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閑話 開発は欲望

開発の人達のやりたいことリスト羅列回。

 VRゲーム Mystical Code Online<ミスティカルコードオンライン>

 4年ほどの月日をかけて大手企業が作り上げたこのゲームは、簡単に言ってしまえばMMORPGに分類される。


 初期の段階ではモンスターを倒し素材を集めながら金を稼ぎ、武器や防具を強化してちょっとしたなぞ解きをしながら次の場所へ移動していくというありふれた内容だったが、開発から1か月ほど経った時のとある若い女性社員の一言で自体は激変することになる。


「そういえば室長、この開発中のゲームなんですが…裁縫とかってできないんですか?」

 昼休憩に入る社員が、肩が凝ったのか伸びをした後にそんなことを言い始めた。


「裁縫だぁ?んなもん組み込んでどうすんだよ。他のゲームか現実でやりゃいいじゃねぇか」

「開発に追われているんですからリアルでやれるほど時間がないですって。それで、昔服をデザインして作りまくって繁盛させるってゲームあったじゃないですか。あれと似たようなことできませんか?」

 裁縫のゲーム?そんなゲーム作った覚えは…いや、5年ぐらい前にあったか?確かリアルな裁縫をVRで覚えよう!ってコンセプトだったな。


「ああ、あれか…まだ感覚同期が甘い時期に作ったやつだったなぁ。上手く縫えないやらミシンのボビンが入れ替え中にすぐにどっかに行くだとか言われて、あんま売れなかったから思い出すのに時間がかかったわ。俺はほんの一部データしかやっていなかったから分からんが、データ自体は多分残っているだろう…今の環境に合わせるのに修正は必要だろうができなくは「可能なんですね!?」…えらく情熱的だな、あれに思い出でもあるのか?」


 近いから顔どかせと言われたその社員は


「私、そのゲームをずっとやりこんでいたんですよ!」


 鼻息をふんす!と強く吹き出し、眼をらんらんと輝かせながらそう言い放った。


「お、おう。たださっき言った通り結構な修正が必要だぞ?(ヘビーユーザーがここに居やがったか!)それにさっき言ったように他のゲームでやれば」

「他のゲームってデザインを描いてそのままポンって出来てしまうので面白くないんですよ!それに今期から仮想内の時間加速でのプログラミングの許可が下りていたはずなんで時間なら大丈夫です!」

「そ、そうか。ただまずは上に変更が可能かどうか聞いてみないといかんからな」

「はい!一先ず休憩時間にデータを探すだけにしておきます!」

「そこは休め!」


軽く突っ込みを入れた室長ではあったが、鼻歌を歌うレベルで高揚しているこの社員には聞こえていないだろう。さらに


「ったく…それで?さっきからそわそわしている他のやつらは何の用だ?昼休憩になってんだから飯にでも行こうってか?」


先程から会話を聞いていたのだろう――まぁ大声で話していたから当たり前だ――社員たちがこちらを向いていたり、自分の後ろに移動してきている。

大方予想できることではあるが、一応の確認として聞いてみることにした。


すると


「えーっと、釣りや養殖とか出来ますかね?」

「鍛冶やりたいっす!」

「牛や羊たちを育ててみたいかなーって。あとできれば獣型のモンスターとかも」

「土木とかやってみたいです!現実だと法律がありますし、なおかつこんなヒョロガリじゃ出来ませんので!」


ワー!ワー!


どんどん出てくる社員の欲望の嵐。


「藪蛇だったか…そんな大量に出来るわけねぇだろ!開発期間考えろや!」

「「「「仮想内で加速させてプログラミングすればいいじゃないですか!!!!」」」」


「うるせぇ!誰だ仮想プログラミングの許可申請出したやつぁ!!」

「「「「部長です!!!!」」」」

「ハモらんでいい!……そういや以前に部長が土いじりをする暇がないって嘆いていたか。あの人結果的には良いんだけど突然追加項目出してくるからな…若干嫌な予感がする」


ピコン!


そうつぶやいた直後に誰かのスマホが通知を告げた。


「……誰のスマホだ」

「室長のに決まっているじゃないですか。まだ初期音なんですか」

「別にいいだろ」


スマホの通知を確認するとメールが一件。名前は部長…件名は


「ゲーム内職業と生産の多様性について…的中しやがったか」


そうして一人の社員と一人の上司から始まった欲望がぎちぎちに詰まったゲームは、紆余曲折ありながらも開発が進められ世に解き放たれた。

部長「現実で出来ないならリアルな仮想ですればいいじゃない」

次回から第1章になります!これ以降は投稿が数日空くことがあるのでご了承を…


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