御風呂のマナー
日本における自衛隊の特殊部隊の歴史は意外と浅い。最も平和が維持されている様な状態で、これらの特殊部隊は訓練する以外に、備える方法が無いのであるが、それはそれで結構な事である。
万が一に備えるのが国防の基本である。事態が発生してから、そんな事には対応出来ませんでした。では、済まされない事は言うまでもない。
赤村は隊舎の風呂場にいた。自衛隊の風呂は男女共に二つの区分けで風呂に入るという帝国海軍時代からの風習がある。士官(三等海尉以上の自衛官)と下士官・兵(海曹長以下の自衛官)とに別れて風呂に入るという。何故こんな風になっているのか、聞いたが「伝統だから」という答えしか返って来ない。
赤村が、体を洗い終わり巨大な風呂釜につかって疲れを癒していると、青野も入って来て赤村に声をかけた。
「お疲れ!」
「おう、お疲れ! 飯でも風呂でも24時間四六時中顔合わさなきゃならないのは、苦だな」
「まぁ、そう言うなって。風呂くらい気持ち良く入ろうぜ!」
すると、赤村が青野の体を見て言った。
「青野? お前腹筋割れてないか?」
「ああ。そうなんだよ、赤村。入隊時には余計な脂肪がついてたんだけどさ。」
元々痩せていた赤村は、入隊前から腹筋が割れていたが、青野の腹が横ではなく縦に割れているのを見たときには、ビビった。
「やっぱSBUの訓練って半端ねぇんだな。」
「でも、最近は楽しくなって来たよ。先輩隊員をフルボッコ出来る白兵戦なんて最高だよ。」
赤村は思った。そうだ。こいつは地元でも手がつけられないヤンキーだっだと。こんな地獄の様な訓練を楽しむとはやはりただ者ではない。
「赤村、お前実はもう辞めたくなってるんじゃないか?」
それは、正直図星だった。
「俺さ、正直毎日きついんだ。でも折角入隊出来たのに、って思うと辞められなくて。」
「赤村、これだけは言っておく。お前は選ばれた人間なんだ。海上自衛隊員は約4万5千人。その中で、特別警備隊員は約100人程度。それを思えば何か変わるよ?」
青野の言っている事は正しかった。別に同期の同僚が辞めようがどうしようが、正直どうでも良かった。しかし、折角入れた物を自ら蹴るのは時期尚早であった。
「まぁ、何かあったら言ってくれよ。さ、飯行こう!飯!」