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M・C・O 植物好きの道草集め  作者: 焦げたきなこ
第2章 1人きりの妖精
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103話 苗と笑顔

前書きが思いつかない。

 自分自身もプロングさんの雑貨屋で畑について聞くときに似たようなことしたし、同じようなもんだよなーと苦笑しながら言ったのだが、予想に反して結構な勢いで謝られてしまった。き、気まずい…

「い、いや、そんなに謝らなくっても…俺もやらかしてはいるんで」

「そう言われても心当たりしかないのよ~」

「私も同じく!」

『んぬんぬ』

 ピリンさんの発言に対して激しく頷くフェル…一番の当事者であり被害者だから、これに関しては何も言えん。満足げな顔だから怒っちゃいないのはわかるけど、ご本人はピクッと反応してるな。


「う~ん……取り敢えず、これ以上は収集が付かなくなりそうなのでやめにしましょう!んで早速パネットさんが持ってきてくれたものを見せてくれますかね?」

 放っておくと過去のやらかし話とか始まりそうだと判断したモルトは、パネットが興奮しながら運んできた物について言及し流れを変えることにした。俺のやらかしも話さなくちゃいけないってのを考えたわけじゃないぞ?

「そ、そうね…元々これのためにやってきたんだもの。いよいしょっと~」

「結構大きな物だけど、何かの若木かしら?」

「ええ、木なのは間違いないと思うのだけど、トレントの上位種から出たものと考えるともしかしたらというのがあるのよ~」

「ドロップ品の苗…俺も持ってはいますが、違う物の可能性もあるので両方とも調べてみますね」

 そういって自分のマジックバッグから魔樹の苗と書かれたものを1つ取り出してみた――が


「あれ?」

「こっちはそんなに大きくないわねー?」

「ですねぇ」

 何故かパネットさんが固まってしまったが葉の形とかはどちらも楓系の切れ込みの浅い手のひらみたいな形で変わらないし、成長具合が違うだけだと思うんだが…嫌な予感がするけど鑑定しよう。


【ウェンスカエデの若木:ウェンス王国の北部以外で見かける事の多い国民的なカエデの仲間。木材として白く高級感のある材として人気であるが、樹液を採取し煮詰めることによりメープルシロップを作成することができるためそちらの用途でも栽培されている。ただしサトウカエデに比べ歩留まりは少ない】


【魔樹の苗:魔力が豊富な土地にて成長し変化した珍しい樹木の苗。成長に魔力が必要であり、非常に世話の難易度が高い。しかしその分、十分に成長しきった場合の材木や実の品質は元の樹木を凌駕する。この苗の元はウェンスカエデであるようだ】


「うわぁ…」

 誰だ成長具合が違うだけって考えた馬鹿野郎は…俺ですね。いいじゃないか、出した瞬間から見た目が違うから現実逃避したくなったんだよ!

「何で嬉しそうに笑った顔なのに声は嫌そうなのよ」

「え、笑ってますか?」

「だんだんと口角が上がって最後は満面の笑みだったわよー?」

『んぬ』

 またもや激しくうなずくフェル。そうか若干気持ち悪いレベルだったか…喧しいわ!自分が手に入った植物がかなり良いものだってのが嬉しいのは仕方がないだろう。パネットさんが持ってきた若木が俺には手に入っていないのは不満だけど、明らかに魔樹がレアドロップだし。


「それで、笑顔の理由は?お母さんが固まってる理由からやばいってのは分かるけどー」

「簡単に言うとですね、パネットさんが運んできたのが普通のウェンスカエデで俺が出したのが魔樹になったウェンスカエデだったんです」

「うぇっ、よりによって珍しいやつを引いたのね…しかもかなり有用な物を」

「不味いですかね?」

 個人的にはサトウカエデじゃないってのが昨日のニシヨモギの再来って感じがしてまたかよって言いたくなったんだけど…まぁ同じメープルシロップが作れるって鑑定でも出てるしあんまり気にされないのかね?後はメープルシロップの収穫って秋じゃなくて春だから変だってのも……


 パンッ!

「……やっぱり魔樹の苗なのね~?」

『……ぅ』

 途中から関係のないことを考えていると、ビクンと一度跳ねたパネットさんがかなり大きな音を立てながら両手で頬を叩きゆらりとこちらに迫ってくる。その動きにつられてかフェルは既に俺の背中に避難を始める…だから俺を盾にするなっての。


「あら、そんなに怖がらなくてもいいじゃない~」

「お母さん一気に動くから怖がられると思ってそうしたんだろうけど、笑顔でゆっくりと近づいてこられるのって相当怖いわよ?」

「そうかしら~?」

「ええまぁ……なぁ?」

『うぁ!』

 山の頂上にいたワイバーンなんか目じゃないって?流石にそれは言いすぎなんじゃ…ああほら、目に見えてパネットさんが落ち込んだぞ。


 その後伐採を終えたウィーツとフォルクが合流するまでの少しの間パネットを励ますことに奔走することになったが、お蔭で魔樹の事がうやむやになり安堵するモルトであった。

力はあっても乙女は乙女。


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