1話 嘆きと希望
読み専だった者が書き始めた拙作になります。
修正や説明の追加やらが今後あるかもしれませんが、どうか温かい目で見ていただければと思います。
敢えてら抜き言葉等にしているところもございます…
XXXX年7月下旬 日本某所
「だぁ~!また上手く育たねー!」
そう叫ぶ少年が住む種田と表札に書かれた家のベランダに、葉がまばらに生えた植物のようなものが生えている。
小さな濃い青色の実―ブルーベリーだろうか―が生ってはいるが、まばらに3個ほど…さらに先端や葉が焼けたように枯れてきている。
「今回は何がいけなかったんだ?土は酸性肥料とピートモスを加えて酸性になるようにしたし、水やりも夏の間は朝と夕方に湿り気を確認しながらきちんとあげていた」
ぶつぶつ呟きながら、膝をつき無残な姿となったブルーベリーの木の茎や枯れた葉を触りながら確認する。
「他家受粉が出来るように違う品種のを1本ずつ準備して植えた…やっぱ場所が良くないのか!?」
そう言いながら、唐突に彼は立ち上がりベランダの手すりに手をつき上を眺める…サンサンと輝く太陽が見えた。
「おのれ太陽めっ、綺麗に光ってやがる!今日も今日とて気温35度を軽く超えてきやがって!調整しながら日を当てていたのに結局葉焼けしちまったじゃねぇか!」
恨み言を言いながら手すりをバンッ!っと一度叩くと、力なくうつむいて彼はため息をついた。
「折角夏休みになったから本格的に手入れができると思っていたのにこのざまだよ…今回は虫害や病気がないし行けるんじゃないかと思っていたのになぁ」
取り敢えずこの枯れてしまった先端や葉をどうするかと、ベランダの椅子に移動し座りながら考えていると
「こら耕司、窓開けっぱなしにしないでちょうだい。暑いんだから変なことしていないで窓を閉めるか戻るかしてよね。」
「変なことだとぅ!?自分が育てた植物が枯れて項垂れている姿を変なことだと!?」
客観的に見ればベランダの手すりを叩いた後に太陽に文句を言っていた変人である。
「変なことでしょ、あんた今の座り方ロダンの作品みたいよ?」
「誰が考える人だ!」
パンッと履いていたサンダルを鳴らしながら耕司と呼ばれていた少年は立ち上がり、ベランダからリビングに戻ると
「お帰り、ダンテ」
「やかましいわ!」
そうからかう姉からタオルを奪い取るように受け取り、自分の額を拭いながらソファに座った。
「うわ、あの短時間でこんなに汗かくのかよ。そりゃ木もああなっちまうよなぁ…」
「明日も同じような天気だってー嫌になっちゃうよ」
「時期を考えて人参を植えてみようかと思っていたけども、やめておいた方がいいか」
「出来たとしても秋も暑いらしいから育たたないんじゃないかなー?」
「おのれ環きょ」
「それやめなさいな」
姉からのチョップでさらなる奇行は阻止される。
「ってか、いい加減あきらめた方がいいんじゃないの?家庭菜園出来る場所がないからって試行錯誤しているみたいだけど、一向に上手くいった事がないじゃないの」
「なにおう!ラディッシュやバジルはきちんと出来てるぞ!」
「それ室内だからじゃない」
「・・・」
反論できる余地がないか、どうにかして自分の成功例がないか記憶を探し始めた耕司。
そんな中で姉はスマホを操作し、とある動画を表示させると堂々巡りをしている弟に目の前に差し出した。
「そんな貴方にこちらはどうでしょうか!」
「…なんだよ藪から棒に」
閉じていた目を開くと、そこには目の前にゴブリンやオークといったモンスターとそれを倒す複数の人達。鉱石を採掘している様子に水中を泳ぐ魚たちがこちらに驚いて去っていく等の映像が流れていた。
「またVRMMOゲーム…俺があまりこういうのをしないの知ってるだろ?あいつらに誘われる感じでやっていたのはあったけどさぁ。それに大体のやつでちゃんとした農業ないじゃんか…あっても鍛冶ぐらいなもんだし」
農業ゲームならやるけどさぁと胡乱げな目で画面を眺めていると
「まぁまぁここからよここから…」
場面が切り替わるとそこには鍛冶に裁縫、漁業に牧畜といった生産の作業が流れ出した…もちろんそこには農業の姿も。
「っつても、ここらへんは他でも流れるようなもんだし…「ほらここ!」うん?様々な要望に応えて無数の職業がある?勿論生産職も!?それで基本プレイは無料…運営は神か!?」
「ちょっと唾が飛ぶでしょ!そんなに叫ばないでよ」
「いやでも、ただ種をテキトーに撒いて放置ですぐできるとかそんなもんかもしれん。俺は騙されんぞ…」
「聞いちゃいないわね。ほら戻ってきなさい!」
ベシッ!
「ほぅあ!首の骨が折れた…」
「折れてたら話している余裕なんかないから大丈夫よ」
首をさすりながらも、画面から目を離せない。これが農業の魔力…!
「もう一発いっとく?」
「いや結構、オレハショウキデス。にしてもこれまともに出来るもんなんだろうか…Mystical Code Online<ミスティカルコードオンライン>か。神秘的な記号?」
「codeは他にも条例とか法典って意味もあるわよー。それで前にテストがあったときの情報があるけど、結構本格的らしいの。土の種類とかpHだっけ?そんな感じのもあるらしいわ…私の欲しい情報のついでだったからそこまで知らないけど」
「マジで!?……あれ、テスト?」
「そう、このゲームまだ開発段階なのよねー来年の3月下旬にリリースの予定らしいからそれまでに情報集めておくのがいいんじゃない?…あんたはまず高校受験という名のテストを受からないとね☆」
「ガッデム!」
そして8か月の月日が流れ、新しいゲームの幕が上がる。
ベランダでブルーベリーが枯れたのは学生時代の作者の実体験です。日が強すぎたのか一気に焦げてしまいましたね。
ブックマークや評価を頂けると嬉しいです!