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俺は孤高のVTuber?  〜俺が男という秘密は死んでも守る〜  作者: こっこ
VTuber企業に勤めてそろそろ一年ですが、まだ他のVTuberとコラボしたことがないそうです。
9/14

第8話 やらかしてしまったが、仲直りは成功したようです

「あ、私完全にやらかしたよね?」


「そうですね」


「うーん、変にここから隠そうとするより遥ちゃんにはちゃんと話してあげたほうがいいかな?」


「そうですね」


「本当にごめん燈哉くん、私から秘密にするように言ったのに、まさか私がバラすことになるなんて」


「いえ、これは事故みたいなものなんで社長が謝る必要はないですよ。」


頭に手を当てて苦笑いしながら謝罪する社長に対し、燈哉は普通の地声(男の声)でそう答えた。


そんな会話をする二人に対し、何も状況が理解できていない遥はただその場で立ち尽くしていた。


「さて、みなみちゃんではなく遥ちゃん。貴方に対して今から言うことはこれから何があっても絶対に公言しちゃいけない。それを踏まえた上で話を聞いてくれるかい?」


「えっ!?は、はい!」


「じゃあ言い・・・」


「いや、俺から言う」


社長がそう言おうとした瞬間、燈哉が言葉を遮る。


社長からの命じられたこととはいえ、俺が遥についた嘘だ。こういうことは自分でけじめをつけなければ俺の気がすまない。


これは燈哉の本心であり、その証拠に遥に対して真剣な眼差しを向けている。


それを感じ取った社長はスッと身を引いた。


「先ほど佐藤綾芽と名乗りましたが、あれは偽名で本当は野治燈哉という名前です。また、性別は女のように振る舞っていましたが、本当は男です。騙すようなことをしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。」


燈哉はそういうと足と胴の角度が丁度九十度になるほど深く頭を下げた。


「・・・えっと、あなたは来海ちゃんの中身なんだよね?」


「はい、そうです」


「でも、男の人?」


「はい、野治燈哉という名前の男です」


「つまり来海ちゃんは男の人が演じてたってこと?」


「はい、その解釈で間違いありません」


「ということは来海ちゃんはバ美肉おじさん※ならぬバ美肉お兄さんってこと?」


※バ美肉おじさんとは、美少女アバターと変成器を用いて配信をおこなう中年男性を指す言葉である。


「えっーと・・・はい。私はバ美肉お兄さんです」


「さ、さっき声が女の人だったのはなぜ・・・」


「これのことでしょうか?」


「うぉっ!は、はい」


燈哉は急に女の方の声で喋り始めた。急な声の変わり様に遥は驚く。


「この声は声真似みたいなもので出している声で、さっきまでの方が地声です。声真似とは言っても配信ではいつもあの声なのである意味二つ目の地声みたいなものです」


「は、はぁ、そうですか」


「本当にすまない、だがどうかこの事は秘密にして欲しい」


理解に少々苦しんでいる遥。そんな遥に社長は更なる追い討ちをかけた。


「実は彼は私の甥でね。訳あって親族のよしみとしてここで働かせているんだ。だから社長の命令ではなく、一つの家族の秘密を守るのを手伝って欲しいという意味でお願いできないだろうか?」


