正のスパイラル
青野が探している答えも「滅私公奉」の精神で、説明がつく。青野は自分がどの様な自衛官になれば良いのか、分からずに悩んでいる。しかし、その根底にあるのは、彼の「滅私公奉」のスタンスがきちんと固まっていない事にある。スタンスがぶれてしまうと軸も定まらない。だから、青野は青野なりの「滅私公奉」に答えを出す必要があった。それが出来ないうちは、いつまで経っても心の中にモヤモヤを抱え込む事になる。
「滅私公奉」は、それぞれ人によって個人差はある。答えに正解もないかもしれない。それでも、80点の解答でも、それがあるのと無いのとでは、大違いである。自分なりに自分がどの様な自衛官に成りたいのかを考える事は、長くキツイ自衛官という仕事をやっていく人間にとっては、大切な事である。それを探せるのは若いうちだけである。年が増せば、部下もつくし、昇進もする。自分の事より他の人間に振り回される事もあるかもしれない。
責任も付いてくる。そうなると、「滅私公奉」について、深く考えられない。これは若さの成せる特権とも言える。この答えを出す事で、自分のスタンスが固定されると、ブレが少なくなる。ブレが少なくなると、安定した力を発揮出来る様になる。
そうすれば、任務にも自然と集中して取り組める様になる。こうしたプラスのスパイラル(正のスパイラル)を作り出す事が出来る。これが出来て、やっと自衛官として次のステップに進める。人間としてどうあるべきか?という哲学的な話ではない。あくまでも、「滅私公奉」の自衛官とは何ぞや?という事を知る事が、任務の質をあげる事に繋がる、という只それだけの事である。




