98話 核の位置と破壊
フォルクさん活躍回?
まずこの作戦の発端としては、油生成のレベルが3になったからか新しく油の種類が増えてたってのが理由なんだ。今もジェットで使ってるやつはすぐに引火するんで使えそうになかったんだけど――まぁゴジアオイのドライアドだしその油が燃えやすいのは仕方ない――このレベルアップのおかげで多少燃えにくいのが生成できるのが分かったんで用意してもらったんだ……それが結果的にこうなるのは完全に予想外だったけどな!
「あー、やっとボーっとしたのが治ってきた」
目の前の焦点がキチンと合ってくるのを感じる。頭に衝撃に暗闇と逆さまによる血の上りといったコンボで、遠くはなんとなくしか見えてなかったからな…炎の揺れとかはかろうじて分かったけど。
「改めてみるとめっちゃよく燃えてるなー」
なんて言えばいいんだろう、スウェーデントーチだっけ?あの丸太に切り込み作って真ん中に焚き付けとか入れてやる焚火。あれの燃え始めって感じだ…まぁ、どちらかというと危ないアメリカの切り株除去法なんだけどな!周辺も燃えてるからこっちの方がより酷いけど。
「本当に自分で考えたとはいえ凄い景色だ。こっちだから出来るけど、あっちだと危なくてできんな」
『うむぅー』
「おう、もう大丈夫…って引っ張るなって」
地面に立ったフェルが足をグイグイしながら切り株を指差している。余計なこと考えてないで早いとこ核を特定してくれって感じか?……なんだかんだ上手い事油も燃やすのも出来てるし逃したくないか。
それに魔法で燃やしてるのもあるしMP消費は減らしたい…あ、だから飛んでないのか!切り株の周囲全部なんか余計に消費するだろうし。
「もうちょっと待ってくれ…まだぼやけてるから」
『ぬぅ』
「今は回復しようとしてるのか根でも種でも攻撃はしてこないけど、少しでも拮抗が上回ったらやり直しになるよ!」
「その時は私が粉砕するから任せて頂戴~」
「嫌な予感しかしないので今すぐやります!」
さぁ魔力視よ!エルダートレントの核の場所を早く見せてくれ!あのお玉を振り回してる料理人が動き出す前に早く!多少のぼやけなんか気にしてられるか!?
魔力視を発動させたことにより魔力のモヤのようなものが見えるようになった為――フェルから切り株に向かって魔力が飛んでるのが良く見えるな――余計に視界が不明瞭になってしまったが、それでも一際輝く核の位置を逃すことはなかった。これで粉砕回避だ!
「よし!大体予定通りの位置だ…フォルクさん!お待たせしました!」
「いえいえ、精神を統一させるには良いタイミングでしたよ。して、場所は何処ですかな?」
「洞上の瘤の後ろです!火責めのおかげかあそこから動く気配がないです!」
罅割れた中央から迫る油火災に、周辺で燃える火から退避すると考えたらそこしかないよな!瘤で外の火からは多少安全だし盾にもなるし。
「ふむ、色々とありましたが結果的にモルト殿の作戦の通りになりましたな」
「本当に色々あったけどね!」
作戦準備から激辛所持が確定するわ、エルダートレントが種飛ばして攻撃してきて終いには射出からの犬神家…色々すぎる。
「ではモルト殿にフェル君、それとピリンは少し離れていて下さい――危険ですので」
その瞬間、フォルクさんから強烈な圧が発生した。
――フォルク視点
「おや、予想以上に離れられてしまったな」
「当たり前だろうに」
「現役時代みたいな圧が出てるものね~。ピリンなんか説教以上の怯えようだわ~」
しまった、ついモルト殿に良いところを見せようと張り切ってしまったか…
「手に汗を握る戦いというのを見させて貰ったのでね。高ぶりすぎたようだ」
「それについては同感だね!つい張り切っちまったさ!」
「その張り切りの余波が私に飛んできたわよ~?」
「ありゃ変なこと考えてそうだから激飛ばしたんだよ…器用さが上がるってのはいいもんだね!」
本当に私を狙ってたのね~という言葉をよそに、フォルクはマジックバックから――彼のバッグはウィーツと同じように服のポケットになっている――装飾の付いていない無骨な槍を取り出した。
槍は穂が広がっている笹の葉の形ような形をしており、円錐状ではなくクロスするような形で作られ穂の後ろは柄に嵌めこまれている。鈍く光る青色の金属で作られており、黒い柄の後ろにつけられた石突も同じ素材なようだ。
その槍の握り心地や使い勝手を確かめるように2度3度振るうと、右腕の内側に柄抱え体制を整えた。
「さて…ウィーツ。合わせなさい」
「あいよ!久しぶりにやるねぇ!」
彼女も戦斧を1度振るい、フォルクの背後に刃の面を向けて構えだした。
「私も準備した方が良いかしら~」
「貴女はウィーツが外した場合の予備のようなものですが…正直恐ろしいことを言っているな」
「ミスったら骨が砕けるだろうね!」
「そうならないように上手くやるとしよう――部分竜化」
スキルが発動され、フォルクの両足と右腕が肥大し鱗の色も濃く変化する。
「ゆくぞ!」
「了解!かっ飛びな…インパクト!」
フォルクが飛び上がりその足裏に向かってウィーツの戦斧がぶち当たると、フェルの飛行を超える凄まじい速度でエルダートレントに向かい吹っ飛んでいく。
「いってらっしゃ~い」
「ふむ、今回は対象からズレるということは無かったか…」
不思議なことに一度真逆の方向に吹っ飛んだことがあるから心配だったが、杞憂か。ウィーツの言う通り器用度というものは大切なようだ…彼女が料理以外にもそれを発揮してくれれば何度もする必要はなかったのだがなぁ。
そんなことを考えているうちに切り株が迫って来ている。流石に回復よりもこの攻撃を防ぐべきと判断したのか多くの根が集まり壁を形成しようとしていた。
「残念だがそれだけでは止まらんよ。竜槍術、風竜の進撃!」
右腕の槍が力強く突き出すと切り株を飲み込まんとする大きさの旋風が体に纏わりつき、そのままギュン!と通過した。
パキンッ
「っとと、流石に数十年ぶりとなると着地がおぼつかんな。後ろが傾斜になっているから突き刺さるところだった」
そう言いながらも危なげなく前傾からの着地を成功させ振り返ると。
そこには胴が真っ二つに抉り取られた切り株の残骸と粉々になった核があった。
今回お試しで視点の表記をしてみました。
次回は閑話…かな?
因みにこの油を使った切り株除去法は灯油やガソリンを使ったものが実際にあるのですが、周辺の土への影響や他の木々に燃え移る危険とかあるのでご注意を…表面上消えても地面の下は燻って燃え移るとかありますので。
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