全てにおいてカースト制とは現実味じみている
カースト制。
学生時代ある部に属していたものなら尚聞き馴染みのあるものだろう。下の語源は宗教から由来しており、分かりやすい具体例を上げるのならば、ピラミッド形の食物連鎖が思い浮かぶ。そう、生態系ピラミッドならぬ人間制ピラミッドだ。このクラス一年一組は平たくはみんな仲良くという謎のコンセプトを持っている。だが、その形態が見事なまでに崩れる修羅場が今沸き起こっていた。
「堀北、夢見は私達の班に入るんだけど」
「あら、私が事前に夢見さんと組むことを分かっての言動かしら」
特に女子の世界はもっと過酷な事だろう。言い合いをしている女子軍曹の二人は目から火花を散らしていた。着火する危険性があるので俺は遠目から見守ることしか出来ない。どうやら夢見を巡っての言い争いであろうが、夢見は目が左右に動きパニクっていた。助けてやりたいのは山々だが、あの死闘に防具もなしで突っ込んでいく愚か者はいない。しかし夢見の様子が明らかにいつもとは違っていたことに俺は勘づいていた。
陽というものに属しているのならば、私はみんなのアイドルだよ、キラキラなどと…。いや、度が過ぎたが多少は明るく現状を和めるくらいはできるはず。なのになぜ。
首に手を当てどうしたものかと悩んだ挙げ句、白雪教師からの熱心な視線が交差する。これはどうにかしろとのご命令だ。逆らったら、腹パンだけでは済まないだろう。仕方なく、本当に仕方なく、女子が集まるコロシアムに足を踏み入れる。息を整え、頭の中でイメージをして、決してナメられないように、大人の受け答えをしなければ。
「やあ、やあ、君たち、えっと、もう少し仲良くというか、穏便に解決できないかね」
俺が間合いに入った途端、ギラリと猛獣の目つきで見られ完全に体が固まってしまった。
「はぁー?誰お前?いきなり話はいってくんじゃねえ」
「あなたが口出しする権利はないわ、邪魔よ」
古関撃沈。
その後、空気のようにもといた席に着座した。白雪教師はそれ以上何も言わず、俺を慰めるかのように周りにいた隠れ同志たちに同情の目を向けられた。
放課後、俺は午後に喰らった古傷がズキズキと響く中、部室に足を運ぶ。建付けの悪いドアを引き、眼の前に見える黒髪の少女に目を向ける。いかにも不機嫌ですよのオーラを放っている堀北は、ホワイトボード越しに反射して映し出される俺を見てため息を付いた。ボード越しでも通常運転でよう御座いますね、全く。女子の世界は知らんが、俺に飛び火が来るようであれば迷惑以外に何がある。お嬢様のご機嫌取りは懲り懲りだ。
俺は昨日座っていた椅子に深く腰掛けた。堀北は何やら考える像のポーズをキープしたまま、小言を呟いていた。そっとしておいた方がいい、話しかけるとまた面倒なことになることは目に見えてわかる。特に気にかけることなく、お得意の空気になることでこの場は循環する。しかし今日は不気味なほど静かである。恐らくそれは堀北の愛犬が居ないからだろう。珍しいな、今日は来ないのか、まあ関係ないか。
すると俺の考えにシンクロしたんだか、堀北が立ち上がり落ち着きなく辺を歩き回っていた。ああ、やばい。俺は小さい頃から見てきたからよくわかる。あれは自分のお気に入りの所有物がないことに対しての焦りや不安的なものだろう。流石に見ていられない俺は意を決して重い腰を上げる。
「堀北、少しは落ち着け」
「別に焦ってないわ。余計なお世話だから」
俺の前だからか、いや他人の前だからか、虚勢を張っているが駄目だ。夢見が居ないだけであそこまでパニクるのは余程夢見の存在が堀北にとって大きいのだろう。なら俺がやることは一つだ。
〜〜〜
「夢見」
「かせきくん、どうしてここ居るの?!」
「古関だ。ああ、女子軍曹達に聞いて居場所教えてもらったんだよ」
「えー、なんで知ってるんだろう。不思議」
俺がいる場所は高校から歩いて十分近くある幼稚園だ。夢見の昔の知り合い、と言っても伝がないので白雪教師に聞いてようやく分かったんだがな。
「ねーちゃん、この男誰」
「あー、クラスメートのかせき君だよ」
おい、名前を間違えてるぞ。何回言い間違えれば気が済むんだ。
「あー、ごめんね。部活行けなくて、連絡しようと思ったんだけど、私せいちゃんの連絡先交換していなくて…あはは」
事情は仕方ないものの、笑って誤魔化すな。少しは謝れ。それにしても弟がいたとは意外だな。弟はまともらしい。そして凄い睨まれ方されてるな、幼稚園児にもどうやら不評らしい俺の存在。
「せいちゃん何か言ってた?」
「いや、特に何も。ただ反省書は次来るとき持っていく方がいいな」
「そんなに怒ってた?!」
「じゃ、身元無事だったし俺は帰る」
「あ、またねー!!」
本当に最後まで夢見弟は威嚇していたな。まあ慣れていることだから気にしてないが。幼稚園を後にし、俺は携帯をポケットから取り出しメールを一通送りまた深いため息をついた。
時刻は完全下校の残り五分に迫る中、心身ともに疲労困憊の俺は最後の役目として部室の建付けが悪いドアを力いっぱい開ける。そしてもう一息ため息をつく。
「メール、なんで持ってたの。古関くん」
「ああ、前に中学で同じグループだった時のをそのままにしていたからな」
「報告ありがとう。鍵は私が閉めるわ」
「お褒め頂き有り難いですね、それじゃ」
「嫌味?」
「なんでだよ」
堀北はまたいつものお嬢様オーラーに戻っていた。こっちのほうが俺にとっても気が楽だ。
彼女は俺からしたら誰よりも傷つきやすく、脆い。長年見てきて少しは理解しているつもりだ。それを彼女は認めないつもりだがな。周りから完璧才女と思われても仕方ない。彼女が築き上げた堀北清香という人物は完璧なのだからだ。だがその分彼女には俺には計り知れない重圧を一人で抱えている。俺は堀北には不幸にあってほしくないと思う。なんてらしくもない考えだな
「夢見さんは明日のうのうと部に来ようならば、それ相応の態度と行動を示してもらわないとね」
夢見、グットラック
やはり考案部でのカースト制で言えば頂点はまさしく堀北清香であった。クラスでの俺の立ち位置は相変わらず変動されることもない
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