウィーツさんが声を掛けてくれたので、頭を切り替えてマジックバッグのウィンドウを開きアイテムたちを物色する。アキノノゲシにアザミ…あれ、ウェンスヨモギなんてのもあるな。ゴブリン狩りの時についでに採取していたんだろうか?形がわからんし後で取り出して確認してみよう。
「相性の良い物が無いのであれば、私から何か提供することもやぶさかではありませんが……少々お待ちを」
そう言って納戸の方に向かうフォルクさん。
「何を出すつもりだい?」
「ノス帝国に行った時に討伐した植物の蔓だ。品質はそこそこではあるが、あれ自体に何かしらの効果があるだろうよ」
「ああ、あの厄介だったアイツかい…そういや今回のエルダートレントみたいに種を飛ばして攻撃もしてきたねぇ」
ウィーツさんが厄介というレベルのモンスターの蔓……一体何だ?
「あの、それの名前とか覚えていませんか」
「名前ですか…確かエンシェントは付いていたと思うのですが」
「それは辞退でお願いします!」
『んむぅ?』
間違いなくやばいやつ!そんなものをポンと渡してこようとしないでいただきたい、こちとらまだまだ始めたてのレベルもペーペーなんですよ……フェルよ、せっかく良さげな物なのに要らないのかとか言わないでくれ。欲しくないのかと言われればめっちゃ欲しいけどさ!
「最初から効果が付いてる可能性があるんだから、それが筋力が下がるとかだったら嫌だろ?」
『んぬぅ』
「確かに直接攻撃はしてこないやつだったし、あり得るかもしれないねぇ」
「魔法などでこちらの動きを妨害して種で攻撃するのが主だったな…期待にそぐえる物でもなさそうなのでやめておきましょうか」
よし、これで身の丈に合わない装備を手に入れることは避けられそうだぞ…エルダートレントも身の丈に合わないとかはスルーで頼む!そうでもしないとフェルのアクセサリーが作れんし、またとんでもないものが渡される予感がする。早いところ良さげなものを見つけないと――お、これがあったな。
「これとか相性がいいと思うんですけど、どうですかね?」
「なんだいこりゃ?」
「見たところ何かの殻のようですが…」
モルトが取り出したのは黒く少しの光沢のある何かの欠片。フォルクに手渡されたその欠片は軽くはあるがそれなりの強度があるようで、指でノックをするように確認するとコンコンと音が鳴る。
『ん~ぅ?』
「自分に使っていいのかって…そりゃ元々お前の物?だし」
『むぅ…まぅ』
「畑に撒いたりすればそれだけで魔力を保持してくれる肥料になる?まぁ魔力を吸収してた物だもんなぁ」
他に魔力が染み込むことがないようにできるってことかね?望まない変異が起こらないようにとか意図的に変異が起こるように促すとかもいけそうだな……かなり有用だ。
「でも身を守るものにした方がいいだろ。それにこの欠片だけじゃなくていっぱいあるだろうに…3メートルぐらいあったやつの大体を持ってきたんだぞ?」
『んむ!』
それぐらいあるなら大丈夫だね!と返事をしてきた…自分が生まれたモノなのに未練とか一切ないのか。因みに大体の理由は、上部分が誰かさんの突進の際に上空に吹っ飛んでいったからだ。あれもどこかに落ちたんだろうなぁ……被害が出ていないことを祈る。
「これが元々フェル君の物であると…となると」
「生まれた時の種の外殻かい?」
「ですね。種皮の部分です!」
【樹妖精の種皮片(炎熱)・品質レア:妖精の中でもドライアドが誕生する際に残る種皮の欠片。魔力を保持する特性があり様々な用途が存在し、中でも特殊な環境で育ったドライアドの物はかなりの貴重品である】
これなら相性抜群だろう……品質からして結構なレア物みたいだけど。なんなら生まれる時からずっと一緒だった体の一部みたいなもんだし相性どころか同一体だし。何故か本人はそこまで興味がないけど。
「確かにアクセサリーにするものとしては最上ですが…」
「なんです?」
フォルクさんが何故か微妙な顔をしている。間違いなく良い物だしそんな顔をする必要はないと思うんだけど?
「モルト」
「はい」
「これはフェルの生まれてきた物だよ?」
「ですねぇ」
「そんなのをピリンに持っていったらどうなると思う?」
「どうなるって――あ」
ピリンさん=妖精ジャンキー。そんな人に妖精素材を持っていったらどうなるか?そうですね制御不能な事態が起こりますね。
「どうするか……物凄い興奮するだろうけど良いアクセサリーは出来そう」
『あむ……んまぅ』
やっぱり全部肥料にして畑に撒こうって言うんじゃないよ。
便利だけど厄物にもなりうる。
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