119話 金月と運
アナザームーン。
野草達の採取の手を止め体をほぐすために伸びをした所、夜空の月の横におかしな光があるのを発見したモルト。一体何なのだろうと首を捻っていると。
『きーぅ』
フェルがあれは金月であると教えてくれた。
「金月?もう一つの月ってことか?」
『うぬぅーやぁう!』
それで合ってるらしい…しかもやっと顔が見れたぐらいで、まだ月齢的に2日目だから出始めってレベルだとウィーツさんが教えてくれたそうな。マジ?あの曲線の感じからすると隣の銀月さんの倍ぐらいない?
「でもそうなると、先月でもかけたぐらいは見えていてもいい気がするけど…」
『んにゅ』
「満月から新月になるまで6か月もかかるのかい…てなるとゲーム開始日からは新月で見えなかったのか」
ついでに銀月が満月近かったから明るかったのが原因かね?今は少し欠けてるし。
「そういやパネットさんの店で会った教会の人っぽいのが、2つの円が重なったネックレスしてたな。あれ銀月と金月を模したものってことかな」
『む?』
誰それって、豊沃の恵みですれちがった――思い出した。あの時のフェルは抱っこで顔を埋めてる状態だったから覚えてるわけがないんだわ……こっちを見てやけに柔らかい表情をしてるなって思ってたけど、原因は腕の中だったか。
「あー…多分宴会の時に会えると思うから、その時に改めて挨拶しような」
『ん!』
よし良い返事だ。大分人見知りが抜けてた気がするし、これなら他の町でも大丈夫かな?いや、異転人というかプレイヤーは変な格好していたり奇妙な行動をするから分からんな……ん?
ギ…ギギ
周囲から聞こえる濁ったような声。反射的にモルトは手に持っていたシャベルを仕舞い大鎌を取り出した。
「近くに奴がいるな」
『んや?』
「ゴブリンだよゴブリン…やっと居やがったよ」
モンスターが居ない原因のもう1つとして、フォルクさんが村の周囲からモンスターが逃げてるかもしれないって言ってたのがあるけど、それでも多少はいると思ったのにこれでやっと1体だよ。フェルのジェットで寄って来ないってのもあるだろうけど、少なすぎだろ!
後こいつが少ないのはまだいいんだけど、グラスウルフは本当に何で居ないんだ?あの狩りの時昼だったろ。
「まぁ過ぎたことを気にしても仕方ないか…そこの高い草むらの中だな」
『んむぅ』
よくそんなところに隠れてるのがわかるなって言われてもね。風で揺れる方向じゃないし
「――やれフェル」
『あぅ!』
不自然に動いた場所に向かって容赦なくファイヤーボールを叩きこむ。
ギャゥ!?
「ナイスヒット!」
それに草もほぼ燃えていないしいいぞ!これなら森や植物の密集地帯とかじゃない限り火魔法を使ってもよさそうだ……油生成との併用は怖いけど。ゴブリンが悲鳴を上げ燃えながらもそんなことを暢気に考えるモルト…慈悲はないのだろうか。
『う?』
「うん?あぁとどめを刺せってことね。ホイッと」
サクッ
<ゴブリンを討伐>
<小魔石、ゴブリンナイフを獲得しました>
「お、空の小魔石じゃなくなってる」
ついでにレア枠であろうゴブリンナイフも手に入った……手に入ったんだが既に6本持ってるんだなこれが。雑貨屋で買ったナイフの方が性能良いから使い道ないんだよ、街で売れるかな?
『んぬ?』
「あれだよ、お前が山から魔力を吸ってた影響でモンスターを倒しても魔石の魔力が抜けてたんだよ」
『むぅ…』
「落ち込むなって…ただ確かに良くない事ではあったけど、ここまで長引いたのは徴税官が自分の横領を隠すために道を塞いでいたからだし、ワイバーンからは魔力を横取りされてたんだから悪いのはあっちだろ。元々はすぐ生まれて周囲に恩恵与える方が大きかったんだし」
『んむ』
それもそうかと思いなおし、下げていた顔を戻すフェル。あっぶねぇー余計な一言でガチ凹みさせるところだったよ……にしても、改めて起こっていた事を言葉にすると運が無さすぎるんじゃないかフェルよ…もしや運が4しかないのそこらへんが関係してる?
「フェル」
『あぃ』
「どうにかして運も上げよう」
『?…むぅ?』
なんでって、本人はそこに自覚がないのね…
可哀そうは可愛い…と思うわけではないのでどうにかはしてあげたい。
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