死ぬ理由を見つける過程
赤村は大黒三尉に相談をした。内容は「死ぬ理由」だった。
「大黒三尉は何の為に死にますか?」
「何って、そりゃあ国家国民の為に決まっているだろ?」
「それは本心ですか? 嘘とかは言わない人ですもんね。」
「あんな。これでも一応五年以上この部隊にいるんだぜ?嘘はつかねーよ。」
「その境地に至ったのは入隊してどのくらいでしたか?」
「そうだな。入隊二年目には意志は固まってたな。」
「俺もうすぐ一年になるんですけど、意志が全然固まってなくて……。」
「今すぐどうこうしろって言う訳じゃないが、そういう意志は固まってた方が良いよ。」
「やっぱりそうっすよね。でも何だかしっくり来なくて。」
「こういうのは、意識的にやるものじゃないからな。」
「え?そうなんですか?いつの間にか身に付くものなんすか?」
「少なくとも、俺の場合はそうだったな。」
「何か国家国民の為に戦ってる感じがしないんですよ。」
「考え方は自由だ。だからそれを否定するつもりはないよ。」
「でも、それって自己中心的で独善的ですよね?」
「軍人にとって何の為に戦うかは大切だぞ。」
「人によって考え方は違うと思うんすけど…。」
「それはそれで良いんだ。俺達はロボットじゃない。」
「難しいですね。たった1つ死ぬ理由を見つける為に。」
「赤村、時間はまだたっぷりある。若いお前が覚悟1つ決めるだけで、日本の将来は明るくなる。」
「こういうのは教わるもんじゃないすからね。」
「その通りだ。自分で解決する問題だ。」
「答えが100点じゃなくても怒られないですよね?」
「お前が納得しているなら、それが100点だろ?」
「分かりました。もう少し自分で考えてみます。」
「死ぬ理由なんて大切じゃないよ。」
「というのは?」
「そのうち分かるよ。きっとな。」
「それに赤村、お前は立派な自衛官になれるよ。」
「本当ですか?大黒三尉は不思議な事を言いますね。」




