水嫌いの赤帽
赤村には苦手な訓練があった。潜水訓練である。そもそも、赤村は元々泳げなかった。その為に他の隊員が潜水訓練をしている時は、赤帽を被されて、徹底的にしこたま泳ぎの訓練が行われていた。
しかも、その教官がA班副長の西浦二尉であるから、赤村のテンションは駄々下がりである。西浦二尉は、SBUの中でも1、2位を争う程ストイックな人で、とにかく自分にも他人にも厳しい。そのストイックさを買われての副長職であった訳であるが、水の苦手な赤村にとっては、天敵以外の何物でもなかった。だが、西浦二尉にしてみれば、泳げなかった人間を泳げる様にするのは、お手の物であった。
「おい、赤村? SBUの人間が泳げないなんて、現場に出たら死ぬぞ? 泳げないなら、まずは水に慣れろ。その為に貴重な訓練の時間を使ってやってるんだ」
このような台詞ばかりが赤村を煽り立てる。そうやって追い込まれて行くと、人間と言うのは成長する生きもので、たった二週間毎日訓練を受けただけで、1㎞以上泳げる様になっていた。それでも西浦二尉にしてみれば、スタートラインに並んだに過ぎず、二週間分の遅れを取り戻す為、赤村は必死で西浦二尉につきっきりで、指導を受けた。
その努力が認められ、赤村は部隊の潜水訓練に参加する事が許可された。それでも、泳ぐ事は相変わらず嫌いだったし、水も苦手だった。だが仕事の為だ、そうも言っていられない。赤村は赤村なりに、水嫌いを克服しようともがき苦しんでいた。
戦場では、水路潜入等も当たり前の様にある。SBUとは水上専門の特殊部隊であり、陸上の部隊とは訳が違う。赤村も下っ端ながらその一員である以上は、水が怖いだの嫌いだのと言う様な事はとてもではないが、口にしてはならないであろう。




