112話 知らせと回避
デジャブ。
非常に、ひじょ~うにその苦労話を聞いてみたい気もするが、聞き出したらキリがない予感がするので聞き流すとしてだ。
「設計図が盗まれないってどういうことです?」
物があるから取られると思うんだけど…厳重に保管されてるとか?それでもその保管場所自体を持っていかれるか占拠されたら意味ないだろうし。他の人が触ると燃えるとかのロマン加工がされてるとかだろうか。
「盗むも何も現物なんてありゃしないからな」
「え、それってどういうことで?」
「設計図は俺の頭の中にしかないってことよ」
そういって自分の頭に親指を向けニヤッと笑うプロングさん。おぉ、確かに盗むことなんてできないな…今一瞬頭ピカッと光らなかったか?気のせい?
「それでいて住民じゃなきゃ俺に依頼できないって契約もしてんだから安全だろ?…どした?」
「い、いえ」
『ぴぁ~!』
「眩しいだ?…今ちょうど玄関のランプが光ったからか」
そうじゃないです。いやそっちもいきなり点いてびっくりはしたけど、明らかに頭頂部の後ろの方からまた光がピカッとしたんだよ……笑いを堪えはしたけど絶対変な顔してるって。
『うぁう』
「後ろだ?あぁ、夕日が消えかかってんな。確かにあれは眩しいか」
もうわざとなんじゃないだろうか…いやでも後ろを向いたプロングさんの頭には何もないな。やっぱり気のせいか?フォルクさんやウィーツさんだって見えてるはずなのに、無反応で今日の献立の話してるし――その豆たっぷりのズッパ明後日まで残りませんかね?
「うし、パネットの野郎が返ってくるのが遅ぇなら俺も飯を作らんといかんな」
「プロングさんも料理できるんですね」
もう切り替えて頭発光現象については忘れよう…ふと思い出したときに腹筋がやられそうだし。だからフェルはおっかしーな~みたいな感じで首を傾げるのをやめな?
「俺の場合料理つーか、栄養素のことしか考えてないごった煮とかになるけどな。んで、用は終わりか?」
「いんや、まだあるね」
「ああ、3日後にフェニス山の魔力問題解決に関しての宴会を開く。それで道具等の準備を頼みたいのだ」
「成程宴会を3日後にねぇ…鍵よりそっちの知らせの方が先じゃねぇか?」
それはそう。俺も何で先にスペアキーの作成なのか疑問だったんだ。
「篝火等に使いたい木材がコレなのでな。お前に見せることを考えたら最後にしたかったのだよ」
「あん?ただの木材で俺が騒ぐわけ……エルダートレントだな?しかも間違いなく変異種だ」
うわすげぇ、フォルクさんが取り出した普通の丸太みたいな太さの木片を見て一瞬で目の色が変わったかと思ったら、モンスターの種類どころか特殊な個体だってのも当てたぞ。
「ほれ、1つ渡しておくから考えておいてくれ」
「おう……この重さに白さ…間違いなくウェンスカエデが魔化した個体だな……となると」
うん、さっきも似たような光景見たな。そんで前回のも含めて俺もこうなる事があるだろうし、反省はしておこう!
エルダートレントの木材を受け取ったきり、それをじっと見つめたり早材と晩材――春から夏の成長と秋から冬の木の成長による層の名称の事――によって出来た年輪を一層一層ゆっくりと確認し始めてしまう機械と化してしまったので、パネットさんと同じように放置して家まで戻ることになった…ピリンさんどうなるんだろうか。
『ぬぅ~』
「そういや濃縮薬の事お願いするの忘れてたな…多分明後日には正常に戻ってるだろうしその時に頼むか」
『んぁ!』
絶対に忘れないようにと。了解了解…お願いと言えば俺も1つあったな。
「俺、エルダートレントの瘤ってのも持ってて、どう使うのがいいかプロングさんに相談しようと思っていたんですけど…あの様子を見るとついでに出さなくて良かったですよね?」
「賢明でしたな。間違いなく宴会の準備どころではなくなっていたでしょう」
「珍しいモンスターの更に珍しい素材だからね!少なくとも1週間はそれを調べることに没頭するだろうさ!」
うわぁ、パネットさんの時みたいに気軽に魔樹の苗を出すみたいなことしなくて良かったぜ。下手するとバーンベリーのにじり寄り以上の目にあっていた可能性も…というか確定だなこの感じだと。
『やぁ?』
「瘤って貫いてなかったかって?確かにフォルクさんの一撃で綺麗に消し飛んでたけど、ドロップしたんだからしょうがないだろ?」
『ふぬぅ』
そういうもんなのかと若干納得のいっていないフェル。多分プレイヤー達はボスを倒したときに部位ごとにドロップするのが決まっていたりするんだろう…他にも条件はあるだろうけど。ただなぁ
「あの品質のいいバーンベリーだって採取量アップっていうスキルで謎に増えてるんだからな」
『ん!』
じゃあ仕方ないよね!って……現金な奴め。まぁ俺は質のいい植物素材であればなんでもウェルカムだけどな!何なら毒でも構わん!ゴブリン共に植物の恐ろしさを教えてくれるわ!
根に持つタイプ。ただまぁ、目の前で食べ物粗末にして笑い転げられたら絶許ですけれども。
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