第6話 罰ゲームは嫌ですが、負けは認めるしかないようです
前回、視聴者に貰ったマルマロから罰ゲームを決めることになったのだが、ここで多くの問題が発生した。
「皆に手料理を振る舞う!」
「おいっ、それ私だけツラいやつじゃねぇか!」
燈哉はツッコミをいれるようにそう言う。
※来海には料理が苦手という設定がある。(本人も苦手)
個人だけにダメージのある意見。
「じゃあ、コレ!他3人に高級料理店の飯を奢る!」
「高額なのお金が発生しちゃうのはちょっとよくないかな・・・」
遥が冷静に意見を述べる。
当人のことを全く考えていない意見。
「もう次がラストだよ、変更無しだからね!」
そう言って美咲がマルマロをランダムで一個引く。そしてそこに書かれていることがそのまま配信の画面に映し出される。
1週間オ○ニー禁止
「はぁ!?先生これ引いたら死ぬぞ!?」
莉音はそう大声で叫ぶ。
完全にアウトな意見。
そう、視聴者の意見が故に、完全に自由かつ全く本人たちのことを考えていない意見が多発していたのだ。
結局中々決まらなかったため、罰ゲームはこの罰ゲームを引いた時にランダムで1個マルマロを引くというものになった。
そして罰ゲームが揃い、遂にゲームが始まろうとしていた。
「ということで罰ゲームは、愛の告白、服を脱ぐ、恥ずかしいエピソード、マルマロの刑の4つに決まりました!罰ゲームはゲームで負けた時にルーレットで決まります。では、そろそろ本題に入っていきましょう!」
1時間後。
「えっーと、33対4で来海の勝ちです!」
「よしっ!」
「ちょっと来海ちゃん強すぎない!?」
先ほどから運動系のゲームで勝負しているのだが、燈哉はずっと勝ち続けている。
理由は明白。燈哉は仮にも男だからだ。
例えるなら、全員リレーで自分と同じ走順に女子しかいないため、別に普通の男なのに無双してしまうアレだ。
「マジで一回来海ちゃん潰さないとヤバいよ〜」
美咲はそう言いながら燈哉に負けたことにより、罰ゲームのルーレットを回す。
選ばれたのは服を脱ぐであったため、美咲のアバターであるミハネの服が一枚脱げた。
元々一度脱いでいたため、外側に羽織っていた黒いブレザーとシャツがなくなり、白の薄い下着一枚とスカートだけになっていた。ちなみに下着からは空色のブラジャーが透けて見えていた。
1番マシな罰ゲームではあるが、今日の配信でずっと自分のアバターがあの姿なのは流石に恥ずかしいな・・・
燈哉はそんなことを考えるが、そもそも燈哉は負けるつもりなど一切ない。そんな燈哉に対して、他3人はなんとか燈哉に罰ゲームをさせようと企んでいた。
「よし、そろそろ運動系のゲームは終わりにして、新しいゲームに移ります!」
「おっけーです!何をやるんですかミハネちゃん?」
「お答えしましょう!次に行うゲームは、意見を合わせろ!以心伝心ゲーム!」
今の美咲と莉音の会話はごく自然な会話のように聞こえるのだが、実は運動系では勝てないことを悟り、自然に予定を早めたのである。
「すみません!以心伝心ゲームとは何でしょうか?」
内容を知らない燈哉は自分が説明を聞くためにも、リスナーに自然に説明できる流れを作るためにもそう質問する。
「では説明させていただきます。以心伝心ゲームとは、お題がでるので、それに対して1人1つずつ回答を考えます。それを最後にせーので発表し、全員が同じ回答であればゲームクリアです!」
「罰ゲームはどう決めるんですか?」
「意見が最も孤立することが多かった人、つまり戦犯に罰ゲームをしっかりやってもらいます!」
このゲームは配信界隈では有名なのだが、罰ゲームする相手を決めにくく、全員でクリアを目指すゲームなので、今回の趣旨とは少しズレている。
なぜそのようなゲームをわざわざ今からやろうとしているのか。理由は明白であった。
そう、燈哉に罰ゲームをさせるためだ。
莉音と遥は燈哉と美咲に比べてVTuberとしての歴が長く、他人に意見を合わせることも長けており、尚且つこのゲームもプレイ経験がある。
そして美咲は歴はまだ浅いとはいえ、そもそもの性格が故に友達が多く、人とコミュニケーションをとることも多いため、どちらかというと得意な部類に入るだろう。
それに対し燈哉は、まだ1年と歴は浅く、コラボ経験もないのでコミュニケーションをとることは少ない。つまり燈哉にとって圧倒的に不利なゲームということだ。
美咲はタブレットを四つ用意し、そのうち三つを莉音、遥、燈哉に配る。画面はすでに以心伝心ゲームがすぐにできるよう準備されていた。
形式としてはお題に対してタブレットに自分解答を書いて同時に発表する。ちなみにホワイトボードではなくタブレットである理由としては配信で見えるようにするためだろう。
「じゃあ始めます!」
美咲のその言葉と同時にゲームが開始した。
第一問 犬の犬種といえば?
