92話 地中と衝撃 ※
地味にプロローグ等を含めエピソードが100を超えました!
これからも精進してまいります…
ゴッ!バキゴキ…ズン…
吹っ飛ばされたエルダートレントの半身が、大きな音を立てながら横倒しになった。
「結構飛んだねぇ…いやあ、久しぶりにここまでの力で斧を振ったもんだよ!」
後ろからモルトの気の抜けたような声が聞こえてきたけど、流石にバニヤンの斧で巨大化させて一気に切ったのはやりすぎだったかねぇ?でも、すぐに引っ付く可能性を考えたら一気に切ってすぐ吹っ飛ばすしかないってのは言ったはずなんだけどさ。
「ああ、割とよく飛んでモルトの横の方に行ったからびっくりしたのかね?」
なら納得だねと斧を肩に背負って笑い始めるが、彼が気の抜けた声を上げたのは彼女の行動全てである。
「さて、あたしの出番はここで終わりだけど…ついでに切った方を輪切りにでもして薪として残させるとする”ウィーツさーん!そこ地面から何か来てるので退避してください!!”……全く往生際が悪いね!」
モルトからの知らせを受け取ってすぐに地面が揺れ、裂けるようにして数十本の太いひも状のナニカが飛び出し襲い掛かってきた!
「切り株が中々再生しないと思ったら、太い根を無理やり動かして攻撃してくるとはね!先の方が折れちまってるじゃないか!」
襲い掛かってきたのはエルダートレントが地に張り巡らせた根。その中でも太く攻撃に転用できる主要な根をぶちぶちと引き抜いて振り回してきたのだ…更に折れた先から新たな根を生やし、ウィーツを絡めとろうと伸ばしてくる。
「トレントの最終手段が上位種だと本当に厄介だよ!流石にこの状況じゃあ取り回しの悪いこっちじゃないね…いよっと!」
地面と空中両方から根が襲い掛かる中戦斧をしまったかと思うと、先ほど枝打ちに使っていた腰鉈を取り出して周囲を薙ぎ払った。
「全く魔力を認識してるからかあたししか狙われないね――すぐ傍に危険が迫ってるってのに」
危なげなく根の猛攻を防ぐウィーツの目線はエルダートレントの本体の丁度後ろ。
”さぁーて、大きいの行くわよ~!”
そこにはいい笑顔のパネットがお玉を振りかぶっていた。
「私はウィーツちゃんが伐採するまで待機って話だけど、流石に暇ね~」
重要な役目だからバレないように隠れていなくちゃいけないってのは分かるのだけど、ここまで他の人が活躍をしてるのを見るとうずうずしてきちゃうわ…本当にやることがなかったから村長さんたちに交じって樹皮を拾っちゃってたけどトレントにはバレていなかったし大丈夫よね~?
実際ピリンの付与や持ち前のスキルによりエルダートレントからは一切感づかれることはなかったが、拾っていないはずの樹皮がなくなっていることにピリンはあれ?と疑問を持ちながらも回収を続け、フォルクはハッキリとパネットを認識しジト目になりながらも残りの樹皮を拾い続けたのだ。
”確かにこれも炭として使えなくはない。ただプロングもそうだが、興味のあるものへの関心が昔から強すぎる…それで何度苦労したことか”
そんなことも呟かれていた。
”バニヤンの斧!”
「あら、そんなことを言っていたら出番がやってきそうね~」
近づくだけ近づいておこうと、エルダートレント裏の坂から移動を始める。ついでに潜んでいたチャコールトレントの枝を折って持っていこうとも思ったが、それでパネットから掛けられた付与が切れてしまっては本末転倒だと涙を呑んで我慢をした。
ゴォン!…ビュン!
「よいしょっと…ウィーツちゃん、真面目にやれって事だろうけど破片をこっちにだけ飛ばすのはやめて欲しいわ~」
でも、普段はこんな正確に飛ばせないはずなのだけど…ピリンが手助けでもしたのかしら?
「まぁ、確かにふざけてる場合じゃないわね」
枝での攻撃手段を失ったことにより、今まで使ってこなかった根での攻撃を始めたエルダートレント。ウィーツは上手く対処できているが、続々と地面から根が現れていることからいずれじり貧になってしまうだろう…本気でやってしまうと地形への被害が凄まじいから振るえないというのがもどかしい。
「ただそのお陰なのか切り株から幹は再生してきていないし、本当にさらっと倒せちゃうかもしれないわね?――破壊王」
お玉を両手に構え宙に掲げると、物騒な名前を発し体に赤色のオーラを纏い始める。
「さぁーて、大きいの行くわよ~!」
タンと飛び上がり、巨大な切り株となったエルダートレントの中央に狙いを定める。
「やりすぎは良くないし…アースショック!」
ゴォン!
次回はちゃんとモルトが出てきます。
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