そういうと社長もまた遥に頭を下げた。


「え、社長が叔父!?」


新たな情報の追加に社長が自分に頭を下げているという状況。元々理解が追いつかない状況だった遥は今ので完全に頭がパンクしてしまった。


頭がパンクした遥は「ちょ、ちょっと待って下さい」と一言いうと勢いよく椅子に座り込んだ。

そしてそのまま遥は頭は手で抱え込んでそのまま、自信の顔を膝につけた。


うずくまって頭から湯気を出す遥を見た二人は急に色々話しすぎたことが原因だろうと思い、再び反省するのだった。




数分後


「とりあえず、絶対に秘密にすることは約束します。ですが、今回のように二人で詰めかけるのはやめてください。私あまり男性と関わるのはあまり得意ではないので・・・」


遥はそう言うと、社長と燈哉は素直に「ありがとう」と言った。


はぁ、出会って初日のやつにバレてしまうことになるなんて本当に俺はダメだな。


燈哉はそんなことを内心思いつつも、遥の「約束する」という言葉に安心していた。


「じゃあ私はもう行くよ。ちょっとタバコを一服してくる」


社長はそう言うと、そのまま休憩スペースから出て行った。


最近タバコを控えていた彼だが、先ほどまでの状況に心が疲れてしまったのもあり、一服せざるを得ないと感じたのだろう。


そして取り残された二人だが、空気は暗く、静まり返らざるを得なかった。


それからは、二人は一言も喋らずにすっかり冷めた揚げ物とぬるくなったカップ麺をただひたすら食べていた。


互いに気まずそうにちょこちょこ視線を送る。そして同時に視線を送り合った瞬間、二人は目が合うが、気まずさから二人ともすぐに目線を晒した。


おい、このまま七時の配信を始めるのヤバい。雰囲気の悪い配信なんて誰も見たくないはずだ。


そう考えた燈哉はなんとか遥と良い関係性を築こうと社長が来る前のように会話を試みた。


「ねぇ、遥先輩は何か好きな食べ物とかある?」


当たり障りのない話題をふった。ちなみに今のは女の方の声だ。だが、そんな燈哉に対し、遥は違った。


「ごめん、さっきまでの話の続きしてもいい?」


遥のその言葉に燈哉は少し驚いた。だが、その話に向き合おうと、燈哉は先ほどまでと同じように地声で話し始める。


「もちろん俺は大丈夫」


「じゃ、じゃあ言わせてもらうけど、騙したなんて罪悪感思う必要ないから!」


「そ、そうか」


「仕方のないことだったし、第一会ったの今日が初めてでしょ?そんなのちょっと嘘ついたみたいなものだし、わ、私だってよくやっちゃうことだもん」


「そ、そういうものなのか。じゃあ変に俺が罪悪感感じて悪かったな」


「あ、謝らなくていいの!あなたは何も悪くない!」


「は、はぁ」


遥の何か言いたそうな様子に対し、燈哉は少し不思議そうにそう相打ちを打つ。


「友達っていうのは嘘じゃないんでしょ?」


今日初めて会ったのにも関わらず、朝に少し仲良くなれたことを隠キャの遥は勝手に友達ということにに昇華していた。


燈哉としてもそれは嬉しいことで、友達でないと言う理由は一切ない。


「も、もちろん先輩が認めてくれるなら・・・」


「じゃ、じゃあ認めるから貴方は友達ね!そして友達だったら"ごめん"って一言謝ったらもう仲直り。そうでしょ?」


「そ、そう・・・なのか?」


「そうなんです!ということで私たちは友達同士なんだから・・・」


遥はそう言うと立ち上がって燈哉の両肩を両手でがっしり掴んで目線を合わせる。


「ふ、二人の時くらい包み隠さず仲良く喋ろうぜ!

・・・ごーや君?」


遥は真剣そうな表情でそう言う。


じーっと見つめ合う二人。この時、遥と燈哉の顔は少し赤くなっていたが本人たちは気づかない。


数秒経つと、二人は正気にかえって少し離れ、距離を保った。


「ゴーヤじゃねぇ。燈哉だよ、遥さん」


「う、本当にごめん。というか今、"先輩"呼びじゃなくて"さん"呼びに変えてくれてた?」


「同い年なんだろ。みなみ先輩とは呼ぶつもりだが、直接呼ぶときはこっちの方が自然だろ・・・」


「そ、そうだね!じゃあ末長くよろしく!」


遥は笑顔でそう言うと、燈哉に手を差し出した。


「こちらこそVTuberの先輩としても同い年の友達としても仲良くしてくださいよ」


燈哉はそういう時同じように優しい笑みを浮かべて差し出された手を握った。


危ねぇ、一年間ろくに人と会話してこなかったせいか、今日初めて会った人のことを好きになるところだった。末長くとか、めっちゃ顔近づけたりとか、意識しそうになるだろ・・・


な、なんか私色々恥ずかしいことした気がするけど大丈夫かな!?それにしても見た目が女の子のおかげか、久しぶりに同じくらいの年の男の人と喋れてる気がする・・・


二人は笑顔の裏でそんなことを考えていたのだが、そんなことなど誰も知るよしもなかった。

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