スぺクタルウインドウ
目の前には人型の3Dモデルが浮かび上がり、その周囲に様々なGUIが展開されていく。
頭上の左右には、数値化された様々な項目が並んでいる。
試しに、体力:100という文字の横に伸びる透明な緑色のバーに意識を向けると、透明度が弱まり、200と意識した途端に数値がカウントアップを始めバーは横へと伸びる。
俺は項目を順に目視していく。
左側には体力、力(腕力)、早さ(脚力)、理解度(知覚処理速度)、運(不確定要素)、その他追加
右側には聴力、視力、動体視力、触覚、味覚、嗅覚、感知力、その他追加
と、文字が並んでいる。
それぞれ、基本値ということなのだろうか、先ほどいじった体力以外のパラメーターは全て100の値で統一されている。
そして右下には人型の部位にあわせて、アイテムがセット出来そうなインベントリウインドウ。
インベントリの中身は今は空っぽだが、人型の各部位には今着衣中の服やインナー、靴などが表示されている。
俯瞰的に見ている自身の姿と一致するため、このインベントリウインドウで装備品等のカスタムが出来るのだろう。
そして左下の空間には、ブラックホールを彷彿させる青黒い渦巻き状のエリアが存在している。
視覚的に全く意味が理解出来ないのはこの場所だけだ。
俺はスグに、スぺクタルウインドウからスヴィアに視線を移す。
何も言葉を発していないのに、俺の想いが通じたのかスヴィアは語りだす。
「その左下に映る場所は、『セレクトバリューインポータントアイテム』が出来る場所ですね。一言で言えば夢を自由自在に叶える錬金術、とでも言えばイメージしやすいかと思います。そうですね、名称はわかりやすい方が良いかと思いますので、錬金宇宙とでもしましょう。その中から、好きな物を取りだし、インベントリにセットするもよし、体力などの自身のバイタリティ面に追加する項目を生み出すもよし、五感を更にサポートする何かを生み出して追加するもよしの、まさに広大な宇宙から一粒の最強要素を取りだして頂ければと思います」
つまり、ここで能力開発が出来るという事だろうか。
でも、どうやって?
「イメージしながら手を突っ込むだけで、手に触れる文字を引っ張り出すだけですよ。例えば炎を自由に扱いたい場合は、火の操作をイメージしながら手に取れば、そのまま火の操作という文字版を手に取る事が出来ます。それを例えば腕力の項目と紐づけて左上のその他項目に追加することで、イッキ様は素手に触れる火を自在に扱う事が出来るようになります。感覚的に扱いたい場合は、視力に紐づける事で視線で火の操作を行う事が出来るようになります」
何だそれは、何でもありじゃないか。
「ただし、気を付けて下さい。皆様が考えた『最強』はその名の通り、最強です。生半可なカスタムでは太刀打ちできないのは勿論、だからといって何でもかんでも最強要素を付与すると、全てが機能しなくなってしまいます。わかりやすい例でいえば、視力に火・水・風・土と四大元素の操作を付与したとしましょう。その場その場で扱い分ける器用さがあれば何も問題ありませんが、基本的に最強との戦いの場においては器用貧乏になります。バランス型によるどんな相手でも対応が出来るようにするのか、一点特化でごり押しが出来るようにするのか、それとも別の何かがあるのか。そこはイッキ様次第なので、うまく最強要素を活かして頂ければと思います」
「ありがとう、スヴィア。後、この数値でいう100は現実で例えるならどんな数値になるんだ?」
「それはシミュレーションルームで、実際に試して頂ければと思います。説明につかれたとか、そういう訳ではありませんので」
わかってるよ。
そう一人愚痴ると、俺は自身がどんな身体能力があるのか確認すべく、シミュレーションルームへと移動を開始した。