うーん、日本人ならきっとしば犬と答えるだろ・・・
燈哉はそう適当に考えてタブレットに「しば犬」とペンで書く。
だが、これは以心伝心ゲームであり、他人の考えをしっかり考える必要があるため、このように安直な考えはあまり良くないのだ。
「解答オープン!」
美咲のその声と同時に全員の解答が公開される。
来海(燈哉) しば犬
サツキ(莉音) シベリアンハスキー
ミハネ(美咲) シベリアンハスキー
みなみ(遥) シベリアンハスキー
コイツら図ったな!?燈哉は一瞬そう言い放とうと思ったが・・・
「サツキ先輩で犬といったらシベリアンハスキーの雪ちゃんだよね!」
「まぁサツキ先輩がこれ書かない訳ないと思った」
美咲、遥そう当たり前のように言う。そしてその言葉に莉音も「まぁね〜」と答える。
まずい、俺莉音先輩が犬飼ってると知らなかったんだけど・・・。まぁ多分次はどうにかなるだろ。
燈哉はそう楽観視したが、この圧倒的情報不足という障害が燈哉の目の前にたちはだかった。
第二問 おにぎりの具材といえば
来海(燈哉) 鮭
サツキ(莉音) ねぎ味噌!
ミハネ(美咲) ネギ味噌
みなみ(遥) ねぎ味噌
「サツキ先輩がやったあの一ヶ月毎日ネギ味噌おにぎり生活はこの界隈では地獄だと有名だからね〜」
美咲はそう莉音に話す。
第三問 スポーツといえば
来海(燈哉) 野球
サツキ(莉音) S◯X
ミハネ(美咲) バドミントン
みなみ(遥) バドミントン
「「「一昨日やったんだよね〜」」」
遥と美咲がそう申し訳なさそうに言う。
と、このように燈哉だけ必ず孤立するという流れが続き、燈哉は皆とどんどん点差が離れて行った。
そして第10問目。
第10問 数学の好きな公式は?
あ、これは・・・。まぁこんなの誰とも合うわけないし、書いてみるか。
燈哉は頭の中に配信でよく言っている公式が思い浮かび、それを書いた。
「じゃあ発表いきます!」
美咲の声と共に解答が発表されると、そこには驚きの光景が広がっていた。
来海(燈哉) e ^iπ=-1
サツキ(莉音) e ^iπ=-1
ミハネ(美咲) e ^iπ=-1
みなみ(遥) e ^iπ=-1
「え、オイラーの公式が満場一致!?」
思わず燈哉は叫ぶ。
危ねぇ、一瞬男の方の声がでそうになった・・・。
「まぁ来海ちゃんいつも配信で言ってるからね」
「来海ちゃんが好きな公式何って聞かれたらこれ答えとけって言ってたよね」
「あれでしょ?なんか美しいとか言ってたやつ」
美咲、遥、莉音は当たり前のようにそう言う。
皆俺の配信見てくれて、ちゃんと知ってくれていたのか・・・。いつも個人でひたすら登録者数や収益などの数値ばかり気にして、行動している俺に落ち度があったな・・・。
そんな当たり前のような態度は燈哉の心に深く突き刺さるのだった。
「ということで満場一致成功ということで、ここでゲーム終了!えーっと、まぁ火を見るより明らかなことに罰ゲームは来海ちゃんです!」
美咲の明るい声がゲーム終了と、燈哉の罰ゲーム決定を告げる。それに対し、少々罪悪感を感じた遥は、
「来海ちゃん、なんかごめんね」と言うのだった。
だが、そんな燈哉もゲーム開始当初のただ自分が理不尽なゲームをやらされたという考え方も変わっており、罰ゲームは当然のことだと思っていた。
数分経ち、タブレットを回収後、罰ゲームのルーレットを回す。
「さて、罰ゲームならなんでもかかってこい!」
そう言って回すと、選ばれたのは「服を脱ぐ」だった。
あぁこれか。アバターが少し脱げるくらいだけなら別に全然いいや・・・
「ということで、服を一枚脱ぐに決定!じゃあ来海ちゃんの変身まで5、4、3、2、1・・・どうぞ!」
またもや楽観視する燈哉。だが、この罰ゲームは燈哉、ではなくアバターの来海にとって弱点であることを燈哉は知らなかった。
次の瞬間、4人と視聴者全員に衝撃がはしる。
美咲の「どうぞ!」の言葉と同時に燈哉の体から白衣が消える。そして現れたのは普段見れない私服姿、シャツや下着かと思いきや・・・
乳首にだけ白い光で修正が入り、可愛いらしいピンクのパンツを一丁だけ身につけたほぼ全裸の状態だった。
ほ、放送事故!?