結末
大騒ぎの出産の末に産んだ子は、ピンク色の髪をした男の子でした。
髪はピンク色ですが、黒い瞳に浅黒い肌と、他はイジュにそっくりです。
聖力を使えるかどうかは分かりません。
母子共に健康で、産後の回復も順調でした。
その代わりといってはなんですが、私の髪は、ほぼ金色になりました。
子育ては大変ですが、手伝ってくれる人がたくさんいるのでなんとかなっています。
特に両親は孫が可愛くて仕方ないらしくて、構い過ぎではないかと思うほど可愛がってくれています。
大騒ぎする両親に比べるとおとなしめに見えますが、イジュもかなり子煩悩です。
とても幸せそうに子どものお世話をしています。
イジュが進めている薬草栽培も順調です。
姉のロベリアが、嫁に行った先の隣村でも栽培できないか、と言い出すくらい順調です。
商売が軌道に乗れば、栽培農家が増えるのは大歓迎。
それに姉は村長の息子の嫁ですから、色々と考えるところがあるのでしょう。
「村の功労者になったら私の立場が強くなって、好きに動けるでしょ?」
と姉は言っていますが、今でも十分、好き勝手に生きているような気がしますので、その点についてはいかがなものかと思います。
私としては、子育てを手伝ってもらえて大助かりではあるのですが。
義兄さんはどう思っているのでしょうか、ちょっと心配です。
薬草をより高く売るための加工場も建造中です。
王都で売る手筈も整いつつあります。
兄メラスが口八丁手八丁で高く売りさばいてみせる、と張り切っています。
私は聖女ではなくなって役目は変わりましたが、相変わらずクヌギ村に貢献しています。
村長として尊重されているかどうかといえば、微妙なところではありますが。
子育ても忙しいですし、ふたり目を妊娠中ということもあり、村長としてガッツリ仕事をしているわけではないので、そこは仕方ないです。
イジュのことを孤児だと言う陰口も小さくなってきました。
未だになんだかんだとケチをつけてくる人たちはいますが、今となってはイジュ自身が親なのです。
立派な父であり、私の配偶者。
薬草栽培の立役者でもあります。
ケチつけてくる人たちの気が知れませんね。
他人にケチをつけるより、自分の幸せを追求したほうが良いとは思いますが。
人生の選択肢は自分で選ぶものですから仕方ありません。
でも私たちは幸せなので、言いたい人たちには言わせておけばいいです。
エリックさまは、私たちの子どもを孫のように可愛がっています。
ちょっと老け込むのが早すぎると思いますので、早くご自身のお子さまを作ればよいのに、と思っているのですが。
もっとも相変わらずお盛んのようですから、既にどこかにいるのかもしれません。
村から聖女はいなくなりましたので、聖力石は購入することになりました。
エリックさまによると予算は特に増やしてはいないそうですが、同じ額でも全く困っていません。
前村長は、どれだけの額を使い込んでいたのでしょうか。
村長としての報酬はキチンと出ていたのに。
意味が分からないです。
今後は人間の欲について、注意したほうがよいかもしれません。
もう私は聖女ではなく村長ですから。
村を預かる責任者として、他人を疑うことも仕事のうちです。
聖女でなくなった私は表向き、聖力を使えないことになっています。
ですが、小さなものに聖力を注ぐくらいの力は残っています。
なので、イジュのペンダントヘッドに聖力を注ぐのは私の役目です。
彼を守ることができる力を残して下さったのは、神の恵みです。
行き遅れ、などと陰口を叩かれましたが、そのおかげで思いがけずイジュと夫婦になれました。
何が幸いするかなんて誰にも分らないことですが。
人間、幸せになれるときには、幸せになれちゃうものですね。
~おわり~




